食と暮らし学 ババヘラアイス

食と暮らし学 ババヘラアイス

講師 ちがま冷菓のみなさん

Contents

  • ① ババヘラ工場へ!
  • ② ババたちの朝 2016.7.13
  • ③ ババヘラくださ〜い! 2016.7.20
  • ④ チャレンジ!バラ盛り 2016.7.27

文=矢吹史子

元デザイナーの編集者。秋田生まれ秋田育ち、筋金入りの秋田っこ。
フリーマガジン『のんびり』副編集長。

写真=船橋陽馬

夏が近づくにつれ、秋田の道路端で見かけることが多くなるカラフルなパラソル。その下にいるのは、派手な色のエプロンを掛けたアイス売りのお母さん。秋田の夏の風物詩「ババヘラアイス」です。
売り子のお母さん、「ババ」がアイスをヘラで盛りつけるから「ババヘラ」。そして、熟練ババたちによってバラの花びらのように盛りつけられたものは「バラ盛り」と呼ばれ、今や秋田県民なら誰もが知っている、名物アイスとなっています。
今回はこの「ババヘラアイス」について学んでいきます。

①ババヘラ工場へ!

秋田市から車で約40分。男鹿おが若美わかみにある「ちがま冷菓」は、ババヘラアイス(商品名 ナマハゲアイス)を製造、販売している店の一つです。
この店が秋田県内各地でアイスを販売するのは、土曜、日曜、祝祭日が基本。平日は販売に向けての製造が行われているとのことで、その現場にお邪魔して、社長の千釜一ちがまはじめさんにお話を伺います。

工場に着くとちょうど、機械の中から、トロリとしたピンク色のペーストが出てきたところでした。

矢吹
お〜出てきたー! これがアイスになるんですか!?
千釜
はい、食べでみれ。

(出てきたばかりのピンクのペーストを差し出される。)

矢吹
わ〜いきなり! イチゴ味! いただきますー! イチゴの部分だけってなかなか食べられないからね。お〜黄色のもの出てきた。レモン味のほうですね。
あ〜美味しい! 千釜さんのって、甘みが少なくてさっぱりしてていいですよね。
千釜
元はけっこう甘いんだよ。ミルクがさっぱりさせでるんだ。うぢのはよそよりミルク分が多いんだ。一番少ない店が1袋半のどごろ、うぢは4袋使ってるもの。そのミルクの量で全然違うの。
矢吹
ミルクがベースに入ってるんですね。千釜さんのアイスは、このイチゴとレモンの2つの味を、半々に缶に入れて販売するんですね?
千釜
それでも、そのままだとあまりにもザラザラだから、ここからさらに凍らせで絞めで。向こうのマイナス16度の冷蔵庫で固めでがら、こっちのマイナス23度の方さ移すの。全部で2日間ぐらい固めるごどになるな。
矢吹
2段階でがっつり冷やすんですね。1缶で、だいたい何個くらいのアイスができるんですか?
千釜
上手な人は600個。
矢吹
それ、1日で売っちゃうんですか?
千釜
今は売れない。昔は売れだんだけど。
矢吹
千釜さんは、このアイス屋さんはどのくらいやられてるんですか?
千釜
うちは40年。それでも一番新しいの。
矢吹
ババヘラ自体はいつからあったんですかね?
千釜
50〜60年くらいになるのがな。元祖で始めだ人は和菓子屋の職人さんで、大昔には和菓子にもこういう氷の菓子があったんだって。今は機械で作るけども、昔は全部手で作ってで、それで「これで商売でぎるんでないが?」って思って始めだんだって。今ある他の店も、そごで使われでいだ人だぢが、分がれで、分がれで、始めでいったんだ。
矢吹
なるほど〜!! 始めからこういうヘラで盛りつけてたんですかね?

通信販売用のアイスを盛りつけ中

千釜
うん。最初からこれ。今はこうやって機械だけど、昔はその日売りに行く分を、朝から手で作って……。
矢吹
え〜!! 大変! そうやって始まったんですね〜。
千釜
うぢはやり方がら味がら、全部元祖のどごがら教えでもらって、昔っからずっとこの味。全ぐ変えでない。
矢吹
40年、味を変えずにやってるのもすごいですね。
千釜
変える度胸がなかったんだ(笑)。

社長の千釜一さん

矢吹
ふふふ。千釜さんはどうしてアイス屋さんを始めることにしたんですか?
千釜
オレは元々自衛隊だったんだ。そこで腰悪ぐして辞めで、親父と何か商売始めるがってごどで、二人で始めだの。
矢吹
昔はババヘラのお店はいっぱいあったんですか?
千釜
ううん。昔から同じ。このあだり(男鹿市)に4〜5店舗ぐらいだげ。昔はこの2階に高校生のアルバイトどがが寝泊まりしたったんだ。
矢吹
じゃあ、昔は必ずしも「ババ」じゃなかったんですね。
千釜
この「ババヘラ」っていう呼び方は、男鹿高校の生徒が付けだっても言われでるよ。ババばし(ばっかり)売ってるがら「ババヘラ」って。で、高校生だぢがアルバイトで来て売れば「ギャルヘラ」どがって言ってな(笑)。
矢吹
ははは〜。当時不評じゃなかったんですかね?「ババ」って。
千釜
その頃アイス売ってだ人なんて、40代くらいだったよ。
矢吹
そうですよね。昔、アイス売ってるところに子どもが「ババヘラください!」って来たら、売り子さんが「ババでねぇ!」って怒ってたのを見たことありますもん。
矢吹
これ、冷やしたものを土曜日に売りにいくんですよね? 朝、出発するところから売ってる最中まで、様子を見させてもらえないでしょうか? 遠巻きにでもいいんですけど。
千釜
出発するのは朝早ぇし、すったげ(とっても)忙しいがらな。
矢吹
お母さんたち、ここに集まってみんなで車に乗り込んでいくんですか?
千釜
んだんだ。
矢吹
見たいんですけど……。
千釜
早いよ。一番先に来るのは朝5時……。
矢吹
5時〜〜〜!? はやっ!
千釜
そのあと、6時、6時20分と続いで……最後に出るのが7時。
矢吹
今売りに行ってるのって、どのあたりなんですか?
千釜
県内全部。本荘ほんじょう方面、大館おおだて阿仁あに横手よこて……。
矢吹
遠い所もありますもんね。だから5時とかに出ないといけないんですね。それじゃあ、土曜日、6時半には来ますので、見させてください。よろしくお願いします!

これまで何度も食べてきたババヘラアイスですが、その背景は謎だらけ。次回は、朝の準備から、売り子のお母さんたちに密着します。がんばって早起きするぞ〜!

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