秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード

編集・文:竹内厚 写真:船橋陽馬

いくつでも食べたいフレーズのケーキ

2018.09.26

にかほ市の街角で30年続くケーキ屋さん、フレーズ。
おいしくて、見た目にもかわいい、リーズナブルと三拍子そろったケーキを、ご夫婦で販売されています。
写真からもはっきりとわかる、仲睦まじい様子も微笑ましくて。

まずは、フレーズで販売されているケーキをいくつかご紹介します。

店名にもなっているフレーズとはいちごのこと。看板ケーキの“フレーズ”は、いちごがたっぷり。380円。
お昼すぎ、“えだ豆モンブラン”は売り切れだった。
独特なモンブランは、秋田市の老舗「ジロー洋菓子店」でかつて学んだ形だそう。300円。
“ホワイトケーキ”は、小さなホワイトチョコを散りばめて、中にはフルーツ2種。330円。
もりっとした“生シュークリーム”には、なんとバナナがイン。開店当初からの人気メニュー。160円。
いろんなフルーツの並び姿も楽しい“エクレア”260円。
“チーズケーキ”280円と“ベークドチーズケーキ”290円。どちらも仁賀保高原にある土田牧場の牛乳を使用。
出し惜しみなしのチョコレート感がうれしい“ガナッシュ”。290円。
“クラシックショコラ”は、上にちょこんと乗ったミントがかわいい。300円。
こちらもチョコケーキ。中にはチョコクリームを練り込んだカスタードクリームが。“カスターチョコ”290円。

最初、お店で取材のお願いをしたときは、「うちなんか田舎のケーキ屋なんだから、いいよ~恥ずかしいよ」と言われていた店主の渋谷悦雄しぶやえつおさんですが、聞けば、山形・遊佐にあるご実家もお菓子屋さんなんだそう。

「20歳で東京に出て、5軒くらいのお店で修業しました。その後で実家にも戻ったけど、兄貴がいたから平成元年に独立して」、いくつかの候補地を探した末に、にかほでの開店を決意しました。
「いろんなとこを見てたんだけど、やっぱり自分は運がよかった。この場所ですよ、にかほでやって本当によかったなぁ~って」。奥さんに言わせれば、「よくこんなところで店出すもんだな」と思ったそうですが(笑)。

いちごにいちごの看板が目印。
国道7号線沿いの角地、よく目立っている。TDKの工場群からも近い場所。
「あと30分でやらなきゃいけない注文があるから」と言いながら、話がノッてくると何度も奥の厨房から出てきてくれた渋谷さん。

30年の営業を続けるなかで、誕生日などの記念ケーキに得意の絵を描いて、人気を集めたこともあるといいます。ホールのデコレーションケーキは、街のケーキ屋さんの腕の見せどころですからね。
最近では、ショーケースにLEDを導入。ケーキの見た目がより一層引き立っています。
「微々たる国民年金で生活しとるんだから、まず死ぬまでがんばらなきゃ(笑)。もう10年はやりたいと思ってるんだけど」と笑う渋谷さんは、10月で古希を迎えます。

カップ系デザートの種類も豊富。
昔、手がけたデコレーションケーキの数々! 残念ながら今はここまで凝ったものはやってないそう。
店に来る子ども達を喜ばせるために集めはじめたフィギュアがたくさんの個数に。

貯金ができると、好きな絵を買って店に飾ります。そして、ご夫婦それぞれに追いかけているものがあるそうで、ご主人は、ある演歌歌手の30周年記念コンサートがもうすぐ東京・中野サンプラザであるのを楽しみにされていました。奥さんも千葉や福岡にまで追っかけてるものがあるそうですが、それが何かはヒミツ。

店の壁には竹久夢二や平山郁夫の絵が。
焼き菓子も充実。お土産にも。

「まずおかげさまで、お客さんがうちを選んできてくれるからありがたいなって思うよ。な~に夫婦でやってるから、続けてこれたんだけどな」。
まさに名コンビのご夫婦。フレーズのケーキにもどこか、ご夫婦のお人柄が表れているような気がしました。

【ケーキハウスフレーズ】
〈住所〉にかほ市平沢字田角森32-4
〈時間〉9:00〜18:30
〈定休日〉木曜日(祝日の場合は営業)
〈TEL〉0184-37-2855