今回、はじめて秋田の冬を旅した馬川さん。1つ目の作品「犬っこまつり」に続いて、どんな秋田を描いてくださるのでしょう?
木版画:馬川亜弓 写真:伊東俊介
兵庫県在住。木版画作家。2005年、京都精華大学 芸術学部造形学科版画専攻卒業。個展は、「The grass of a vision」 gallery CLASS(2015)、「花鳥風月犬」 伊丹市立工芸センター(2016)など。
今回、秋田の冬を体感してみて、いかがでしたか?
- 馬川
- 私、すっごく寒いのが苦手で、冬嫌いなんですよ。「冬には楽しいことなんてない!」って思ってました(笑)。だから、今回は秋田に来ることを恐れていて……。
それなのに、冬のど真ん中に乗り込んでくださったんですね。
- 馬川
- こんなヤワなもんが……(笑)。でも、最初に雪景色のなかにパッと立ったとき、なんだか不思議な暖かみを感じて。それに驚きましたね。
雪のなかでの生活の大変さというのも感じたんですけれど、思ったより寒くないし、景色が真っ白だから、気持ちも明るくなるような。雪がフワフワしてるから、優しくなるような。
それは嬉しいですね。前回来られたのは秋でしたが、その印象とも違いましたか?
- 馬川
- 秋に見た田んぼの風景は「これぞ日本のふるさと」という印象だったんですが、雪の積もった真っ白な眺めは、北欧のような……北欧、行ったことはないんですが(笑)。
それに、お墓でも、木でも、雪が積もると全体に丸みが出て、何でもちょっと可愛らしく見えました。そしてやっぱり、白って特別なんですよね。何もかもを隠して、一旦全部をリセットしてくれるような。そういうメリハリが、秋田にはあるように思えました。
それにしても、この2日間、かなり雪が降りましたね。
- 馬川
- ずーっと雪を見ていたので、ホテルに戻って、寝るときに目を閉じても、まぶたの奥で雪が降っていたんですよね。テトリスとかやりすぎると、残像が残るように。目はしっかり見ているんだなって思いましたね。
秋田に来て、苦手な冬のイメージにも変化があったのでは?
- 馬川
- こんなに元気な冬があるんだ! って思いましたね。「冬に負けたらいかん」っていうところからの、暮らす人たちの力なんでしょうね。何もしなかったらふさぎ込んでしまうかんじもよくわかったし。
秋田の人たちにとって冬を楽しむっていうことはすごく大切なんですよね。
- 馬川
- 私が住む関西ではほとんど雪は降らないので、見た目は何も変わらず、ただ寒いだけ。秋田のようにお祭りもないので、テンションの上がりどころがないんですよね。だから、元気に冬を過ごす、という感覚は新鮮でした。こんな冬の過ごしかたがあるんですね。
私は、スキーとかスノボとかには興味はないんですよ。でも今回の旅は、文科系寄りの面白さがあるし、とにかく美しい。心が暖まるなあと。
馬川さんのように感じられるかたも多いかもしれませんね。ぜひ、県外のかたにこの時期を体感してていただきたいです。
これまで、作品で雪景色を描いたことはありましたか?
- 馬川
- ほとんどありません。自分のなかにはない風景なので、描こうというふうにならなかったんですよね。なので、今回はチャレンジです。
版画で雪のかんじというのは、どうやったら出るんでしょうね? 薄いグラデーションと、モノクロなんだけれど単にモノクロではないような……。色味はあまりないのだけれど、そのなかにうっすらとある……みたいなことができたらいいだろうなって考えています。
そんな秋田の旅を経て完成した、2つ目の作品がこちら。大仙市の「川を渡るぼんでん」に向かう途中の、河原の風景です。
雪のなかの完全なる無音の世界で、真っ白な雪に覆われながらもどこか暖かみの感じられる、そんな情景を描いてくださいました。
パソコン用に、ぜひダウンロードしてみてください!