秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード

編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士

大森山動物園のいいとこをいくつもあげていきます。
秋田市大森山動物園(秋田市浜田)

2018.04.11

動物園は全国各地にありますが、まさか「どこもおなじだ」なんて思ってる人はいませんよね。飼育されている動物の種類が違うのはもちろんですが、動物たちがどんな様子ですごしていて、それを入園者にどう伝えようとされているか。意外とコミュニケーション力の問われる施設なんです。そんなことも考えながら、秋田市大森山動物園を初訪問したところ、これがとてもナイスな動物園でしたよ!

閉園前の2時間、開園すぐからの3時間。 2日で5時間ぽっちの取材・撮影で動物園の何がわかるんだ! って大森山ファンからはお叱りを受けそうですが、「ふつうの入園者と同じ目線で大森山動物園を巡ってみて、これだけの名場面に遭遇しましたよ」というレポートとして読んでいただけたらと思います。

とにかく愛すべき瞬間、シャッターチャンス、インスタ映えの連続。 同行したカメラマン・蜂屋雄士氏によるたくさんの写真とともにお伝えします。

まずは……

「カピバラの湯っこ」。気持ちよさそうだねぇ、おい。
昼から風呂につかると、当然その顔になる。

年前、鳥インフルの影響で冬の動物園が営業停止になった際、動物園を元気づけようと地元企業が給湯設備を寄贈してできた施設というのもイイ話。なかなかカピバラにお湯を贈る発想は持てません。

そして……

距離が近すぎるアカカンガルー。柵の内側にまで入って観察できるのですが、道をふさがれてしまいました。
カンガルーを見るというより、カンガルーにヒトが見られているくらいの感覚。
間近に見るアカカンガルーの動きは、背筋を伸ばして歩くヒト科からすればかなりの奇天烈さ。動画でも撮りたくなる。

動物と観覧者の距離を近づけることは、今、全国の動物園で試みられていることですが、大森山動物園は、そのひとつひとつに工夫があります。

水面と同じ高さのところは柵がなく、手を伸ばせば届きそうな位置にいるフラミンゴ。足元からいいアオリで撮影できる。
強化ガラス越し、まさに目と鼻の先にアムールトラ。
王者の風格でもあり、やっぱりネコでもあり。ちなみに先のがヒロシ、こちらがドラちゃんことカサンドラ。
怖いくらいの勢いでガラスに体当たりしてくるチンパンジーのボンタは大森山ファンにはおなじみ。
人工哺育で育ったために、ヒトへの興味が高く、おどかして楽しんでいるんだそう。なので接写もできる。
かわいい写真が撮りたいなら屋外のチンパンジーを。日向ぼっこするコタロウ。
目の前で身を寄せ合うワオキツネザル。サル類は充実していて……。
体重300gほど、ちんまいこんまいコモンマーモセット。
いい面構えはワタボウシタマリンのランディー。レッドリストで絶滅危惧種指定の貴重な動物。
フンボルトペンギンは上から下から見ることができる。
「まんまタイム」=動物たちのご飯どきに合わせれば、食事シーンも間近に見られる。

大森山といえば、秋田市民にとって「なべっこ遠足」などでも足を運ぶ行楽の山。その山の起伏や高低差をうまく活かして、動物の動きが見やすく、間近に感じられるような設計になっています。 ※なべっこ遠足……秋田県内の学校(主に小学校)で行われる秋の一大行事。生徒たちがグループにわかれ、鍋や食材を持参し野外で楽しく調理をする。

ヒマラヤの高地に生息するマーコールはまさに園内の斜面で暮らす。
上がってくるとこの背景。見晴らしのいい絶好のロケーション。
園内には大きな天然の沼も。希少な淡水魚ゼニタナゴなどが生息しており、環境省から重要湿地に認定されている。
子どもたちには動物たちの上を通り抜けていく遊具もあり。

そしてもうひとつ、大森山動物園のこと好きになっちゃうよと思ったのは、手作りのDIY感覚。きっと予算的な都合もあるんだと想像しますが、むしろこれ、今でしょ。

イラストのタッチはさまざま、写真コラージュ派、一発ボケ派なども。夏休みの自由研究を思い出す。文章は全体にやさしくてあったかいトーン。

ほとんどの動物に名前が付いている。さっきのアカカンガルーにも。通えば見分けられるのか。

それぞれの小屋スタイル。

時間が決まった「まんまタイム」「どうぶつ解説」「エサやり体験」が順々にやってくるので、生真面目にそれを追いかけると忙しくなる。飼育員さんは気さくに話しかけてくれる方が多い印象。

実は大森山動物園といえばキリンというほどに、キリン飼育でも知られた動物園なんですが、訪ねた日には室内にいる姿しか見ることができませんでした。他に撮りそこねた人気動物としては、ライオン、シンリンオオカミ、レッサーパンダ、ラマ、アシカなども。

絶対にすべてをうまく見きることができなくて、今度来たときこそは…と思わされるのも、よき動物園の証しですね。

ちなみに、室内では常にラジオか「パッヘルベルのカノン」が小音で流されているそう。そういう顔だ。
2頭いるアフリカゾウ。困り顔なのは花子。もう1頭はダイスケ。よっ、大助・花子!

動物園ってどんな動物が飼育されているかよりも、そこにいる動物の顔、佇まいこそが大事だと思ってます、個人的には。普段から接している飼育員、足を運ぶ来園者らとの関係性から、動物の感じや園のムードが形作られていきますから。で、大森山動物園はいい雰囲気が満ちていました。

ってスピリチュアルにも受け取られかねない話を堂々と書いたところで、最後に、今回の訪問で思いがけない愛嬌を感じた動物を紹介して、長くなりすぎた大森山動物園レポートを終えたいと思います。

コンビで歩く姿が様になってたフタコブラクダ。漫才師がセンターマイクに登場してくる感じ。
カメとともに暮らすアメリカビーバー。
こっそり2足歩行していたカナダヤマアラシ。
【秋田市大森山動物園】 〈住所〉秋田市浜田字潟端154〈通常開園〉期間 3月中旬〜11月末(期間中無休) 時間 9:00〜16:30 ※詳細はホームページへ 〈冬季開園〉期間 1月上旬〜2月下旬(土日祝のみ開園) 時間 10:00〜15:00 ※詳細はホームページへ 〈TEL〉018-828-5508 〈ホームページ〉http://www.city.akita.akita.jp/city/in/zoo/