毎日バズってる秋田犬アカウント「あきほ」の中の人に会ってきました。
2021.02.17
ピンと立った耳に、くるっと丸まった尻尾、フワフワの毛なみ、大きな体が特徴の秋田犬。その人気は年々高まっており、2018年の都道府県キーワード検索では1位の「TOKYO」に僅差で「AKITA」が2位となりましたが、これは秋田犬からきているといわれるほど。
(インフォキュービック・ジャパン調べ。2017 年4 月1 日から2018年3 月31 日の間に『英語』で行われた各都道府県名のGoogle 検索回数より)
そんななか、今、「あきほ@秋田犬保存会/秋田犬会館」というTwitterアカウントが話題となっています。現在のフォロワー数は7万人以上。投稿には平均して1000件以上、多い時では数万件を超える「いいね」がつくなど、とにかく、日々、バズっているんです。
このアカウントがこれほどまでの人気を博しているのには、どんな背景があるのでしょう?「中の人」にお会いすべく、大館市にある秋田犬会館を訪ねました。

秋田犬会館は、1階に秋田犬保存会本部事務局、3階に秋田犬博物室が設けられている。
こちらが「中の人」、公益社団法人秋田犬保存会の佐藤歩さん。——「あきほ」のアカウント、私もフォローして日々楽しませていただいています。今、7万人ほどのフォロワーがいるとのこと。これはいつ頃から盛り上がってきたんでしょう?
佐藤さん- 昨年の緊急事態宣言を受けて、秋田犬会館が休館になったんですよ。それで、お客様が来られなくなってしまったり、いつもなら秋田犬が出ていた行事やイベントもほとんど中止になってしまったんです。
そこで、SNSで犬たちの様子を発信して秋田犬の認知度を上げて、この状況が収まったらお客様を呼び込めるようにしようと思って始めたんです。
——え? 昨年からの盛り上がりなんですか?!
佐藤さん- そうですね。もともとアカウントは2014年からあって、2万人くらいはフォロワーがいたとは思うんですが、何か特別なことがあればお知らせする程度でした。
——それが一気に3倍以上に。ただ投稿しているだけじゃ、ここまでにはなりませんよね。どんな工夫をされたんでしょう?
佐藤さん- う〜ん……。犬たちの力と、あとは、投稿頻度を増やしたというのが大きいかもしれませんね。
——1日でかなりの回数投稿していますよね。3〜4回は上げている?
佐藤さん- それどころじゃないです。少なくても10回くらい上げてますね。フォロワーの方には「追えない」って言われることも多いんですが(笑)。

——そんなに!?そして、毎日上げてますよね。
佐藤さん- はい。2020年の4月の末くらいから始めて、それから毎日続けて、仕事が休みの日も、1日も欠かさず上げていますね。
——目にする頻度が増えるわけですよね。
佐藤さん- 仕事の合間とか、お昼休みに撮ったり、犬たちが何か面白いことしてるってなると撮りに行ったり。コロナの影響で仕事に余裕ができたことも大きいんですが、一日中撮ってますね。
——秋田犬保存会事務局には、みなさんと一緒に常駐している秋田犬がいるんですよね。だから頻繁に撮影することができる。
佐藤さん- はい。今日は3頭いますね。ここにいる子たちは、職員が飼っている犬なんです。
トラ毛の「スバル」。2月6日で2歳になったばかり。受付業務担当として人気で、三頭のなかでは最年少ながら一番体が大きく40kg近くある。
アカ毛の「銀」。常に困り顔で、だいたい寝ているので「具合が悪いのでは?」「老犬なの?」と言われることもあるが、元気な4歳。
トラ毛の「クロベエ」。5歳。こちらも銀同様、よく寝ているが、おやつを見ると目を輝かせる。秋田犬にしては小柄な20kg。——この子たちを日々撮影しているんですね。投稿には、佐藤さんなりのルールはあるんですか?
佐藤さん- とくに大きなこだわりはないんですが、ほとんどの投稿に画像をつけるのと、朝、一番最初の投稿だけ「おはようございもふ」って投稿するんですが、ここには、子犬の写真を使うっていうのだけは、自分の中で決めています。
写真は、撮り溜めているものの中から毎日選んで上げています。
——朝イチは子犬!
佐藤さん- 子犬の時期って一瞬で終わってしまうんです。2カ月くらいすると耳が立ってしまうし、私たちも会いたくてもなかなか会えないんですよね。 なので、子犬がいる秋田犬保存会の会員さんの家にお邪魔させてもらって、会えるときにいっぱい撮っておくんです。
——私たちフォロワーは、毎日あの写真に心を鷲掴みされています。
佐藤さん- あとは、会員さんからも、飼っている犬の写真が送られてくるんですよ。それを私たちだけで楽しむのはもったいないので、そのなかから、かわいいものを上げたりしていますね。
——ツイートの言葉選びも、ぼそっと一言、みたいな感じがいいですよね。
佐藤さん- すごい浅い感じでやってるんですけど、写真の邪魔をしなくていいって言われたりしますね(笑)。
狙ったりしてるわけでもなくて、思ったことをそのままつぶやいているので。
——この投稿は、佐藤さんが自発的に始められたんですよね?
佐藤さん- そうですね。保存会のホームページの管理もほとんど私がやっています。ここで働いている人はインターネットが苦手な人が多いんですが、私はわりと好きなほうだったのでやるようになりました。
——やっていて、反響や発見はありますか?
佐藤さん- まだまだ、秋田犬のことをよく知らない方が多いんですよね。このあたりだと飼われている方もわりといるんですけれど、都会のほうだと見たこともないという方も多くて、「柴犬のちょっと大きいもの」と思っている方がほとんどで。
でも、実際に見に来られると「え?こんなに大きいの?」って驚かれるんですよ。
佐藤さん- なので、ふだん見ることができない秋田犬の様子や日々の姿を発信して、興味を持ってもらえたらいいなと思ってやっています。
——コメントもたくさん来るのでは?
佐藤さん- 本当にたくさんいただくので、返しきれなくて。申し訳ないんですが……。
でも、「癒された」って言われたりすると嬉しいですね。「犬が苦手だったけどTwitterを見て好きになった」っていう方もいたり、「これが生きがいになっている」っていう人もいて、そうすると、もうやめられなくなってしまいますよね(笑)。
「見てくださってありがとうございます」という気持ちでいっぱいです。

——佐藤さんも秋田犬を飼われているんですか?
佐藤さん- いえ、私はダックスフンドです(笑)。
私がここに勤めた理由が、動物が好きだからだったんですよ。出身は秋田市で、動物が好きすぎて、秋田県立農業短期大学(現在は秋田県立大学へ移行)の畜産学科で、牛と一緒に勉強してました(笑)。
——そこからここへ。
佐藤さん- 叔母が秋田犬を飼っていたこともあって、元々秋田犬は大好きでした。ここで職員を募集しているのを知り、勤めるようになって7~8 年になります。

——佐藤さんは普段はどんなお仕事をされているんですか?
佐藤さん- 秋田犬の展覧会が春と秋に開催されるんですね。全国の支部と連携して品評会をしたりするんですが、私はそれらの準備を主にやっています。あとは、2カ月に一度の会報の制作も兼務しています。
——その仕事の合間に投稿をしているんですね。以前こちらに伺ったときよりも、この会館がすごくオープンな雰囲気になったように思えます。
佐藤さん- SNSをきっかけに、わざわざ会いにきてくれる人も増えましたね。関東、関西からいらっしゃる方も多いです。ご自身が飼っている秋田犬を連れてきてくれる方もいて、秋田犬が集まる場所になってきていますね。

秋田犬グッズ販売コーナーも充実。中には佐藤さんの書いたイラストが使われた商品も。秋田県がロシアのフィギュアスケート選手のザギトワさんへ秋田犬を贈ったことや、ハリウッド映画「HACHI 約束の犬」の公開などを機に、人気が高まった。——秋田に来たら秋田犬を見たいという方も多いのですが、その場合はこちらをご案内するのがいいんでしょうか?
佐藤さん- 秋田に来ればどこにでも秋田犬がいると思っている方も多いようなんですが、そんなことはないんですよね。
ここには秋田犬の博物室もあるのでぜひお越しいただきたいです。
それと、ここよりもアクセスのいい大館駅前に「秋田犬の里」という観光施設ができて、そこでは秋田犬が展示されています。今は直接触れ合ったりできないので、事前に施設ごとの情報を調べてから来ていただければ。
秋田犬会館にいる秋田犬たちも、現在は見るだけにしてもらっているそう。——触れ合うことが、犬にとって必ずしも良いわけではありませんしね。
佐藤さん- 秋田犬は誰にでも尻尾をふるような犬種ではなくて、私たちが触っても「勝手に撫でれば」みたいな感じで。私たちはそれがよくて一緒にいるんですよね。

——犬のいる職場はうらやましいなって思ってしまうんですが、かわいいだけではなく、難しいところもありますよね。
佐藤さん- 大きいから力も強いし、日々の散歩も必要なので飼っていると旅行もなかなかできなくなったり。なので、Twitterにもいいところだけを載せないようにしています。
大きさのアピールもしていますし、散歩中に引きずられて制服のボタンが取れてしまったり……気をつける必要があることもお伝えするようにしています。

「秋田犬が好きでここで働き始めて、以来、ずっと飼いたいなって思っていたんですけど、ちょどいいタイミングがきて、飼い始めました。
大きいところが魅力でもあるんですが、その分、しっかり散歩が必要なので、毎日自宅から1時間歩いて出勤しているんです。子犬の頃はかわいいけれど、甘噛みされて腕が傷だらけになったり。小さいうちは大変なことも多かったですね。」
佐藤さん- 「こんなに大きくなるとは思わなかったから手放したい」っていう電話が来たり「秋田犬ブームを作る方が悪い」と言われたりしたこともありました。
——そんな……。入り口は「かわいい」からかもしれませんが、秋田犬に限らず、動物を飼うということは、飼う側に責任が伴うことですからね。
佐藤さん- 秋田犬だからといって特別に難しいことがあるというわけでもないんですよね。「大きい庭がないと飼えないんじゃないか」っていうイメージの方もいるかもしれないですけれど、家の中で飼っている人もいますし。
そういうことも意識しながら日々、投稿をしています。
——私も、投稿を楽しみながら、秋田犬のことをもっと知っていけたらと思います。あ!佐藤さん、目を離した隙にまた投稿してますね(笑)。
佐藤さん- フォロワー数が7万1000人になることを目指してるんです。大館市の人口が7万1000人なので。あと200人くらいなんですよ。
(この取材後、すぐに7万1000人を越えていました。)

【公益社団法人 秋田犬保存会】
〈住所〉大館市三ノ丸13-1
〈TEL〉0186-42-2502
〈HP〉http://www.akitainu-hozonkai.com/