


- 1コーヒー&カセットのマイペース。
のら珈琲(秋田市旭南) - 2まさにノーミュージックノーライフ。ホソレコで音楽再発見。
細川レコード店(秋田市土崎) - 3大森山動物園のいいとこをいくつもあげていきます。
秋田市大森山動物園(秋田市浜田) - 4もっきり天国、土崎で100年以上続く酒屋を教わりました。
竹内酒店(秋田市土崎) - 5いつでも竿燈を楽しむひとつの方法。
秋田市民俗芸能伝承館(秋田市大町) - 6ブレンド米という知られざる世界への誘い。
平沢商店(秋田市大町) - 7甘酒が咲かす、糀のチカラ。あまざけらぼ。
- 8誰かの「こうしたい」に寄り添って。あくび建築事務所。
- 9あなたを死なせない。「秋田モデル」が守るいのち。
- 10アニメの現場改革を、秋田から。
株式会社つむぎ秋田アニメLab - 11見えない物語を魅せる。アウトクロップ・スタジオ、始動。
編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士
まさにノーミュージックノーライフ。 ホソレコで音楽再発見。
細川レコード店(秋田市土崎)
2018.04.04

縦書き看板こそ「細川蓄音器店」と書かれてましたが、店の中に一歩入ると、ジャンル別に分かれた棚にアーティストの名前順でCDがずらりと並ぶ、いわゆるCDショップの雰囲気。まずは、目当ての「カセットテープ」を探しました。
と、ありました! 店のいちばん奥の一角はすべてカセットテープ。すごい。これだけのカセットテープを販売している店って、最近ではまず見た記憶がありません。

ただし、よく見るとその9割9分までは演歌・民謡のカセットです。もしかして、トラック野郎の御用達店なんでしょうか。
店頭にいらしたのは細川護さん、信二さん。77歳の護さんが「社長」、その次男の信二さんが「店長」と呼ばれているそうです。

聞けば、信二さんで3代目。
今年で創業93年目という、カセットよりもレコードよりも長い店の歴史がありました。
護
- 私のおやじの時代は、どこも「蓄音器店」と言ってたと思います。最近、おやじがラジオ番組に出て昔のことを語ってる取材テープが出てきたんだけど、そこでおやじが話してたのは、蓄音器をリヤカーに乗せて、町を巡って音楽を聞かせてまわりながら、商品を販売していたそうです。今はレコードもわからない若い子が多いのに、蓄音器の話なんて、もっとわからないでしょうけど(笑)。
——リヤカーを引いて家にやって来る音楽ショップ。そんな時代があったんですね。
ちなみに、看板の「蓄音器」の表記は当時から。「たいていの辞書では「蓄音機」と書かれていますが、うちが正解だって思ってます」とのことなので、ここでは蓄音器で通します。

肝心のカセットテープの話です。
信二
- トラックの運転手もよく来られますけど、軽トラックで農作業をされてる方だとカーステレオにテープデッキしかなかったりするから、農家の方もまだカセットで音楽を聞いてる方は多いですよ。あとは、踊りの練習。ちょっと巻き戻したりするのはCDよりもテープの方がいいそうです。
——そうか、新舞踊の現場もカセットが現役なんですね。やっぱり演歌が中心になりますか。※新舞踊……日本舞踊を演歌、歌謡曲、民謡といった、現代に馴染みのある曲に合わせて振り付けした創作舞踊。
信二
- もともとはどのジャンルも平均的に置いてたんですけど、よそであまり置かないからうちに買いに来られるお客さんが増えてきて、それで結果的に今のような棚になりました。 なんですけど、店のBGMとしてはなるべく演歌をかけないようにしています。
——おっ、そうなんですね。


確かに、店内をぐるっと見てまわると、J-POP、ジャニーズ、韓流、洋楽、クラッシック、ジャズ、アニメとひと通りのジャンルがすべて揃っています。しかも、どの棚もこまめに手を入れて、商品を随時入れ替えていることがよくわかります。とりわけ、J-POPの品揃えは相当フレッシュです。
信二
- そこは戦いです。あんまりやると(社長に)怒られるので。だけど、新しい音楽も置かないとやっぱりお客さんには来てもらえませんから。



信二さんは3人兄弟。中学生の頃から、兄弟の中でいちばん音楽好きが店を継ぐという話になり、その後、東京の大手レコードショップでも修行をして、秋田に戻ってきました。東京ではJ-POPを担当していたそうで、この人の音楽はいいと思ったら、きっちり盤を揃えて応援するスタイルを貫いてきました。
信二
- だから、棚を見てもらったらわかるんですけど、どうしてこのアーティストのアルバムがこんな揃ってるんだというのが結構あります。出会ったことのないCDもたくさんあると思いますよ。

そう聞いてから改めてJ-POP棚をじっくり拝見。気になるアーティスト、アルバムが次々と目に飛び込んできます。手にとってジャケットの表と裏を見比べながら、どんな音楽なんだろうと想像する時間。この感覚、ものすごく久しぶりだなー。
というわけで、カセットテープの取材に来て、ついCDを買ってしまいました。取材陣3人でCD6枚。

他にも、秋田出身ミュージシャンの棚は、演歌もJ-POPも手厚くコーナーを設置。現在は演歌でしかやってないそうですが、月替りの売れ行きランキングをベスト40まで発表して、順位の変動を矢印で表すなど、町のレコードショップに欠かせない楽しみもあり。
そんなお店の愛称は「ホソレコ」。しっかり店の入口にも、商品を買った袋にもご機嫌なロゴで書いてありました。蓄音器に目を奪われすぎでしたね。




信二
- 決して未来がある業界ではないんだけど、当面の目標は、あと7年がんばって。
護
- あと7年で100年だから。
信二
- ひと区切り。なんとかそこまではがんばりたいです。
町の、秋田の音楽ニーズに合わせながら、自信を持って好きな音楽も発信し続けるホソレコ。話せば気さくな社長と店長にどうぞ会いに来てください。

【細川レコード店(細川蓄音器店)】
〈住所〉秋田市土崎港中央1-15-7
〈時間〉10:00〜19:00
〈定休日〉第2・3水曜日
〈TEL〉018-845-0020
〈ホームページ〉http://www.hosoreco.com/index.htm