暮らしを支える朝市談義
古くから商人の町として栄えた、秋田県横手市増田町。その歴史を感じさせる建物や街並みから、平成25年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。毎月2・5・9のつく日に行われる「増田の朝市」は、江戸時代から370…
文:成田美穂 写真:船橋陽馬
2018.10.24
「宿」は、旅という非日常を楽しむうえで欠かせないもの。
大規模なホテルや旅館とは違い、最低限の設備で一泊あたりの単価を抑えて宿泊できる「ゲストハウス」や「ホステル」が日本で普及し始めたのは、2000年代初頭といわれています。
発酵のまち・横手市十文字町に佇む、Hostel&Bar CAMOSIBAも、そのひとつ。
2017年春のオープンから、約1年半。オーナーの阿部円香さんに、これまでのCAMOSIBAと、これからのCAMOSIBAについて伺いました。
元はお茶屋だった蔵と、そこに隣接する母屋が合わさって生まれたCAMOSIBA。現在、蔵は飲食が楽しめるバル、母屋が宿になっています。
宿の1階には、男女混合ドミトリー(相部屋)と女性専用ドミトリー(相部屋)、共有キッチンやシャワールームなどがあり、2階には個室が2部屋というつくり。昼下がりの柔らかな光が差し込み、どこか懐かしい香りがします。
「今夜のお部屋はこちらです」と案内されたのは、ゆったりとした2階の個室。布団で眠るのは久しぶりだ、と胸が高鳴ります。
大学進学を機に上京したオーナーの阿部さん。旅が大好きで、大学を休学して海外を巡っていた時期があったそう。その頃、いわゆる「ゲストハウス」と呼ばれるところに宿泊することが多く、人と人を繋ぐ場所の魅力を肌で感じたとのこと。
「確かにそうだ」と納得した阿部さんは、その日を境に就職活動をやめ、故郷の横手市へ戻ることに。そして、ご実家の麹屋を手伝いながら物件を探したり、県外のゲストハウスで修行をしたりする中で、ずっと曖昧だった「いつか」が徐々に前倒しされていきます。
本格的な準備開始からオープンまでの半年間、クラウドファンディングなどを通じて集まった仲間たちと共に、自らの手で建物をリノベーションし、ついに完成したCAMOSIBA。現在は、阿部さんを含む3名で切り盛りしています。
人それぞれが持つ文化や価値観に、正解も不正解もありません。その「違い」を面白いと感じ、そこから生まれる化学反応を楽しむことができる阿部さん。今、秋田で過ごす日々をどう感じているのでしょうか。
ふつふつと静かに醸されていく阿部さんの想いを伺った夜、横手の食文化を堪能するべく、「発酵バル」で夕食をいただきました。
翌朝8時、朝食をいただきに再びバルへ。
その土地を訪れる“風”の人と、そこで暮らす“土”の人。どちらに身を置くかは、私たちの自由です。これから先、ここCAMOSIBAでたくさんの風と土が出会い、新たな醸し合いが育まれていくことを願っています。
【Hosterl &Bar CAMOSIBA】
〈住所〉横手市十文字町曙町7-3
〈宿泊〉チェックイン 16:00〜21:00 / チェックアウト 10:30
〈発酵バル〉19:00〜24:00(22:30 food L.O. / 23:30 drink L.O.)
〈TEL〉0182-23-5336
〈HP〉http://camosiba.com/