食と暮らし学 山菜採り

山菜って、んめな〜!

文=矢吹史子

元デザイナーの編集者。秋田生まれ秋田育ち、筋金入りの秋田っこ。
フリーマガジン『のんびり』副編集長。

写真=船橋陽馬

雨に降られないうちに山から引き上げてきた、私たちですが、ほんの小一時間採っただけで、抱えきれないほどの大収穫!
今回採れたのは、アイコ、シドケ、サガリハなど。これらを千惠子さんのお宅の小屋で選別して、朝市で販売するために束ねていきます。

講師 金野千惠子さん

Contents

  • ①山菜採りに連れてって!
  • ②山菜採るど〜!
  • ③山菜って、んめな〜!
  • ④宝母さん
  • ⑤五城目朝市山菜まつりへ。
矢吹
いつも山から戻ってきたら、こうやって分けるんですね?
千惠子
はい。こうやって触ってるのが楽しくてね。今日もこのぐらい採ってきたな〜って。
矢吹
こっちがアイコ、こっちがシドケ。

右・アイコ 左・シドケ

千惠子
今年の山菜は、たちまちこうして伸びで固ぐなるがら。雨降ればまた伸びるし。だがら、一つの山菜の時期って、ほんの1週間から10日ぐらい。
矢吹
そうか〜。
千惠子
寒いどごろ、寒いどごろって、探して歩がねば。
矢吹
山菜を追いかけていくんですね。
千惠子
私は何年も、キノコどが、山菜どが、ノートにずっと付けであったの。何日ごろ何が採れだどが、場所どがも書いであったの。
矢吹
うんうん。
千惠子
でも、あくまで一つの目安で、やっぱりそのどきの天候によって違うものな。目安にはしてるけどね。
矢吹
千惠子さんは、山菜の時期が終わったらどういう事をしてるんですか?
千惠子
ミズの時期が長いからね。ミズが終わればキノコ。盆過ぎで、8月末から9月さ入れば、ハツタケ出でくるもの。
矢吹
うんうん。
千惠子
キノコはずっと、12月まで採るし。
矢吹
じゃあ、ずっと山ですね。
千惠子
ずっと山。で、休む期間は2ヵ月。1月と2月だけ。3月ってばまた山菜採りに歩ぐし。せばまず、シドケ束ねるが。
矢吹
テープを巻いていくんですね。
千惠子
私の1把大きいがらな。
矢吹
この大きな束が人気の秘訣なんですか?
千惠子
はい。でも「あんまり太いのはな……」って人もいる。食べて美味しいのは、あまり太いのより、中くらいのほうなの。醤油っこがしもって(染みて)な。でもやっぱり、並べれば「おっ」となるのは太いほうだがら。
矢吹
そうやってまとめて……整えていくんですね。
千惠子
まだ……。
矢吹
まだ入れるの!?
千惠子
うん。だから、私の束、すごいの。
矢吹
入れすぎじゃないですか!?
千惠子
んだ。そう言われる。でも昔からこうだがら、ちっちゃぐできないの。「あれ? 去年より束小さぐね?」って言われるがら、お客さんは正直だよ。
矢吹
そっか〜。
千惠子
まずこんなかんじ。これだげ採っても1束はこんくらいになるの。
矢吹
立派すぎないですか!?
千惠子
いいの。元はタダのものだがら。よぐ「難儀して山奥がら採ってくるのに安すぎる」って言われるけど、それで束っこ小さぐして、高ぐすれば、お客さん誰も買わないもの。
矢吹
う〜ん。
千惠子
はい、これで1把。できました。こんなふうにして束ねでいぐの。
矢吹
シドケの食べ方のおすすめってありますか?
千惠子
お浸しが一番だけどね。
矢吹
今日採ったサガリハで、息子さん用にさっき言ってたきんぴら、作ったりしませんか? 作り方教えてもらえないかなあと思って。
千惠子
……やってみるが。さつま揚げもないな、チクワもないけども。チーズかまぼこは少しあるな。それ入れるがな。ミズも採ってくればよがったな。
矢吹
ああ、まだ生えてないですもんね。
千惠子
いい。これだげでやってみるがな。……この長いアイコ、少し入れで。
矢吹
アレンジバージョンで。
千惠子
いってみましょう。

(千惠子さんの自宅できんぴらづくりスタート)

「サガリハとアイコのきんぴら」のレシピはコチラ!

千惠子
はい、完成!

サガリハとアイコのきんぴら

矢吹
いただきます! ん! おいしい……!
千惠子
いい?
矢吹
この葉っぱの苦みというか、香りが。
千惠子
やっぱり、山菜の香りだものな。
矢吹
う〜ん! 唐辛子も効いてていい! ごはんすすむ!
千惠子
ごはん、まだいっぱいあるがらね。それなりに美味しいようで、まず良がった。ワラビもあるんだけど、ごっつぉ(ごちそう)するが?
矢吹
お〜!!
千惠子
これは男鹿のワラビ。ワラビだば、どこにでも生えてるがら、おばあちゃんでも誰でも、道ばたで袋下げて採ってるもんな。んだども、あの道ばたのワラビってあんまり色良ぐないもの。これは黒ワラビだがら良いよ。アク抜きした汁、深緑になってるでしょ?
矢吹
アク抜きって、重層に浸けるんですか?
千惠子
木灰も使ってるのよ。細いけどね、残りものだがら。
矢吹
わ〜きれい。
千惠子
色はきれいなのよ。食べても美味しいし、柔らかいし。
矢吹
ワラビ、いただきます。これはいつ採ったんですか?
千惠子
3〜4日前のだよ。今度、ミズたたきも食べにおいで。ミズたたきってやる? 山椒ピリっと効がせで。
矢吹
湯がいたミズを包丁でたたくんですよね。山椒入れる人もいれば、ニンニク入れる人もいますよね。
千惠子
あ! シドケのお浸しもあったな。食べるが?
矢吹
いただきます!!

シドケのお浸し

千惠子
あぃ〜。これしかねぇけど。シドケはシドケで香りあるし。食べて。
矢吹
シドケ大好き!
千惠子
山菜、こうして好ぎだばいいな。もっと若い人さいっぱい食べでもらいたい。今に誰も山菜食べる人いなぐなるんでないべがって思って。
矢吹
私も20代くらいのころは食べなかったけど、いまは食べますよ。昨日も、うちのスタッフの20代の子、美味しい美味しいって山菜食べてましたよ。
千惠子
あら〜、そうだば私も楽しいのよ。若い人が山菜好きだってば、嬉しいな。
矢吹
最高ですよ。
千惠子
おらえのおじいさん(ご主人の父)「あぃ〜、オレ山さ歩がれなぐ(山に行けなく)なっても、山さ歩ぐ嫁来てくれだがらいがった〜」っ言って。だっけ、私がこんなふうになってしまったべ(笑)。
矢吹
ははは〜。
千惠子
五城目のお祭りってば、このシドケさ、カズノコ乗っけで、お客さんさ食べさせるの。あどは、キンキどがの焼き魚に添えだり。だがら、高級魚の側さ置ぐものなのな。
矢吹
そういうのもあって、高級扱いされるんでしょうね、シドケは。
千惠子
いっぺぇ採ってくれば、高級にもならないでしょうけど、なかなかシドケって、採るの大変だって、他の人は言うのよな。
矢吹
5月7日がお祭りなんですよね。
千惠子
朝市の山菜祭り。すごいもの。見に来てください。すごいたくさん人来るがら。
矢吹
はい、行きます! シドケおいし〜!
千惠子
こうして山のもの食べれば、他の野菜食べられなぐなるの。
矢吹
ですよね〜。

④宝母さん につづく

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