一芯二葉。檜山の茶園主×神主。
能代市・檜山(ひやま)地区にある「元祖檜山茶大髙園(がんそ ひやまちゃ おおたかえん)」で生産されている檜山茶は、280年以上に渡って受け継がれてきた歴史のあるお茶です。「北限のお茶」としても知られ、商業生産されている日…
編集・文:矢吹史子 写真:船橋陽馬
2020.08.05
「この民宿をやるために、会社を辞めて、家族とも離れて、単身、羽後町に暮らしているんです。」
そう話すのは、羽後町の農家民宿「阿専」を営む阿部英之さん。
そこまでするなんて、よほど民宿への憧れが強いのかと思いきや、そうではないという。阿部さんを突き動かしたのは、ただ一つ、「親への思い」。
生活をがらりと変えてまで守りたい「思い」とは、いったいどんなものなのでしょう?
羽後町田代。山に囲まれた、秋田県内でも有数の豪雪地帯であり、蕎麦の産地としても有名な地域です。蕎麦の花が咲き誇るその向こうに、阿専は佇んでいます。
——たしかに、なかなかの山奥ですよね。それにしても、ずいぶん趣のある建物ですが、こちらはどのくらい前のものなんでしょう?
——住まいとして使われていたんですか?
——由緒あるお宅なんですね。阿部さんご自身も暮らしていたんですか?
——友だちに?
——へ〜!
——え〜〜〜!!
——そこまでして残したいこの建物、とても気になります。奥の宿泊スペースも見せていただけますか?
——え? え〜〜〜!!すごい梁!何層にも組まれていますね。こんな立派な梁、初めてみました。なんだかゾクゾクします。お友だちが解体に反対したのがよくわかります。
——そのプライドとは、どんなものなんでしょう?
——家族みんなが、この家を誇らしく思っていたんですね。
——圧巻の建物ですね!でも、ここを残すという目的であれば、民宿以外の方法もあったんじゃないでしょうか?
——こちらでどこかに就職しつつ、お子さんや奥さんと一緒にここに暮らすというような選択はなかったんですか?
——食事の提供や宿のやりくりも、一人ではかなり大変ですよね?
お店を始める時って、だいたい「こんな料理を提供したい」とか「こんな宿にしたい」など、イメージが先あると思うんですが、そういうことはあったんですか?
——まずは、地域から、この「集落の人」として認められるように?
——そうやって、みんなで支え合って集落が成り立っているんですね。
——初めてづくしだとは思いますが、民宿を始めたことでの一番の変化はどんなことでしょうか?
——当時の上司の教えで、今に役に立っていることはありますか?
——まさにその教えのまま、今を過ごされているのでは? 叱る人もアドバイスをしてくれる人もいないけれど、腹をくくって、すべて自分の責任でやっている。
【阿専】
〈住所〉羽後町田代字尼沢140
〈TEL〉0183-67-2202
〈HP〉https://asen-abe.wixsite.com/asen