梵天の奉納で騒然とする会場で、すっかり広面の町内のみなさんを見失ってしまった私たちでしたが「町内の公民館で反省会やってるからおいで!」との電話をいただき、早速お邪魔することに。
公民館に到着すると、櫻の町内のかたも加わり大盛り上がり。
- 矢吹
- わ〜! そのカップ! どうされたんですか?!
- 広面の町内のかた(以下、広面)
- うぢの町内は地域の運動会で7年連続優勝してるの。その優勝カップよ!
- 矢吹
- へ〜! どんなことをするんですか?
- 広面
- 玉入れどが、複合リレーどが、綱引きどが……。
- 矢吹
- みなさんで参加されるんですか?
- 広面
- うん、みんな。よそはどごも人がいないんだけど、うぢは結束が強いんだ。
- 広面
- この仲間だぢで、春先には桜の木の剪定をして、その桜の木の下で花見をする。夏なればビアガーデンやって……。
- 矢吹
- 1年を通して行事があるんですね。いいなあ。
- 広面
- かでに来い(参加しにおいで)。
- 広面
- 12月には、この公民館に集まってみんなで梵天を作るの。子ども梵天と、大人梵天の2つ。子どもたちも集まって、手伝ってもらいながら。
- 矢吹
- 子どものころからみなさんそうやっていろんな行事に参加されてきたんですか?
- 広面
- 僕はもともと広面に住んではいたんだけど、参加はしていなかった。「なんかないかな?」とは思ってたけど。
- 矢吹
- 「なんかないかな?」というのは……?
- 広面
- 子どものころはうちの町内は梵天には関わっていなかったんだけど、ほかに楽しい思い出はたくさんあった。子ども会で海に行ったりスイカ割りしたり……。そういう、子ども時代に楽しかったようなことが最近はなかったんですよね。
- 矢吹
- 住んでいる地域との繫がりが?
- 広面
- うん。30年くらい前までは、このあたりはみんな田んぼで、自分はホタルがいっぱい飛んでるような子ども時代を過ごしていたのに、そういう体験を自分の子どもにはさせてあげられない。ボールを蹴って遊ぶ場所すらないですよ。だから、子どもの思い出にもなるような地域に関われることをやりたいなって思っていたなかで、今残っていたのが梵天だったんですよ。
- 矢吹
- なるほど〜。
- 広面
- みんなけんかっ早いし相性も合わなそうだけど(笑)、参加してみたんです。
- 矢吹
- ふふふ。
- 広面
- 子どものときからの顔見知りも多いし、同じ地域で苗字が同じ人も多いからっていうのもあるんだけど、みんな自分を下の名前で呼んでくれてね。
- 矢吹
- でもそれって、仕事の関係とは違う、深い繫がりというか、根っ子が感じられますよね!
- 広面
- そうそう。
- 矢吹
- 実際に参加してみて変化はありましたか?
- 広面
- 「地域に関わっている」っていう気がするし、梵天の祭りの中でも自分の役割ができて、居場所ができたというか。
- 広面
- もっと若いときからやってれば楽しかっただろうなって思いますよ。昔はこういうことに関わらないといけないのがただただ面倒だったんだよな。でもこうやって関われるのは、今は楽しい。
- 櫻
- 梵天のメンバーの結婚式で梵天をあげたこともあるんだよ。
- 矢吹
- へ〜!
- 櫻
- 三吉神社から梵天借りてやったんだ。おめでたいごどだがらな。それど去年、仲間が癌で死んだのよ。そのどぎもやっぱり、三吉節唄って送ってやったよ。仲間だからな。
- 矢吹
- 良い町内ですね〜。
- 会長
- んだ。この祭りはよぉ、なんたごどが(どんなことが)あってもやめさせるわげにはいがねんだ。梵天は、けんか祭りとは言われるけど、けんかどが事故どがは祭りにはつきものなのよ。多少危ないがらどいって、なぐされないのよ。その神社、その祭りのいいどごろがあるんだもの。
- 矢吹
- はい。
- 会長
- 三吉だば、先陣を争って、もみ合いをして、ご利益ある三角のお守りとったりな。神様は、ちょっとぐらい傷ついてもちゃんと1年で治してくれるんだ(笑)。
- 矢吹
- ははは。
- 会長
- 納めでしまったら、あとはもう争いはおしまい。若いものがだは「このやろう」なんて、ちょっともみ合いするけども「梵天が納まったんだがら」と周りが抑えでやめるの。
- 矢吹
- 確かに、暴れるときは暴れるけど、奉納のあとは一瞬で何ごともなかったようになってましたね。
- 会長
- 多少のしこりはあるけどな(笑)。だがら次の年に繫がっていぐのよな。そして次の年も奉納する前までは思いっきり暴れる。それが梵天。
- 矢吹
- この町内も、参加者が減った時期もあったけど、また復活してきたそうですね。
- 会長
- んだ。なんぼがうぢの町内もよぐなったよな。俺も町内会長をやって6期。んだども、うぢの町内だど6年はまだ若造。ほとんどの人が14〜15年ぐらいやってる。もう2倍もやらないといげないけども、辞めればみんな病気してよぉ。
- 矢吹
- 会長さんを務めることが健康の秘訣なんですね。
- 会長
- んだ。だがらやめられない。もうちょっとこの町内を引っ張っていがねばねぇ。こうやって町内が一致団結して、1月17日にバジっとぶつかって、みんなで一つになるんだ。
- 矢吹
- 今年も無事納まりましたけど、また「来年にむけて」が始まりましたね!
力の神様、三吉霊神を祀る、三吉梵天祭。激しければ激しいほどご利益があるとされるこの祭りですが、ただけんかに強く荒々しければ良いということではなく、広面や櫻の町内のみなさんのように、一年を通して酒を酌み交わし、行事をともにすることで、生きた関係性が育まれ、それが大きな力となって秋田に春を招いてくれるのだと感じました。
三吉梵天祭に関わるみなさんの言葉が
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