秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード
にかほ市編

編集・文:竹内厚 写真:船橋陽馬

にかほの水が最高すぎて!

2018.09.12

秋田の、にかほの誇り、鳥海山。海のすぐそばにそびえる鳥海山からの豊かな水は、にかほの各地に湧き出しています。

なかでも、ずばり「水」の看板だけが出ているこちら! 象潟町本郷地区の清水です。
最高にピュアな水に夢中になってしまい、ついつい近くを通るたびに、かけつけ1杯の水をいただいてしまいました。

それにしても、たった1文字だけの看板。他には一切案内がない場所ですが、週末などは行列ができることもあるそうです。
にかほでは、他にも小砂川こさがわ清水場しみずば地区の出壺でつぼなど、いくつもの湧き水ポイントが知られています。

看板の上には共用の置きコップ。水の文字色に合わせたか。

そして、にかほの水スポットといえば、元滝伏流水がよく知られています。
滝のように流れ落ちる水すべて、鳥海山に染みこんだ水が湧き出てきたもので、その湧水量は1日に約5万トン。

元滝伏流水までは、間近に設けられた駐車場から森の中を歩くこと10分。
その道中から湧き水や川、用水路が右に左に流れて、水音がサラウンドで聞こえてきます。そして、ところどころに木漏れ日のスポットライト。
奥へと進むにつれて、ひんやりとした冷気の濃度も増すばかり。この先には何かがある!

とても暑い夏の日ということもあって、思わず流れる水に飛びこみたくなるほど。それでも水温はかなり冷たくて、長く手をつけていることはできません。およそ10℃だそう。

調子に乗っているとえらいことに。

少し森が開けた場所、水音が一層大きく聞こえてくると元滝伏流水はもうまもなく。水辺で憩う人たちの姿も増えてきますが、その気持ち、元滝伏流水を目の前にすればよくわかりました。いつまでもい続けたくなる場所なんです。

幅30mほどにわたって、あちこちの岩肌から流れ落ちる水、水、水。とても写真映えする景色なので、三脚片手に訪れているカメラマンも数多く見られましたが、この場所だけは、どうなんでしょう。見た目の美以上に、清らかな流れ、ピュアな空気を全身で浴びる心地よさが強くて、五感で触れるべきスポットだと感じました。

個人的にとても惹かれたのは、「山が漏らしてる!」と思うほどに、無数の場所から水がこぼれ落ちていること。水に満ちた鳥海山がこらえきれずに、水をほとばしらせてるような想像絵図が浮かびました。飛び散る水、清浄な冷気がダイレクトに迫ってきます。

これだけ水量があるのも、昨年の気候が…なんて思っていると、そこは違ってました。
過去に何千回という噴火を繰り返してきた鳥海山は、溶岩が幾層にも積み重なっており、その間に染みこんだ雪や雨が、約10~20年の年月を経て、湧き出しているのだとか。
昨日今日の水じゃないんですね。
鳥海山にしみしみの水が10年単位の時間をかけて、これだけ豊かな水量で!

元滝伏流水は、16万年前から2万年前に鳥海山から噴出した溶岩流のヘリにあたる。
帰り道は、俗世に連れ戻される気持ちで渋々。

鳥海山の水はにかほの大いなる恵み。ですが、稲作には水温が低すぎるため、冷害に悩まされてきたという側面もあり。そのため、早くも1927年には大規模な農業用水路がつくられています。
幅をとても広くした水路に多くの段差をもうけることで、水の流れをゆるめ、空気を含ませながら太陽熱も利用して、水温を上げるという工夫。“上郷の温水路群”として今も現役です。

温水路のアイデアは土木のプロではなく、ひとりの村民が思いついたそう。

5路線、総延長6キロ、ほぼ人力でつくりあげたという、にかほの人たちの思いの結晶。これもまた、にかほの水のドラマとして見ておきたい場所です。

【水】
〈住所〉にかほ市象潟町本郷

【元滝伏流水】
〈住所〉にかほ市象潟町本郷麻針堰

【上郷の温水路群】
〈住所〉にかほ市象潟町横岡

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