食と暮らし学 山菜採り

⑤五城目朝市山菜まつりへ。

文=矢吹史子

元デザイナーの編集者。秋田生まれ秋田育ち、筋金入りの秋田っこ。
フリーマガジン『のんびり』副編集長。

写真=船橋陽馬

5月7日(土)
五城目朝市の山菜まつり当日。あいにくの雨。例年はたくさんの人で賑わうこの日も、いつもの活気が見られない様子……。それでも、各店山菜が山積みに並び、山菜汁や五城目名物のだまこ鍋など、美味しそうなものもいっぱい。さて、千惠子さんのお店はどんな様子なのでしょう?

講師 金野千惠子さん

Contents

  • ①山菜採りに連れてって!
  • ②山菜採るど〜!
  • ③山菜って、んめな〜!
  • ④宝母さん
  • ⑤五城目朝市山菜まつりへ。
矢吹
おはようございます〜! 雨で大変ですね……。
千惠子
あぃ〜。大変だ。でもほどんど売れでしまったよ。あど、これしかない。
矢吹
ほんとだ〜! 山菜、雨に濡れちゃって。
千惠子
山菜は雨に当だって元気になって、かえっていいのよ。
矢吹
人間だけが大変だ。あれから毎日山菜採りに行ってましたか?
千惠子
毎日毎日。
矢吹
あ、お客さんだ!

(次々とお客さんがやってきて、やっとひと息)

千惠子
今日はこのぐらい売ったもの。あど良しとする。
矢吹
ほぼ売り切れ。今日は何把ずつぐらいあったんですか?
千惠子
シドケ30把ぐらいあったし、アイコだって40把以上あったね。
矢吹
すごいな〜。
千惠子
注文のお客と常連さんが来てくれるから、すぐに売れでしまうんだ。やっぱり普段のやってるごどが、いまに繫がってるんだど思う。
矢吹
さっきのお客さんも「ここのを買ったらよそのを買えない」って言ってましたね。
千惠子
まず、できるだけ正直にやるしかないなって喋ってるんだけどね。でも、やっぱり朝市のためになぁ……。このままでいいのがなって思ってしまうの。ただモノ持ってきて、売れで、お金稼げればそれでいい、でなくて。評判も落ぢできてるし、なんとすればいいがなってみんなで考えでるんだけども。
矢吹
いま、若い人たちが「ごじょうめ朝市プラス」っていうのをやっているそうですけど、どうですか? 毎月、0、2、5、7のつく日曜日に、五城目朝市と一緒に開催してるんですよね?
千惠子
けっこう盛り上がってで、コーヒー出す人もいれば、民芸品どが、小物どがも、売れでるみだいだけど、ここの朝市は、本来、観光市ではなぐ生活市で、日常生活で食べるものを買いにくる朝市なんだもの。私たちは小物を売ったりでぎないし、生活に密着したものを出すしかないんだけども、お客さんを呼ぶには、若い人たちのいまの動きはプラスになってるし、若い人もやる気十分だしな。まずは出店者が増えるってごどは、楽しみなのよ。
矢吹
うんうん。
千惠子
「朝市プラス」で盛り上がってきてるけど、元々売ってる私たちがちゃんとしないと。
矢吹
ベースがあって、プラスですからね。
千惠子
だけど、ベースに問題があるものな。出店者一人一人がちゃんとやらないと、それで客逃げでいってるって思うのよ。目先のごどでなく、長い目で見でな。お客さんどご大事にして。
矢吹
あと10年もしたらね。
千惠子
みんなあの世だ。朝市もだんだん高齢化なってきて、なかなか後継者が育たないじゃない。みんな自分のばり売れればいいっていうんでなくて、買う人の立場になって……って。
矢吹
みんなで足並み揃えるのは難しいですよね。
千惠子
んだ〜。
矢吹
朝市やってて楽しいことってどんなことですか?
千惠子
やっぱり、お客さんど話したりな。それが一番いいど思うね。自慢じゃないけど、注文くるんだもの。

(ノートを見せてくれる)

矢吹
注文票!
千惠子
これ、ぜ〜んぶ注文! 5月2日……シドケ、アイコ、2把3把……って、合わせれば50も60もなるんだや。

千惠子さんの注文ノート

矢吹
どこから来るもんですか?
千惠子
近所のおばちゃんどががら、電話くるの。
矢吹
全部手書きなんですね。
千惠子
これが一番いいのよ。今年のももうすでに注文きてるもの。字は汚いけども(笑)。
矢吹
山菜はお店にも卸してるんですよね? 地元のお店ですか?
千惠子
なんも。東京の。
矢吹
どうやって知り合ったんですか?
千惠子
地元の人の紹介でね。モノがいいがらって。若い人がやってるお店でね。朝市にも来てくれで。昨日も思い切っていっぱい送ってやった。
矢吹
そのサービス精神が、ずっとに繫がるんでしょうね。
千惠子
私もいっつも「高げぇべが、安いべが……」って迷いながら送ってるんだ。自分がお客さんだったら買うベが〜ど思いながらな。薄利多売だって友だちには笑われるけどもな。
矢吹
そうやって考えてくれてるのを、お客さんもわかるから、千惠子さんから買いたいって思うんでしょうね。
千惠子
世話なった人さ出すがらって買っていってくれだり、遠ぐ離れだ息子や娘さ送るがらっていう注文も入ってるもの。
矢吹
このあいだ、秋田市民市場で聞いたら、買ったお客さんは、みんな、まずは都会の人に発送するんですって。秋田は珍しい山菜がいっぱいあるから、自分が食べるより先に送るんですって。
千惠子
やっぱり喜ばせたいっていう気持ちがあるでしょうし。私はお裾分けっていうより、売るのが先だがらな。
矢吹
千惠子さんはそっちでおもてなししてますからね。
千惠子
お金でまけるってごどはしないけど、やっぱり束の良さでな。だがら、よぐ朝市であるのは「あだえ(あなたの家)の電話番号教えで」って。
矢吹
リピーターだ。
千惠子
それで、知らない所がら連絡くるもの。注文の電話。
矢吹
口コミで? すごいですね。
千惠子
いまからこれも、注文きたの配達に行ってくるがら。
矢吹
すごい! 花束みたいにある。
千惠子
シドケ2把、アイコ5把、ワラビ5把、タラノメもある。配達終わったら、家さ寄ってお茶っこ飲んでいって〜。
矢吹
それじゃ、あとでお家にお邪魔します!

ちょうどこの日は千惠子さんのお誕生日。そして明日8日は母の日。何かお祝いできないかと、タイミングを謀っていたところでした。配達の隙に、花屋でカーネーションの花束を用意して、準備万端。我らの宝母さんのお祝いに向かいます。

(千惠子さん宅)

矢吹
ごめんくださーい。
千惠子
はーい。入ってください。
矢吹
千惠子さん! お誕生日おめでとうございます!
千惠子
あぃ〜! 嬉しい。なんか催促したみだいだな。
矢吹
明日が母の日だっていうので、併せて。
千惠子
あぃ〜。きれいだ〜。
矢吹
いろいろ教えていただいて、ありがとうございました!
千惠子
なんも、なんも。でも、いっつも私「山ってありがたいなあ」って言ってるの。ほんっとに。そういうふうに感謝しながらね。好きなごどして、お金も稼がせでもらって。お父さんに怒られでも、隠れででも行きたいんだもの(笑)。
矢吹
ははは〜、そうですよね。
千惠子
疲れだ〜って思っても、すぐまた行きたいって思えるもの。
矢吹
ほんとに好きなんですね。
千惠子
好ぎだ〜。だから、息子には「狂ってる」って言われるのよ(笑)。
矢吹
はははは〜。
千惠子
いまに行がれなぐなる日が来るけど、それまで楽しませでもらう。今度はマイタケの時期に来てください! 一緒に食べにましょう~。採れる場所は教えられないけどね(笑)。

秋田の春のふつう、山菜採り。千惠子さんの大きな山菜の束は、大好きな山を仕事にできている幸せの象徴のように感じました。

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