秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード

編集・文:矢吹史子 写真:船橋陽馬

八森は、観光市も大フィーバー!!

2019.01.16

八峰町はっぽうちょう八森はちもり漁港では、毎週、土日に「はちもり観光市」が開催されているとのこと。秋田に暮らしながらも、この観光市を訪れるのは初めての取材班。全貌が見えないなか、恐る恐る潜入してみると……。

想像以上の活気!! やはり、この日はハタハタを求めて来ている人がほとんどの様子。店舗数は、鮮魚店を中心に8軒ほどとのことで、小規模ではありますが、先へ進むのが大変なくらいの賑わいを見せています。
さて、どんなお店があるのでしょう??

ハタハタはもちろんのこと……
豪快にマグロを捌く鮮魚店。
秋田のお正月には欠かせない、真っ赤な酢ダコも並びます。
焼きたての大判焼きまで!!

そして、この市のお楽しみの一つが、炉端焼きコーナー。購入した魚介をその場で焼いて食べることができるのです。

お食事中の親子にお話を伺ってみます。

——今日はどちらから?

鹿角かづの市からです。

——ここにはよく来られるんですか?

年に3〜4回かな? 何か焼いて食べようっていうのが目的の一つなんですけど、今日はもう全体がハタハタで、焼いて喰うもんがあんまりないんですよ。

——でも、美味しそう! 今日はやっぱり、ハタハタも買いましたか?

いいえ。私はこっちまで来て釣りもやるんですよ。今日はその偵察(笑)。みなさん、どのくらい釣れてるかな〜と。

——今日は釣らずに帰るんですね(笑)。お酒も飲んで、いいかんじですね〜。

息子が運転手。私はナビ担当なんで(笑)。このあとは、「ハタハタ館(温泉施設)」の風呂に入って帰ります。いつも、ここに寄ってから温泉っていうコースなんです。

お楽しみはまだあります。市の名物「つみれ汁」。地元の方から、「観光市に行ったら絶対に食べて!」とオススメされていたので、お腹を空かせて行ってみると……。

なんと!! 売り切れ……。

お母さん
ごめんね〜。つみれがなくなっちゃって……。

——ショック……。こんなに大きなお鍋なのになくなっちゃうなんて、すごい人気なんですね。いつもはどんな魚のつみれが入っているんですか?

お母さん
ホッケ、キミヨ(ホウボウ)……そのときによってはブリとか、スケソウダラ(スケトウダラ)とか。汁だけでもよかったらサービスするから飲んで行って〜。

——わ〜! ありがとうございます!

市場内の「ふれあい食堂」では、そばやうどん、カレーなどが食べられます。ここでホカホカのおにぎりを買って、具なしのつみれ汁をいただきます。具がないとはいえ、魚の出汁がしっかり出ていて、美味し〜い!!

再び売り場を回っていると、1軒だけある青果店「山口青果店」に、気になる食材が。フキのような、ネギのような……。
「それはニオサク(エドニュウ)っていう山菜。 春に採ったのを塩漬けにしていたもの。」

そう教えてくれたのは、鮮やかなパープルヘアがインパクト大の、この店のお母さん。

——これはどうやって食べるんですか?

太めだからタテに割って、味噌汁でも、煮付けでも。さつま揚げとかニンジンっこ入れたりして油炒めでもいいし。お正月になれば、けんちん汁の具にするの。このニオサクと、大根とか、キノコとか、いっぱい入れて味噌汁に入れるの。柔らかくて美味しいよ〜。

——へ〜!! やってみます!

ハタハタ寿司を販売する「鮮魚ストウ」では、美人母娘が迎えてくれました。

——賑わってますね〜!

今日はみんなハタハタを目がけて来てるから。うちはふだんは車で移動販売をしているんですけど、土日はここでこうして売っています。ハタハタ寿司、食べてみてください!

——ん〜! 美味しい。

うちのはあんまりクセがないほうだから。冷凍もできますし。ここに来れば年中買えますよ。

——ハタハタ以外の飯鮓いずしもあるんですね? これは……サケ?

サケとサバですね。ハタハタと同じく、このまま食べられます。

——珍しいですね! う〜ん……それじゃあ、サケの方をください!

そして、やっぱり買って帰りたいのが、この日の主役、ハタハタ!!

それにしても、ここ「山口鮮魚店」のハタハタは、まるで別の魚かと思えるほど鮮やかです。

ご主人
きれいでしょ? 今入札して買ってきたばっかりだもの! 八森さ来ればこういうのが買えるの!
ふつうだば、今日仲買が買って明日出荷だもの。ほら、昨日のと比べるとこんなんに違うんだよ!

——ほんとだ!! 口もまだパクパクしてますね。

奥さん
新鮮な方はエラが開いてるでしょ? これは、さっきまで生きてたから。あぶくも出てるでしょ、こういうのが揚がりたて。

——こんなに新鮮なのは初めてみました。新鮮なハタハタはどう食べるのがオススメですか?

ご主人
焼いても煮ても、何してもうめぇ。でも、新鮮だがら、しょっつる鍋(ハタハタの魚醤「しょっつる」の出汁でハタハタを煮る鍋)がいいがな。
奥さん
秋田の人ならハタハタっていったら、まずしょっつる鍋だな。ブリコ(卵を持ったメス)があればよかったけど、今日のブリコはもう出ちゃったもんね。でも、身だけ食べるならオスも美味しいんだよ。

——よし。買います!! しょっつる鍋にして食べてみます。

奥さん
ハタハタはトゲがあるから、頭取るとき気をつけてね。
市場内の宅配便コーナーには発砲箱が山積みに。みなさん、ハタハタを箱買いして、全国の親戚や友人に送るのです。

山口鮮魚店のご主人、山口敬市やまぐちけいいちさん、はちもり観光市組合の組合長さんとのことで、あらためてお話を伺います。

——この市は、どのくらい続いているんですか?

30数年かな?

——初めて来ましたが、大満喫してしまいました。

ここみたいに対面販売してるところって、秋田県内でも少ねぇのよ。店側からお客さんへの駆け引きと、お客さんから店側への駆け引き、よそではそういうのがでぎねぐなってきてる。でも、こごはでぎる!「3800円のを2つ買うがら7000円にまけて!」どがね。そんなこと、スーパーじゃでぎないでしょ?

——その、人と人との駆け引きが、この活気を生んでるのかもしませんね。

そうそう。俺は県内でも県外でも、よその地域の市場を見に行ぐの。そごで1時間ぐらい、じっと座って見でみる。すると「いらっしゃい」も言わねぇどごろもあるの! ……あれは不思議だなぁ。そして「これいくらですか?」ってこっちが聞いで初めで答える。
うぢらだば、まずは「まいど!」どが「今日はなんとした?」どが、そういう世間話がら入るがら。まあ、いらねぇごどまで喋るけどな(笑)。でも、それがいいみだい。だからこんなに続いでるんだ。まあ、始まった当初がらみれば、店主が亡くなったどごろもあるし、店も半分くらいになったけどな。またいづでも来て!

その夜、観光市で買ったハタハタと、ひより会のしょっつる(詳しくはコチラの記事ご覧下さい!)で、しょっつる鍋をいただきました。八森町の熱気をいっぱいに含んだ鍋は、より一層、美味しく感じられました。

【はちもり観光市】
〈住所〉八峰町八森字横間156
〈開催日〉毎週土日開催 午前9時~午後5時 
〈TEL〉0185-77-3774
〈ホームページ〉http://www.shirakami.or.jp/~kankouichi/