八郎潟で、ニャンパチが愛される理由。
オレンジの着物に、紫のほっかむり。三角の耳に、ピンクの肉球……。みなさんは、このキャラクターをご存知ですか?これは、「ニャンパチ」という、八郎潟町(はちろうがたまち)のイメージキャラクターなんです。
文:成田美穂 写真:高橋希
2019.03.13
大館といえば、「秋田犬」発祥の地であり、秋田名物「きりたんぽ」の本場であり、天然秋田杉を使った工芸品「大館曲げわっぱ」が生まれた場所でもある、まさに秋田のスタンダードがつまった地域。
しかし、今回の目的はまったく別のもの。
実は、「大館に面白そうな採石場がある」との噂を聞きつけたのです。
採石場というと、特撮のアクションシーンでよく使われる、ごつごつした岩肌がむき出しになった、あの……?
秋田にそんな場所があるなんて、ぜひ見てみたい! ということで、噂の「十和田石採石場」へ行ってみることになったのでした。
今回訪ねたのは、大館市にある中野産業株式会社。
昭和48年に設立され、年間約3,000トンの「十和田石」の採掘から加工までを一貫して手がけています。
今回お話を伺うのは、中野産業株式会社 原石課 課長の吉原利正さん。現場での採掘作業や全体の進捗管理をおこなう、まさに親方的存在です。
——採石場の中は、一般の方々も見学することができるんですね。
採石場で採掘される十和田石の正式名は、「緑色凝灰岩」。
約1,000万年前、海底で起きた噴火による火山灰がそのまま凝固してできた希少な石です。そして、その採掘をおこなっているのは世界で唯一、ここ秋田県大館市・比内町だけ。
淡い青白色をベースに青緑色の地紋が入っており、その色合いから「やすらぎの青」と呼ばれ、地元では親しまれてきました。
——世界で唯一、秋田でしか採掘されていないんですね……!
——え! この山自体が、十和田石?
濡れても滑りにくいという以外にも、
-保湿・保温効果
-防カビ・シックハウス対策
-遠赤外線・マイナスイオン放出機能
-脱臭効果
-水質改善
-防音・反響防止機能
など、さまざまな機能が備わっていることが判明していて、建築資材としてさまざまな場所で使用されているそう。
——へぇ〜! 環境自体を変えてしまうなんて、不思議な石ですね。
——意外と暖かいですね。
——冷蔵庫みたいに一定の温度がずっと保たれるんですね。冬は暖かく、夏は涼しく。
10m四方の大きな柱は、山の重さを支え、安全に掘り進めるためにあえて残されたもの。
——おお……! 古代遺跡の発掘現場みたい……!
——確かに、まるでロールプレイングゲームの世界です。大人でも、好きな方にはたまらないかもしれませんね。
——採石場というと、巨大な重機を使って採掘しているイメージでしたが、意外とハンマーや手押し台車のような道具も使われているんですね。
——効率のいい作業の進め方も安全に使える道具の開発も、前例がないから自分たちで考えなくてはいけなかったんですね。
——なるほど。一見、石が積んである壁のように見えますけど、実際は一枚の岩を削っているだけだから、途中に空洞なんかもあるわけですね。
採石場で採掘された十和田石は、すぐそばの工場へ運ばれ、熟練の職人たちの手で丁寧に加工されていきます。その様子も見学させていただきました。
——採掘から出荷までのあいだに相当な手間がかかっているというか、もはや「手間」という言葉では収まりきらないですね。石材の一つひとつが、みなさんの試行錯誤と努力の結晶だと思います。
【中野産業株式会社】
〈住所〉大館市比内町中野字下籾内38
〈時間〉10:00〜17:00(土日祝日、年末年始を除く)
〈TEL〉0186-56-2514
〈FAX〉0186-56-2230
※現在、見学は受け付けておりません。
〈HP〉http://towadaishi.jp/