秋田の女性学 「寒天使のカタチ」 第3回 寒天使・阪本真千代さん 樫の木の天使(後編)

写真・文 山本彩乃

1980年山梨県甲府市生まれ。写真家。東京学芸大学美術科卒業。バンタンデザイン研究所、外苑スタジオを経て2006年独立。
雑誌・広告等で活動中。写真新世紀入賞。
http://yamamoto-ayano.com

前回に引き続き、大仙市に暮らす寒天使、阪本真千代さんのお話です。

田んぼや畑のある生活

もともと、高校生のころから第一次産業に興味があって、農業でも酪農でも漁業でも、何かしら、できればやりたいとは思っていました。

アスパラの時期は、春から晩夏まで、早朝と夕方の1日2回収穫するんですけど、1本1本、手で穫るんです。しゃがんで穫って、しゃがんで……のスクワットをうね全体でやらないといけなくて、全部で2kmくらいになるんですよ。その時期は(筋肉が)割れますね(笑)。おかげで体力はつくんですけど、秋になったらヘトヘトになっちゃうんですよね。昔の人たちは本当に体力があるなあって思います。

田舎に移住して、農業をやりたいっていう人たちも結構いると思うんですけど、農業だけってなると本当に大変で。農機具を買うとしたらものすごくお金がかかるから、農業だけでそれを回収するっていうのは難しかったり……

それに、受け入れる土壌はまだできていないようにも感じます。こんなに空き家や土地があっても、簡単には借りられなかったりもするし……。
それでも、上の世代の人たちが農業をやれなくなったら、持て余してしまう田んぼがものすごく増えてしまうのも事実で。
安易には薦められないけれど、農業をする若い人が増えるのは楽しいことだし、切実なことなので、受け入れる地域の側ももっと理解し合っていかないといけないですね。

でも、毎日いいですよ、目の前に田んぼがある生活は。年間で景色がすごく変わるんですよね。水が張られたり、稲穂が実ったり、雪で真っ白になったところを、キツネがバーッと走っていったり……見飽きることがない。
どこか違うところに住んだとしても、この景色だけ持っていきたいくらい。木も、都会だったらご神木って言われるくらいのサイズのものがふつうにある。生まれ変わったら木になりたいくらい、大好きなんですよ(笑)。

ちょうこくしつ座

春から秋の間は農業でずーっと休みがないから、まとめて働いて、冬にまとめて休むんです。ふだんは行けない旅行に行ったり、年末は私の実家の大阪に家族でしばらく帰ったり。去年の冬は丸々、この人形を作ってたんですよ。

父方の祖父が、糸操り人形の芝居屋さんだったんですけど、ご縁あっていま、私もやってるんです。「ちょうこくしつ座」っていう名前で、友だちと二人で。私が人形を操って、彼女が演じるんです。
人形の作り方も全くわからなかったんだけど、1体だけ持っていたおじいちゃんの人形をみながらやって。動かし方も、父が中学生くらいのころ公演についてまわっていたことがあったらしくて、ちょっと動かせたので教わって……。

まだ1年目で、演目は「のらくらとらやん」っていう話一つだけ。関西の昔話なんですけど、私も彼女も関西出身なので、思いっきり関西弁で演じてます。 来週も公演があるので、今もその準備の真っ最中なんです。

子どもたち

子どもは3人いて、みんな男の子。小学校1年、3年、6年。秋田の学校って、自分が暮らしていた大阪の学校とは全然違うなあって感じます。すごーくきっちりしていて、私のころとのギャップに、きゅーって窮屈に感じることもあります(笑)。子どもたちは楽しんで行ってますけどね。

子どもたちが作ったおもちゃ

学校から帰ると毎日、3人で暗くなるまでずーっと外にいますね。学校に行くのにも歩いて1時間近くかかるくらいだから、友だちの家も遠くて、一旦帰ってまたどこかに遊びに行くっていうことはないし、うちにはテレビがなくてテレビゲームもできないから、3人で遊びを考えて。

今年、上の子が中学生になるから、子どもたちの居られる別棟を建てたいなあと思っているんですよ。子どもたちももう、かなりいろいろな作業はできるので、みんなで作ろうかと。すごく小さいものですけどね。

自然がすぐそばにあって、川があったり、クマも出たりするから危ないこともあるけれど、私は動物のお母さんみたいなかんじで。危なければフォローするけれど、できればどんどん外に出ていってほしいし、むしろ私は「18歳を過ぎたら一緒には住まない」って思っているくらいなので。

みんなが出て行ったらどうしようかな……。私、そんなに秋田に固執していなくて、広く考えたいなって思うんです。行きたいところがあれば、家族が離れて暮らすのだっていいって思うし。逆に子どもたちだけがここに残ったりしてね。そう言いながら、私がずっと秋田にいるのかもしれないしね。

自分たちでお店を建てたこと、子育てに関すること、これから先のことなど、真千代さんには、一般的な価値観にとらわれない自由度があるように感じました。
それは寒天を作ることも同じで、「固める」というルールのもとで、あとは何を入れてもいい、味はそのときに考えればいい、器だって何でもいい……
大事なのは、そのときの「こうしたい」と「いまできること」。
その素直で等身大な考え方が、真千代さんの強さのように思いました。

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