「横手のかまくら」を訪ねた私たち。前回に引き続き、かまくら委員長の照井さんにお話を伺います。
- 照井
- 私は同じ横手市でも、もう少し町なかかから離れたところの出身なので、「2月15日だからかまくら」っていう感覚はあまりないんですよ。ただ、遊びとしては自分の中に元々あったんだけれども。
- 矢吹
- はい。
- 照井
- 小さい頃は、冬はとにかく雪しかなかったから、雪と、十能っていう石炭をくべる小さいスコップ、それが冬場のおもちゃで。それしかないから、もう掘るしかない(笑)。
- 矢吹
- はははは!
- 照井
- それが当たり前。なんも理由はないのよ。だから、かまくらっていうのも、ごくごく自然に生まれたものなんじゃないかな?
- 矢吹
- そうか〜。
- 照井
- 実はこの行事も、もともとはそんなに深い意味なんてないのかもしれない(笑)。神様だって、後付けだったりしてね(笑)。
- 矢吹
- ありえますよね!
- 照井
- 今はかまくら委員長っていうのまでやってますけども。ここでかまくらを作って34年になります。
- 矢吹
- 照井さんは職人さんでもあるんですか?
- 照井
- 職人ではないけれど、この横手公園はね、他の会場とは違って、地域の若い人たちとの独自の会場だったんですよ。全部自分たちで企画して。
- 矢吹
- どういうお仲間なんですか?
- 照井
- もともと「かまくら村実行委員会」っていう団体があったんですけど、「横手は冬になると娯楽もないよね」「雪があるからかまくらでも作ろうか」というところからみんなが集まって。
- 矢吹
- うんうん。
- 照井
- 仕事終わってから夜に集まって、1ヵ月くらいかけて10個くらいのかまくらを作って。自分たちで作って、自分たちで穴掘って、自分たちで中に入って酒飲みしようよって。そうやって楽しんでたわけですよ。
- 矢吹
- 行事を越えて、いい意味での遊び場を作って……。
- 照井
- そうそう。ここに来ると誰かいるから、みたいな。
- 矢吹
- うんうん。
- 照井
- きちんと市道路の占有許可書みたいな申請書書いて、提出してね。
- 矢吹
- それがだんだんと、いまの行事と一緒になってきた?
- 照井
- はい。歩み寄って(笑)。
- 矢吹
- でも、お祭りとか行事って、そうやって出来てくるものなのかもしれませんね。もともとは「みんなで集まろうよ」っていうのが発端で、だんだん根付いていくというか。450年前も実はそうだったかもしれないですよね。
- 照井
- そうですね。
- 矢吹
- 遊びで始まったものが、いまやこんなに大きな行事になったんです。
- 照井
- なんだろうね、自分なんかがやったことを喜んでくれる人がいる、これはたまんない!
- 矢吹
- おお~!ってなりますよね。
- 照井
- それがモチベーションですね。
- 矢吹
- これからこうしていきたい、ということはありますか?
- 照井
- そうですね。「昔に比べてかまくらの形が変わってしまった」とか、嘆く人もいるんです。だけど私は、時代時代で自分たちに合うように変えていっていいと思うんです。そういうふうに、縛られないで変えていくからこそ、次に繋がっていくと思うんです。
- 矢吹
- はい。
- 照井
- 例えば、日にちなんかもね、横手も2月15、16日に固定してやってますけど、そこに縛られるあまり、参加する人が少なくなったっていうこともあるわけじゃないですか。それを考えれば、土日を絡めたほうがやる側もいいんじゃないか? とかね。
- 矢吹
- うんうん。そういう変えていったらいい部分がある一方で、変えてはいけない部分っていうのはどこだと思いますか?
- 照井
- やっぱり「行事」ということですよね。イベントではない。
- 矢吹
- 神様への感謝の気持ち、という部分?
- 照井
- はい。その時代その時代のね。そして私はね、神様は水だけじゃないと思ってるんですよ。他にも、なければ生きていけないのに、あって当たり前だと思ってるものってあるじゃないですか。
- 矢吹
- はい。
- 照井
- そういうものに対する感謝の気持ちを表す日を、年に一度は持とうよ、と。この部分は変えてはいけないんじゃないかと思うんです。そうしたら、あとは、かまくらの中に入るのは子どもじゃなくなってもいいのかもしれないし。私はもともと大人になって始めたからね(笑)。
- 矢吹
- そうですよね!
- 照井
- あとは、安全性でもなんでも変わっていくのはしょうがないよね。私はなんでも受け入れるタイプなんで(笑)。
- 矢吹
- はははは! いいですね。
- 照井
- それに「昔はこうじゃなかった」って言う人の、昔っていつなの? って聞きたいね。その人の小さい頃の話だとしたら、それだって450年の中の通過点でしかないわけだよね。だから、時代に合ったように変えていけばいいと思うんですよ。
角館の火振りかまくら、六郷のカマクラ、そして横手のかまくら。同じ「かまくら」でありながら、それぞれに全く異なる行事であることに、秋田の行事の多彩さを感じます。
またそれらは、数百年の歴史がある行事ながらも、時代に合わせて形を変えていることがとても軽やかで、それこそが長く続いている所以に感じました。
最後に、それぞれの行事の動画をダイジェストでご覧ください。
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