食と暮らし学 ババヘラアイス

食と暮らし学 ババヘラアイス

講師 ちがま冷菓のみなさん

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文=矢吹史子

元デザイナーの編集者。秋田生まれ秋田育ち、筋金入りの秋田っこ。
フリーマガジン『のんびり』副編集長。

写真=船橋陽馬

④チャレンジ!バラ盛り

お母さんたちの見事なヘラさばきに感動した私たち。
どうしても自分たちもやってみたい! と、千釜一さんにお願いした末、
バラ盛りに挑戦させてもらえることになりました。

千釜
見学に来た中学生だってみんなでぎるがら大丈夫。
矢吹
負けられないな〜(笑)。とりあえず、気合いのほっかむりだけはしました。よろしくお願いします!
千釜
アイスは柔らかすぎると厚くなってバラにならない。固すぎてもダメ。少し溶げだぐらいがちょうどいいんだ。こうやって……。
矢吹
は〜! 途中から縦向きに盛っていくのか〜。そうやっていくとバラっぽくなっていくんだ……。でも……千釜さんより枝美子さんのほうが上手ですね(笑)。
千釜
あの人はうまいものな。
矢吹
ヘラに付けるときのコツはあるんですか?
千釜
この、缶の脇にヘラをこするかんじで。やってみれ。
矢吹
なるほど〜。この内側のヘリにね。まだ何を教わったかもよくわからないんですが……。まずは実践、やってみます! このヘリにこすって……。
千釜
カップの真ん中を埋めで。
矢吹
少しずつ……縦向きに……。枝美子さん「左手はやんわり持つ」って言ってたっけ?……難しい〜! お母さんたちはみなさんこういう講習を受けるんですか?
千釜
みんな自分がだで覚えるんだ。あ! それ、2回やればダメ。ヘラに付けた分は、1回で盛らないとバラにならない。
矢吹
なんですって!? それ、早く言ってください! え〜全然バラじゃない……。
千釜
だんだんよ。
矢吹
なんか四角いもんな〜。しかも、枝美子さんのは黄色とピンク、きれいに別れてた。私のは汚いバラです……。
千釜
一回目でこれだばいいほうだ。
矢吹
いいほう!?
千釜
いい、いい、いい。
矢吹
お母さんたちがいかに上手いかがわかりますね。
悔しいな〜。でも、不細工だけど美味しい。
千釜
3日もやれば慣れる。
矢吹
まあ、十何年やってる人たちをいきなり越えちゃったら悪いからな〜(笑)。でも、お母さんたち、暑い中ありがたいですね!
千釜
あのパラソルの下は意外と涼しいんだ。その代わりパラソルは高いから。
矢吹
ははは〜。
千釜
普通のパラソルど違うもの。去年、二十数本、全部取り替えだ。
矢吹
勝負かけてますね。千釜さん、ここの跡取りは?
千釜
息子いるけども、これで食っていぐってば大変だ。県内では売り上げが昔の3分の1になってる。
矢吹
何が原因なんでしょう?
千釜
慣れだな。
矢吹
「食べたことあるから買わなくていいや」っていう?
千釜
んだ。
矢吹
やっぱり、県外に出していかないといけないんですね。
千釜
関東ではすごい売れでるんだ。向こうのレストランなんかに。今に飽ぎられるど思うけどな。
矢吹
いやいやいや。40年続けてきて、どうですか?
千釜
この仕事、辞めないでここまで来れだごどは、いがったど思う。
矢吹
夏はアイスを売って、冬はどうされてるんですか?
千釜
10月なれば八郎潟はちろうがたに白魚獲りにいぐの、12月がらは男鹿でハタハタ漁。そして1月がらは秋田市で除雪。
矢吹
忙しいですね。いろんな仕事もしながら、本職のババヘラは続けている、と。
千釜
そう。やっぱり辞められない。昔がら働いでくれでる人だぢいるもの。オレが大変などぎがら一生懸命手伝って、がんばってくれでるもの。自分の都合では辞められない。
矢吹
そうか〜。
千釜
去年まで、84歳の売り子の人がいだけど、オレがらは「辞めれ」っては絶対に言わない。本人がら「歳だがら……」ってない限りな。
矢吹
うんうん。若い人がやりたいって入ってきたらどうですか?
千釜
雇うよ。
矢吹
来るもの拒まず、辞めるようにも言わず……。
千釜
んだ。おめ、一回アルバイトさ来ぇばいい。
矢吹
お〜! 面接基準はあるんですか?
千釜
ない。
矢吹
でも、やり始めたら私が辞めるっていうまで辞められないんだね(笑)。時給制なんですか?
千釜
1日計算。そして、いっぱい売ってくればさらに歩合制で。だがら、ちょっと良い所さ行げば、1日2万円くらいは儲かるよ。
矢吹
お〜! いいなあ。
千釜
お盆はどごさ行っても、最低1万円以上は儲かる。アイス売ってる人だぢみんな主婦で休んでるがら。
矢吹
その反面、帰省してきた人たちは懐かしくって食べたいですもんね。じゃあ、お盆にバイトに来るか〜(笑)。

(夕方、今日の販売を終えたお母さんたちが次々と帰ってくる)

矢吹
枝美子さん、おつかれさまです! あのあとどうでしたか?
枝美子
あれから30人くらいの団体さんがきて。
矢吹
え〜! 30人!? 一気に30個盛ったんですか?
枝美子
ええ。
矢吹
すごいー! でも枝美子さんのスピードだったらあっという間なのかな。さっき千釜さんからバラ盛り習ったんですけど、枝美子さんみたいには、とうてい無理でした……。
枝美子
ヘラに付けるのも大変でしょ? やっぱり数やらないと。
矢吹
はい……バイトしにこないと。
枝美子
ふふふ。それじゃあ、どうもお疲れさまでした〜!
矢吹
今日はありがとうございました! 明日もお天気良さそうだから、たくさん売れそうですね!
お母さんたち
明日もがんばるよー!

秋田の大定番、ババヘラアイス。そのかわいらしさや美味しさは、働き者のお母さんたちあってこそのものと実感し、道路端のパラソルが、以前に増して誇らしく感じられるようになりました。

最後に、船橋枝美子さんの見事なバラ盛りを、動画でご覧ください!

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