花火師

8月。全国花火競技大会「大曲の花火」の季節がやってきました。日本一の座をかけて、全国屈指の花火職人たちが大仙市だいせんし大曲おおまがりに集結するこの大会。その最高峰の技を見ることを心待ちに、毎年、全国から70万人もの人々が訪れるといいます。
8月27日(土)に迫ったこの大会を前に、今回は「花火師」について学んでいきたいと思います。

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①花火ができるまで

今回の講師は、花火の街、大曲で花火製造をしている、株式会社響屋ひびきやの齋藤健太郎さん。
各地で毎週のように花火大会が開催されるこの時期。スタッフ総出の大忙しの工房を訪ね、花火の製造工程を見せていただきます。

齋藤
花火の製造工程は大きく分けると4つに分かれるんですよ。①火薬の配合、②造粒ぞうりゅう作業といって、「星」と呼ばれる火薬の玉を作る作業、③花火の玉を込める作業、④仕上げの玉貼り作業。でも今日は最初の火薬の配合作業はやっていないので、造粒作業からお見せしますね。
矢吹
よろしくお願いします!

【造粒】

齋藤
花火の玉のなかに入れる、アメ玉みたいな火薬「星」を作る作業です。まずはこの釜の中に、ゴマよりも小さいセラミックボールの粒を入れます。そこに配合した火薬を水で溶いたものをかけて、さらにそれに粉をかけて、乾かして……という作業を3〜4回繰り返して、どんどん太らせていくんです。
矢吹
へー!
齋藤
日本の花火の特徴っていうのは色の変化で、この状態だと何色かわかりませんけど、青の火薬をかけた後に、赤の火薬をかけて……っていうふうに、少しずつ火薬の液をかけていくんです。
矢吹
これは昔からのやり方なんですか?
齋藤
はい、元々は手でやってたんですけど、30年くらい前から、この釜にかけるようになりました。花火を作るなかで、ここが唯一の機械作業ですね。一気に大きくしてしまうと、湿ってしまったりして火が着かなかったり折れてしまったりするので、少しずつ、ゆっくりやっていくんです。
矢吹
機械作業とはいえ、ほとんど手作業みたいなものじゃないですか!
齋藤
大きさは、この木箱を使って確認していくんです。この1尺2寸の木箱に入れて、何個並ぶかで大きさを決めていきます。
矢吹
箱が基準なんですね。大きさや重さを測るんじゃなくて。
齋藤
元はこれよりもっと小さかったんです。大きくしたのがこれ。約3センチくらいに大きくするのに、1ヵ月くらいかかるんです。
矢吹
えー!めちゃめちゃ手間がかかってますね! 花火は一瞬でバーンと上がっちゃうのに。
齋藤
尺玉一つを作るのに1ヵ月半くらいかかって、実際に打ち上がるのは約6秒ですからね……。
齋藤
星はこの乾燥室で乾燥させます。
矢吹
うわ〜!!! サウナみたいに暑い……。
齋藤
今、温度計40度振り切ってますよ。
矢吹
みなさんよく倒れないですね……。
齋藤
ほんとは天日乾燥が一番なんですけども、天気も不安定なので。ここに入れて乾いたら、また釜に入れてかき混ぜて……と繰り返します。火は使えないので、お湯で部屋を暖めているんです。
矢吹
設備投資が大変ですね。昔はもっと大変だったんじゃないですか?
齋藤
そう。こういう設備がないときは、もう仕事止まっちゃいますもんね。(乾燥室にかかる)灯油、1週間に400リットル使うんですよ。
矢吹
うわ〜!
齋藤
こっちは「割り薬」といって、星を飛ばすためのものです。これにも火薬がかかってますが、芯に使われているのは、秋田こまちの籾殻もみがらなんです。
矢吹
へ〜! 米どころだからなんでしょうか?
齋藤
秋田や新潟の業者さんは、ほとんど籾殻です。5寸玉くらいまでは籾殻使って、大玉用のものは綿花の綿を取った種の部分に絡めて。米どころじゃないところだと、コルクなんかを使っていて、うちでも試してみたんですけど、籾殻に比べて飛びが弱い。
矢吹
秋田のお米のパワーはさすがですね!

【玉込め】

矢吹
ここで玉を込めるんですね。
齋藤
今込めてるのは、7寸玉ですね。
矢吹
玉を込められるようになるには、何年くらいかかるんですか?
齋藤
うちは、1年目の新人でもベテランでも、みんなに込めさせますけど、いいかんじに開くようになるには、最低でも5年はかかるんですよ。今込めている今野は8年目ですね。若手のなかでも一番玉込めがうまいですね。
矢吹
これは、どういうふうに開く玉なんですか?
今野
まん丸なんですけど、色が変わるもので、最初が銀、その次ピンク、その後、ナノハナっていう、ちょっとオレンジっぽい色の3色に。

〈職人 今野さんの玉込め作業をご覧ください。〉

今野
できました。
矢吹
わー! ありがとうございます! すごく美しい手裁きでしたね!
今野
手つきがスケベなんですよ(笑)。
矢吹
ちょっと思ってました(笑)。玉に何か書いてますね。なんて書いたんですか?
今野
玉の星の変化を書いているんですけど、「ギ(銀)、先、ピ(ピンク)、ナ(ナノハナ)」。略称なんですけど、自分たちでわかるように。
矢吹
なるほど〜!「銀が先に出て、ピンク、ナノハナ」と。

【玉貼り】

齋藤
玉を込めたら、紙を貼っていく「玉貼り」という仕上げの作業をします。
矢吹
何層にも紙を貼ってますね。
齋藤
大玉だと、1回に6枚の紙を貼るんですよ。6枚貼ったら乾かして、また6枚貼ったら乾かして……と10回やって、計60枚の紙を貼っていきます。完全に乾燥したら、完成です。
矢吹
これを貼ることで、何が変わるんですか?
齋藤
貼ることによって玉が強くなって、上空で爆発したときに圧力がかかって丸く出る。玉貼りの枚数によって、弱かったり強かったりしてしまうと、丸く出ないこともあるので、大事な作業なんですよ。
矢吹
みなさん、手つきがすごく素早いですね。
齋藤
たぶん、この作業させたら全国で一番ですよ。ここで紙を貼った玉も、乾燥室に持っていきます。
矢吹
わー! メロンみたい! おっきいのもありますね。
齋藤
10号玉です。これで上空320メートルくらいまで上がって、320メートルくらいの大きさに広がります。
矢吹
こんな大きいものが、空に上がるなんて! 重さはどのくらいなんですか?
齋藤
中身にもよりますけど、だいたい3〜4キロ。ものによっては10キロとか。2尺玉になると、60キロくらいになります。
矢吹
60キロ!!
齋藤
これを出したり、入れたりもかなり大変ですし、さらに、この乾燥室の中は風は一方向からなので、うちのスタッフが1時間ごとにきて、それぞれの位置を変えるんですよ。この暑さのなか……。
矢吹
うわ〜……。重労働ですね。
齋藤
彼は、4月に入ったばかりですけど、入社したとき60キロだった体重が、今は55キロもなくなったって。
矢吹
え〜!! ほんとにどの工程も根気のいる作業ですね。みなさん、どうか倒れないでくださいね……。

夜空に大きく華やかに打ち上がる花火が、こんなにも地道な作業のもと作り出されているとは驚きでした。次回は、このようにして作られた花火が打ち上がる、その現場にまつわるお話を伺っていきます。

② 花火師という仕事 へつづく >>

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