秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード

編集・文:矢吹史子 写真:高橋希

八郎潟で、ニャンパチが愛される理由。

2019.06.19

オレンジの着物に、紫のほっかむり。三角の耳に、ピンクの肉球……。みなさんは、このキャラクターをご存知ですか?
これは、「ニャンパチ」という、八郎潟町はちろうがたまちのイメージキャラクターなんです。

10月1日生まれ。八郎潟で獲れるワカサギが大好き。好奇心旺盛な元気な男の子。

このニャンパチは、平成25年に、全国の公募のなかから町民の投票によって選ばれたキャラクター。
トレードマークのほっかむりとオレンジの着物は、八郎潟に300年以上前から伝わる「願人踊がんにんおどり」という踊りの衣装。この踊りの一部にネコのようなポーズがあることから、ネコがモチーフになったとのこと。

それにしても、このニャンパチ、八郎潟町を巡っていると町のそこここでとにかく目にするんです。

のぼり旗に。
商店の店頭に。
子育て支援施設の入口に。
町の図書館の利用カードに。
顔出しパネルや……
石像……
ガラポンまで!

このように、八郎潟町じゅうにニャンパチが溢れています。なんも大学でも、秋田県内各地を訪ねてきましたが、キャラクターがここまで浸透している町はなかなかありません。

その人気ぶりが気になり、ニャンパチが勤めているという八郎潟町役場を訪ねてみることに。

ニャンパチに会いに

役場内の看板にも、もれなくニャンパチが。

いました、ニャンパチ! ニャンパチは、この八郎潟町役場の総務課で「おもてなし係長」として、町のPR業務などを担当しているとのこと。この日はデスクワーク中のようです。

電話応対、上司との打ち合わせ、コピー取りなどと忙しくされているなか、なんと、ニャンパチが町のオススメを案内してくれるとのこと! さすが、おもてなし係長! 早速、一緒に町へ繰り出します。

ニャンパチの町案内!

【はちらぼHOUSE

最初にやってきたのは、町のメインストリート「一日市ひといち商店街」にある「はちらぼHOUSE」。

ここには、手作りの惣菜や弁当、パンなどの食品をはじめ、果物や野菜、手作り雑貨なども並びます。

ニャンパチも惣菜を品定め中。地元の方々の買い物の拠点としてはもちろん、配達サービスなども行っている。
最近のニャンパチのイチオシは、「浦城うらじょういなり」。油揚げの中に、ご飯とともに八郎潟で穫れたいちじくの甘露煮と枝豆が入っており、食事はもちろん、お茶請けとしてもおすすめの一品。
いちじくのプチプチと枝豆のコリコリの食感が効いている! 油揚げといちじく、それぞれの甘みはしっかりあるものの、クセは強くなくて食べやすい!

今年5月から販売が始まったという、ニャンパチグッズもずらり。ポーチ、マグカップ、タオルハンカチ、Tシャツなど、豊富な品揃え。

特に人気なのが、おみくじ付きの根付。ニャンパチが振ったら大吉が出た!

【塞ノ神()農村公園】

続いて案内してもらったのが「塞ノ神さいのかみ農村公園」。ここにある展望台から、とても素敵な風景が見えるとのこと。その風景というのが……こちら!

見事な田んぼアートが出現! これは、4年前から、町のみんなが楽しめるようにと始まった取り組みで、色の異なる複数の稲を植え付けて絵や文字を表現する、ダイナミックかつ精密なアートです。

今年の絵柄は、35周年を迎える「あきたこまち」と、昨年ユネスコ無形文化遺産に登録された「男鹿のナマハゲ」。平成28年には、ニャンパチもモチーフになりました。

素晴らしいと噂には聞いていたものの、実際に目の前にすると、感動のひと言! これから秋にかけて、さらに色合いが豊かになってくるとのこと。8月には鑑賞会なども開催されます。

展望台からは、お隣、五城目町のシンボル「森山」もよく見える。ニャンパチもお気に入りの場所。

美しい風景を眺めていると、同じく田んぼアートを見に来た方々が、ニャンパチを発見! 

「ニャンパチ〜〜!! 大好きよ〜! うちには孫がいるんだけど、ニャンパチのことが好きで好きで。保育園から帰ってくると、毎日のように八郎潟駅前のニャンパチの石像に遊びに行くんですよ。」

畠栄のあんごまもち

ニャンパチの人気を実感しつつ役場へ戻ると、ニャンパチからお土産が。

畠栄はたえいのあんごま餅! 八郎潟に来たら購入必至の大人気商品です。

餅の上にあんことごまがびっしり。二つの味を同時に楽しめる、よくばりな一品。秋田空港や秋田市の「あきた県産品プラザ」などでも販売されています。

うちのニャンパチ

たっぷりとおもてなしをしてもらった私たちですが、気になるのは、ニャンパチがこんなに浸透しているその理由。

お正月にニャンパチ宛てに届いた年賀状。秋田県内を中心に、全国から220通が寄せられた。

じつは、ニャンパチのイラストの著作権は町が管理しているものの、申請をすれば誰でも無償で使用することができるそうなのです。使用件数は、約5年間で80件以上。

町の観光協会が制作し「八郎潟えきまえ交流館はちパル」で販売しているニャンパチグッズ。

ニャンパチを自由に使えるということは、誰かに与えられるのではなく、自らのアイデアで活用法を考えられるということ。

そうして生まれたグッズは、町民が「うちのニャンパチ」という思いで愛情をもって盛り上げるようになる。そうしていくうちに、町の人々にとって、ニャンパチや町のことが「自分ごと」になっていっているのかもしれません。

秋田県の市町村で最も面積の小さな八郎潟町ですが、だからこそ、一人ひとりに情報が届きやすく、取り組みを深く浸透させていける。小さな町でも一丸となれば、色濃く印象づけることができることを、ニャンパチを通して見せてもらえているように思いました。

駅前小公園には、冬になるとニャンパチを模したイルミネーションも出現。

実際にニャンパチに会える機会もたくさん! 
毎年、八郎潟町で5月に開催される「願人踊」や、8月の「一日市盆踊り」をはじめ、八郎潟町や秋田県内のイベントにもたびたび登場します。

願人踊に参加するニャンパチ。

ニャンパチに会いに、ぜひ、八郎潟町へ!

【ニャンパチに関する情報】

〈Twitter〉https://twitter.com/nyampachi
〈おうえんメール箱〉nyanpachi@town.hachirogata.lg.jp
〈住所〉(八郎潟町役場総務課)南秋田郡八郎潟町字大道80
〈TEL〉018-875-5801