秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード

編集・文:竹内厚 写真:船橋陽馬

大曲の駅前商店街で聞いた街のこと

2018.07.11

昨年も約74万人の人出となった全国花火競技大会「大曲の花火」は、言わずとしれた大曲の、いや、秋田の、日本の宝のようなイベントですが、大曲駅前からまっすぐ伸びる、その名も「花火通り商店街」とその周辺には気になるお店が連なっています。

今回は、なんも大学編集部オススメのお店の紹介とともに、
:「次の電車まで1時間以上…… 待ち時間を過ごすオススメの場所は?」
:「花火大会会場の他に花火が楽しめる穴場スポットは?」
という2つの質問を投げかけてみました。

FOG coffeeフォグ コーヒー

丸子川のほとり、お茶とアジアの手仕事雑貨を販売する[お茶の兼松園/Batik]の建物の一角を間借りするような形で営業をはじめてまもなく3年。

訪ねた日は、週替りの豆を含む5種類の珈琲がメニューに書かれていましたが、それ以外にもカウンターの上には、焙煎したばかりの豆がいくつも。
聞けば、店主の佐々木遊ささきゆうさんは、20歳頃から自宅での焙煎をはじめて、焙煎機なども自作していたそうです。

店の目の前は丸子川。戦前、日本に滞在した建築家のブルーノ・タウトが、この川の冬景色を絶賛した。
こちらはモヒート風ジンジャー。カクテル用のアルコールも揃えているので、天気のいい日は昼からお酒を飲みに来る人も。
店内で飲むなら、立ち飲み、もしくは1本足の椅子にまたがって、壁かカウンターに寄りかかるスタイルで。

:「駅の周りは、最近は珈琲を飲ませる店がすごく増えました。その中でもオススメは[ESPRESSO 1onz(ワンオンス)]。ナイスキャラの店主が迎えてくれますよ! もちろん、僕の店まで足を運んでくれたらうれしいです」。

スケボーのことしか考えてなかった時代もあったと佐々木さん。この日も午前はスケボーを教えていた。
生まれも育ちも大曲で、花火大会は1度も欠かさず観覧してきた。「花火大会の日じゃなくても、大曲はよく花火が上がってますよ。映画見たりしてるとちょっとうるさい(笑)」。

:「花火をちょっと横から見る感じになりますけど、姫神ひめがみ公園がいいかも。いつ行っても気持ちのいい場所です。花火大会の日は、公園でテントを張って見てる人もいます」。

【FOG coffee】
〈住所〉大仙市大曲大町2-24
〈時間〉10:00~20:00
〈定休日〉火・木・金曜日
〈TEL〉0187-64-9044
〈Facebook〉https://www.facebook.com/FOGcoffee2015/

YAMAGOYA

週末はテントを張りっぱなしにして、キャンプ場から出勤してきたこともあるという、生粋のキャンプ好き高野幹子たかのみきこさんによるアウトドアショップ。

日常使いのできる雑貨も置いてあり、なにより高野さんが明るくあれこれ話してくれるので、キャンプの予定がなくても立ち寄りたくなるような場所です。

:「まずは[ミンカ]さん、[和装・はきもの・小物 加藤]さん、喫茶店の[ミルクハウス]さんですね」。

:「姫神山ひめがみやまの山頂付近で見ている方もいますよ。かなりハードなので、私は夜、お酒を飲んで、登ろうとは思いませんけど。花火大会の日に河川敷から見ていると、いつも山頂付近でヘッドライトがちらちらとしています」。

大曲に生まれ育った高野さん自身は、「花火の“ズドーン”が腹にこないとイヤなので、大会当日は必ず河川敷の桟敷席で観覧します」。

「姫神山は、毎週のように登山している人、トレーニングでいく人(私です)、山菜採りの人、山頂から御来迎ごらいこうを見る人もいますけど、遠くから引きで見ても、緑の稜線りょうせんがほんとにきれいで、私はすごく好きですね」。

雄物川おものがわの河川敷からも姫神山がよく見えます」と高野さんに教わったので、河川敷へも立ち寄りました。

花火大会当日はメイン会場となる雄物川河川敷運動公園。広々として気持ちのいい場所なので、花火のない日にのんびりすごすのもオススメです。

【YAMAGOYA】
〈住所〉大仙市大曲丸の内町7-18
〈時間〉12:00~18:30
〈定休日〉水曜日
〈Facebook〉https://www.facebook.com/OutdoorShopYamagoya/

ミンカ

日用雑貨店ということですが、店主の佐藤美博さとうよしひろさんのメキキで、器や台所用品、人形など、いろんなものが並んでいて、2階ではギャラリーも運営されています。

何々系と決してひとくくりにできないような品揃えは、佐藤さんの遊び心もほどよいスパイスとなって、見れば見るほどに発見があります。楽しい。

オリジナル商品もあり。こちらは、山形県の東光とうこう石鹸とつくった無添加の「民家石鹸」。

:「花火は1日だけ。普段は観光地じゃないから、暇つぶしに来られても困る店もあるかもしれないけど。駅に観光物産協会のやってる情報センターがあって、お土産も売ってるし、店の紹介もしてくれるから、そこがいいんじゃないですか」。

と至極まっとうなお話をいただいたのですが、粘って話を聞いていたら、大曲のことをたくさん教えていただきました。

「大曲は食が充実してるんじゃないかな。駅前の[北野水産]は昼も夜もいつもいっぱい。うちの裏にある[肉屋のさとう]もいいよね。さとうの娘さんがやってる[めんこいな]って食堂もすごく人気。安いしね。ラーメン屋もめっちゃ多くて、[中華そばde小松]は、限定麺がどんどん変わるから、それを食べたくて通ってる人もいる。東京で開かれた「ラーメン女子博 2018」にも選ばれたらしいですよ」。

他にも喫茶店、コアな飲み屋など、おもしろい話をたくさん聞きました。ユニークな佐藤さん。
現[YAMAGOYA]のある場所に店を構えていたが、2年前に花火通り商店街のやや奥まった位置にあるトタン小屋の内蔵へと移転。

:「遠くから見ると、もちろん小さく見えるんだけど、それも楽しい。きれいにすべてが見えなくてもよければ、結構どこからでも見えるから。地図を広げて、いい場所を考えてみるのもおもしろいかもしれない」。

横手市出身の佐藤さんは小さい頃、横手から花火を見ていたそう。「集落の見えるポイントにみんな、スイカとか枝豆を持って集まってました」。

【ミンカ】
〈住所〉大仙市大曲通町2-33
〈時間〉10:00~18:30
〈定休日〉木曜日
〈Instagram〉https://www.instagram.com/minca_micanmark/

FMはなび

駅前の大曲ヒカリオにスタジオを持つ、コミュニティFM局「FMはなび」。全国で唯一、花火のことしか話さない花火専門番組『花火の星』をなんと1年中、週1レギュラーで放送しています。 そのパーソナリティを務める、藤田浩士ふじたひろしさんにも話を聞きました。

当然のように周波数は87.3MHZ。『花火の星』はミュージックバードで全国100局ネット中。

:「「花火伝統文化継承資料館 はなび・アム」が8月5日にオープンします。4Kシアターで花火を体感できたり、大曲の花火の歴史が紹介されたりするそうなので、僕もすごく楽しみにしています。明日、内覧へ行く予定なんです」。

:「これ、意外とむつかしい……。夏場は、大台おおだいスキー場の頂上まで車で行けるんだけど、あそこからだとどう見えるのかな。
遠くから花火を見る方にも、FMはなびを聴いてほしいですね。花火競技大会の日は、「大曲の花火」に関する特別番組の放送や、会場からの解説付き実況中継。翌日は、表彰式の生中継もしています」。

番組の中で花火鑑賞士の資格も取得した藤田さん。花火大会当日は実況も担当。

花火師へのインタビューや花火の解説など、ほんとに花火のことだけを話し続けている『花火の星』。まさに花火の街の地元密着メディアです。

なお、大台スキー場から花火大会を見たという人の話を後日聞きましたが、めちゃくちゃ小さいけど、花火は見えたそうです。

【FMはなび】
〈TEL〉0187-88-8246
〈HP〉http://fmhanabi.com/
〈Facebook〉https://www.facebook.com/FMhanabi/
〈Twitter〉@fmhanabi