前回は、花輪ばやしの豪華な屋台を見させてもらいましたが、今回は講師の佐藤さんの町内「谷地田町」の会館でみなさんが作業をしているということで、訪ねることに。
- 矢吹
- 今日やっている作業というのは?
- 佐藤
- 花輪ばやしの前の、8月7日、8日に「花輪ねぷた」という七夕行事があるんですよ。それにむけて、将棋の駒型をした大きな灯籠と大太鼓を準備しているんですよ。
- 矢吹
- 道の駅にも展示していたような、武者絵が描かれた灯籠ですか?
- 佐藤
- はい。その絵をいま描いているところなんです。8月は、花輪ばやしだけじゃなく、この花輪ねぷたに、花輪ばやし、それが終わった後には「花輪町踊り」というのもあるんですよ。
- 矢吹
- 無茶苦茶忙しいですね!! 「まつり祭り」だ……。
- 佐藤
- 忙しいんですよ! 仕事してる場合じゃないんです(笑)。七夕やって、お囃子やって、踊りやって、夏が終わる……と。
- 矢吹
- 花輪ばやしは8月19日、20日の2日間、夕方から明け方まで一晩中やるんですよね? 見どころいうと、どこになるんでしょう?
- 佐藤
- 花輪駅前に、全町内の屋台揃い踏みで、お囃子の共演をする時間があるんですよ。それは圧巻ですよ! 「サンサ」という手締め式も行われて、観光客のみなさんも喜んでくれますね。今年はユネスコの影響で、桟敷席も完売になっているみたいですね。
- 矢吹
- 写真で見たことはありますが、すごい迫力ですよね。
- 佐藤
- はい。でも、やっぱり私は「朝詰」の「町境」を見てほしいな、と
- 矢吹
- 朝詰? 町境?
- 佐藤
- 朝詰というのは、各町内の屋台が「枡形」という御神輿の控え所まで移動して、奉納演奏をすることです。その途中、谷地田町の隣の六日町と大町を通過する際に、それぞれの場所で「町境の挨拶」をするんですよ。
- 矢吹
- 具体的にはどんなことをするんですか?
- 佐藤
- 町内と町内の境目が決まっていなくてグレーゾーンになっているので、お囃子合戦をしたり、屋台をぶつけ合ったりして黒か白か決めていくんですよ。町内と町内が意地を張り合うの場所なので、ここは一見の価値ありですよ。
- 矢吹
- わ〜! 迫力ありそうですね!
- 佐藤
- その後、稲村橋に各町内の屋台がずらーっと並ぶ様子もきれいですよ。それは明け方の3時頃なのでさすがに観光客は少なくて、静かなところに屋台が並んで……。コアなお客さんには、朝詰を狙ってくるかたも結構いますからね。
- 佐藤
- ちなみに、谷地田町、六日町、大町は「本三町」といって、この三つの町内から花輪ばやしが始まったといわれているんですよ。これがそのポスター。
- 矢吹
- ポスターまで作っちゃうんですか?!
- 佐藤
- このポスターの真ん中に写っている田口が、うちの町内の「副外交長」なんですよ。私は「頭」になるんですが、谷地田町の場合、「副外交長」は屋台運行の指示や、本三町の町境の際に交渉をする大事な役職なんですよ。
- 矢吹
- 提灯を持って先導していく姿もかっこ良さそうですね。
- 佐藤
- 彼はね、ほら、毎年こうやってTシャツを作ってくれるんですよ。去年は黒とタイダイ染めで。ファッションリーダーなんですよ(笑)。
- 矢吹
- あ! 佐藤さんのTシャツの、目のところの「Y」は谷地田の「Y」なんですね! 背中の文字の意味は?
- 田口
- これはB’z の曲の歌詞なんですよ。「お久しぶり、最高の夜にしましょう、みんなで」という意味ですね。今年のデザインはこれになる予定です。
- 矢吹
- いつもこのメンバーで準備や運営をしてるんですか?
- 佐藤
- 常時集まるのがこのくらいで、本番になると20〜30人は集まりますね。昔いたような、商店の若旦那衆っていうのはほとんどいなくなって、だいたいがサラリーマンなので、集まるとしても土日か夜になってしまうんですよね。昔はこの倍はいたそうですけど、いまは10人足らず……。やっぱり少ないですよね。
- 矢吹
- 祭り当日は、誰でも参加できるんですか?
- 佐藤
- はい。意外と知られていないんですけど、よその地域のかたでも女性でも、事前に連絡してもらえれば、どなたでも参加できます。実際にやってみたら、さらにいい祭りだと思ってもらえますよ!
ただ、体にはキツイので、なかなか遊び半分ではできませんね。だから本番ではみんな酒は飲みませんよ。屋台も大きくて危ないのでね。祭りが終わったら、みんな、ぐわ〜っと飲みますけどね(笑)。
- 矢吹
- きっちりメリハリがあるんですね。世代ごとの上下関係みたいなものもしっかりあるんですか?
- 佐藤
- そうですね。基本、ピラミッド型といいますか、命令系統というのはしっかりしていないと。若い人たちは、そういうのはイヤかもしれませんよね、友だち感覚を好むというか。でも私は、歳の離れた人たちとも関わりながら一つのことができるのは、祭りのある町内ならではの魅力だなって思いますけどね。
- 矢吹
- お囃子の練習は、常にされているんですよね?
- 佐藤
- 練習はしません。
- 矢吹
- えっ?!
- 佐藤
- 練習するのは基本、中学生までの子どもたちだけです。そして、谷地田町は、花輪ねぷたが終わった後の8月10日から始める、というのが昔からのしきたりなんですよ。
- 矢吹
- 祭りまで10日足らずですよね。そんなに短い期間で覚えられるんですか?!
お囃子が中心となる祭りでありながら、練習をするのは子どもたちだけという驚きの事実! 次回はその練習現場にお邪魔させてもらい、お囃子について伺っていきます。