食と暮らし学 チオベンの秋田弁

文・山本千織 写真・船橋陽馬

山本千織
東京・代々木上原で「chioben」を開業、お弁当の販売を手がける。バラエティ豊かなおかずの色鮮やかなスタイリング、見た目と味とのおいしい意外性、そして定番の春巻とたこめしの安定感に一度食べたら忘れられないファンが続出。メディアの制作現場やパーティ、レセプションへのケータリングなど、活動は多岐にわたる。著書に『チオベン 見たことのない味 チオベンのお弁当』(マガジンハウス)

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秋田の食材を求めて丸一日かけて秋の秋田を奔走した、「チオベン」山本千織さん。旅の3日目は、その食材を詰めこんで、お弁当にしてくださいました。できあがったのがこちら!

 

「チオベンの秋田弁」

【ゴリのおにぎり】

苦味がくせになる小魚「ゴリ」の佃煮をおにぎりに。八郎潟はちろうがたの小魚のなかでも特に「内臓感」を感じさせ、甘く炊いてもしっかり残る苦味は唯一無二。みんなもっと食べればいいのにな……。

【菊ととんぶりのおにぎり】

色鮮やかで香り高い菊に、秋田の伝統野菜「とんぶり」のプチプチが楽しい。

【肉味噌とシソの実のきりたんぽ型おにぎり】

甘辛い味付けの豚そぼろに、しその実を加えて。串の部分には、ごぼうを煮たものを使用。

【ハタハタの唐揚げ甘酢あん】

秋田の県魚ハタハタを豪快に丸ごと揚げる!

【鶏と栗の山内いものこ団子】

秋田の伝統野菜「山内いものこ」のなかでも特に粘るという「孫いも」を使って団子の皮をつくる。蒸して、つぶして、練って、甘辛く煮た鶏と栗の渋皮煮を入れて丸めて揚げる……。そのままでも最高に美味しい今時期の里芋様に心で謝りつつ、鶏と栗の渋皮煮の甘みが内包されると、さらに贅沢に。

【白魚と三関せりの春巻き】

春巻は東京で使えない食材を入れようと決めていた私は、八郎潟で獲れた白魚と根付きの「三関みつせきせり」を入れた春巻に。
火が入って味が濃くなった白魚と揚げ蒸されて香りがたったセリが、笑えるくらい合う!

【作り方】

春巻の皮に白魚、セリをのせ、塩を少量ぱらっとかける。包んで、もう一枚でさらに2度巻きし、180〜190度の油で揚げる。

【山内にんじんと干し柿のラペ】

ゴボウのように密度のある山内にんじんに、干し柿の甘みをプラス。

【きのこと大根おろしのきんぴら】

キンタケ、白シメジ、カノカダケ、コナラ、アミコダケなど、数種類のきのこを使用。繊細でだしになるきのこは味を入れたくないくらい。醤油でさっと味付けして、最後に大根おろしを入れることで、きのこと味をまとめあげるように作るきんぴら。

【横沢曲がりねぎのナムル】

チオベンの定番ナムルを曲がりねぎで。ねっとりとした仕上がりとなるこのナムル、その収穫の様子見て感動してきただけに「ふだんよりさらにねっとりさせよう!」と、ねばりの火入れ!

【作り方】

曲がりねぎを、縦半分、斜め薄ぎりにして、米油を熱した鍋に入れ炒めていく。
ねぎの半量くらいのエノキも入れ炒め、塩とおろしにんにく、少量の醤油で調味。火が入り、ねっとりなってきたらごま油を加え、味をまとめあげる。
ポイントは炒め物にならないようにすること。鍋で炒め煮する気持ちで。
日持ちもしてごはんとの相性もいい。

【ハヤトウリとカブの麹漬け】

「旬菜みそ茶屋くらを」の三五八漬けの素を使って。短時間の漬け込みでも深みのある味わいに。
三五八とは、塩、米麹、蒸米を3:5:8の割合で混ぜ合わせて作る漬け床。

【紫芋ボール】

チオベン定番の紫芋ボールも、秋田の芋だと鮮やかさが格段に違う。

【いちじくのくるみあん】

生のくるみをすりつぶして、そこに甘みとスパイス、少量の醤油でつないだあんを挟んだいちじく。
秋田がいちじくの宝庫だとは、秋田に来るまで知らず……。そして「いちじくの甘露煮」がポピュラーな家庭料理だったとは! ふだん私が作るお弁当のなかでも「写真映えする食材上位」に食い込むいちじくが、秋田でここまで愛されているとは……。秋田は、一周回っておしゃれ県なのか……?!

“秋田の食材をチオベンらしく”。丸一日かけて旅をして出会った食材たちを使って、一日かけて作ったお弁当は、詰めきれないほどの種類ができました。それでももっと詰めたい!! 食材と調味料に大いに楽しませてもらった旅でした。

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