きりたんぽの基礎、ルーツ、たんぽ作り、そして比内地鶏のことを教わってきた私たちですが、最後に再び、きりたんぽ協議会の岩船さんにお話を伺います。
- 岩船
- このあたりでは、新米が穫れると「たんぽ会」と称する、いわゆる飲み会が開催されるんですよね。山形に行くと「芋煮会」っていうのがあったりするんですけど。
- 矢吹
- 秋田では、秋に山や公園なんかで仲間同士で鍋を囲む「なべっこ」がありますが、それともちょっと違うんですか?
- 岩船
- なべっこでもきりたんぽ鍋はやりますが、たんぽ会は親戚とか近所の人たちを集めた飲み会のようなものですね。最近は少なくなりましたけど、農作業っていうのは、親戚や近所のみんなで手伝いながらやるものだったので、それが一段落すると、どこかの家を拠点にして、「ごくろうさんでした」という会を開くんです。そして、そのときに穫れた新米を潰してたんぽを作って、お父さんがたは酒を飲むわけですよ。
- 矢吹
- それがたんぽ会! 岩船さんは、今年はたんぽ会はもうされましたか?
- 岩船
- 今年はまだですね。でも今はあんまり共同で農作業をすることがなくなってきているので……。
- 矢吹
- それじゃあ、たんぽ会もやらなくなってきているんですか?
- 岩船
- それが、最近では農作業に限らずこの時期に何かの集まりをするときに「たんぽ会するか?」ってなるんですよ。開催場所はほとんどが飲食店で。結局は「たんぽ会」と称した飲み会なんです(笑)。
- 矢吹
- きりたんぽ鍋を食べる、というよりは「たんぽ会=飲み会」なんですね(笑)。
- 岩船
- はい(笑)。
- 矢吹
- それは、年末くらいまで続くんですか?
- 岩船
- どこかのタイミングで「忘年会」に変わります。
- 矢吹
- はははは〜!! 形は同じなのに?!
- 岩船
- はい(笑)。それで、1月に入ると新年会になって、新年会が2月の中頃まで続いて、その後3月は年度末の役員会、4月〜6月も総会シーズン、7月になると暑気払い。8月にはお盆があって、9月になれば米が穫れるので、またたんぽ会……。と結局、ずーっと酒を飲んでるんですよね。
- 矢吹
- ははは〜! 何かにつけてお酒を飲んじゃう! 秋田らしいですね。
- 岩船
- いつのまにか飲むほうがメインになってしまって……。
- 矢吹
- やっぱりそこでは日本酒ですか?
- 岩船
- そうですね。鹿角には「千歳盛」という酒がありますからね。もはやこの酒は我々のDNAに組み込まれてますから、よその酒ではちょっと満足できないんですよね。
- 矢吹
- うんうん。それから、鹿角や大館ではきりたんぽがよく食べられていますが、南下して五城目あたりまでいくと「だまこ鍋」になりますよね。
- 岩船
- だまこはこっちでもやりますよ。
- 矢吹
- やりますか?! 出汁や具材や、ご飯を半殺しにするところまでは一緒なんですが、ご飯を棒状にはせず、お団子状に丸めて……。
- 岩船
- はい。うちではだまこは焼かずに入れますね。きりたんぽより手軽に食べられるんですよね。家で作るならだまこ、たんぽは買ってきたものを入れます。
- 矢吹
- うんうん。そして、私も実際には食べたことはないんですが、八郎潟では「つけご」っていう、ご飯を半殺しにしてから、たんぽにもだまこにもせずに、汁に浸して食べる料理があるらしいんですよ。岩船さんは食べたことありましたか?
- 岩船
- それはないですね。
- 矢吹
- そうやって、地域や食べるシチュエーションによって少しずつ形状が違っているのもおもしろいですよね。
- 矢吹
- それから、以前秋田のみなさんに「新米が穫れたらご飯のお供に何を食べますか?」と聞いて回ったことがあるんですが、「新米はきりたんぽにするに決まってるでしょ!」っていうかたが結構いて。
- 岩船
- そうかもしれないですね。
- 矢吹
- 私なんかは「せっかくの新米を潰してしまうなんてもったいない! 白米で食べましょうよ」って思うんですけど、白米よりもきりたんぽのほうが好まれるんでしょうか?
- 岩船
- きりたんぽって、やっぱりごちそうなんですよ。だからまずは「今年も美味しくできたね」とみんなで味わってから、日常(白米)に戻るんです。
- 矢吹
- やっぱり、まずはきりたんぽなんですね!
新米や比内地鶏、獲れたての食材を味わうことはもちろんですが、みんなで「おつかれさま」と鍋を囲む時間が、秋田県民にとっての何よりのごちそうであり、その時間も含めて、きりたんぽは「秋田名物」なのかもしれません。
そんなきりたんぽ鍋を、みなさんにもぜひ食べていただきたい! 最後にあらためて、その作り方を動画でご覧ください!
きりたんぽを愛するみなさんの言葉が
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