輝美さん 関係人口ってなんですか?

2018.06.06

過疎化や少子高齢化が進むいま、全国の地方自治体が「移住定住」に力を入れています。少子高齢化、人口減少率ナンバーワンの秋田県も同様です。しかし日本全体の人口が減るなかで、どこかの定住人口が増えれば、その分どこかが減ることになるのは明白です。
そんななか、そこに住んでいなくても継続的に特定の地域に関わる人を指す「関係人口」という考え方が注目されています。

島根県在住で『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション』の著者であるローカルジャーナリストの田中輝美さんと、兵庫県在住ながらまさに関係人口の一人として秋田県発の「なんも大学」の編集長を務める、編集者の藤本智士が、新しい地域との関わり方について対談をしました。
(この対談は、2018年3月に秋田県にかほ市にて行われた対談を再編集したものです。協力・写真提供/にかほ市)

田中輝美さんプロフィール

ローカルジャーナリスト。島根県生まれ。山陰中央新報社に入社し報道記者として、政治、医療、教育、地域づくり、定住・UIターンなど幅広い分野を担当した。その後、同社を退職し、島根に暮らしながら、地域のニュースを記録、発信している。2017年10月には『関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション』(木楽舎)を出版。
http://www.tanakaterumi.com

「関係人口」との出会い

藤本
輝美さんが、「関係人口」という言葉に出会い、それに関わるようになっていったのには、どういう経緯があるんですか?
田中
島根県は、ピーク時から20万人以上人口が減っているんです。いまが68万人で、ピーク時は90万人。島根県民歌に「90万の」っていう歌詞があるんですが、これをどうするかっていうのが、県議会でも話題になったりするくらいで。じつは、「過疎」という言葉の発祥地ともいわれているんですよ。
藤本
「過疎」発祥の地!
田中
そうなんですよ。ドヤ顔で言うのも謎なんですけど(笑)。島根の状況を見て、過疎っていう言葉が生まれた。私は、そんな島根で生まれ育って、その後「山陰中央新報」という地元紙の新聞社で記者をしていたんですが、2009年から3年間、東京支社に転勤になったんですね。
藤本
秋田でいうところの「秋田さきがけ新報」のような、島根のシェアナンバーワン新聞ですね。
田中
そうですそうです。それで、島根から東京に転勤してわかったのが、東京にも島根出身の若手経営者がいっぱいいらっしゃるということ。そして、その方々に「東京にいながらも、故郷に何かしら貢献したい」って相談されたんですよ。
藤本
うんうん。
田中
それにびっくりして。「島根は人がいないとか、苦しいとか、さみしいとか言われていたけど、離れていても応援したいっていう人がいるんだ!」「そうだよね! 住んでいなくてもいいんじゃん!」って。それで、その人たちの声を地元に持ち帰ったんですが「え? なんで? 住んでないじゃん!」って言われちゃうんですね。
藤本
う〜ん……。
田中
その時はまだ移住定住という考えも始まったばっかりだったから、その気持ちもわかるんですけど、「住まなきゃいけないって何?」ってなってしまって。それでは応援したい人たちの気持ちが宙に浮いてしまうし、地域側としてもそういう人たちの力をもらい損ねている。すごくもったいないな……と、ずっと悩んでいたんですよ。
藤本
なるほど。すごくリアルですね。
田中
そんな時に『ソトコト』という雑誌の編集長さんが「関係人口」って言ってるのを聞いて「これだー!」って。当時、関係人口をメインに書かれた本はまだなかったこともあって、自分で書くことにしたんです。

住む? 住まない?

田中
あらためて「関係人口」についてなんですが、「交流人口」との違いをよく聞かれるので、整理しますね。
例えば、あるイベントがあったとして、交流人口っていうのはおもてなしをされに来る人。観光客がその多くで、それはそれで大事なんですが、一方、関係人口っていうのは、一緒にテントを建ててくれたり、最後の片づけまでやってくれたりと、力になってくれる人。その人たちは、あなたの「困ってます」っていう言葉に反応してくれるんですね。
藤本
なるほど。
田中
でも、本を出版したことで、全国をこうやって歩いていると、たまにへこむことがあって……。
藤本
どうしてですか?
田中
「関係人口なんか意味ない。移住定住者が増えなきゃどうもならんだろう」みたいなことを言われることがあるんですよね。
藤本
ええー。
田中
本来、関係人口っていうのは、移住定住のためのものではなくて、地方に足りない力を貸してもらうことが本質だと思うんです。でも、実際、関わって力を貸していると愛着が高まって、中には移住しようかっていう人も出てくる。そんなふうに、結果的に、移住にも繫がる可能性があるんですよ、でも決して目的ではないんですって説明するんですけど、なかなかわかりにくいみたいで……。
藤本
女の子とご飯食べに行きたいなって思って「ちょっとデートしてくれませんか?」と言っただけなのに「じゃあ結婚してくれますか?」って返されるみたいな……。
田中
そうそうそう(笑)。ほんと、そうなんですよ。ちょっと応援したいって言ってるだけなのに、「住むか? 住まないか? 覚悟決めろー!」みたいに言われると「じゃあ、もういいんで」ってなってしまう。
藤本
怖いんですよね、圧が。
田中
そうなんです。何回も遊びに来て好きだったはずなのに「ごめんなさい。住めないんですよ」って断っているうちに自分がわるいことしてるみたいになって、住めない自分を責めてしまって。うしろめたくなって、フェードアウトしてしまう……。
藤本
ローカルあるあるですね。
田中
ちょっと力を貸してくれるだけで十分なのに、「住む方が偉いんだよ」みたいな価値観を持ち込んだ瞬間に壊れるものがあって。もっと微妙で絶妙な関係も大切だと思うんですよ。
藤本
僕も「移住定住」っていう役所的な言葉にすごく違和感があるんですよね。マンモスじゃあるまいし、ただの引っ越しですよね。
それに対して「関係人口」っていう言葉の登場はとてもありがたくて、単に「行ってみたい」くらいの気軽な気持ちを受け入れる包容力がある。
田中
うんうん。
藤本
僕は編集者という仕事をしているので、雑誌を作ったり本を作ったりするのがメインの仕事で、『のんびり』というフリーマガジンの編集長をさせてもらったことから、秋田に足しげく通うようになって、思えばこの5〜6年で秋田には100回くらい来てると思いますね。
田中
すごいですね。
藤本
で、「住んだら?」って言われるんですよ。でも、絶対嫌なんですよ。
田中
何でなんですか?! 何て答えてるんですか?
藤本
「嫌です」と(笑)。住んでしまうと、役割が変わるじゃないですか。
田中
はいはいはい。
藤本
住んだ瞬間にしがらみに飲まれるんですよ。
田中
(笑)。
藤本
よそ者として、言いたいこと言って兵庫県にさっさと帰る。だからこそ言えることっていうか、引っ掻き回せることってあると思っているので。そういう意味で、強い意志を持って、この心地良い秋田に住まない

よそ者の役割

田中
いまの「よそ者」っていう言葉に、すごくヒントが隠されていて。よそ者の力っていうのは、学術的にも「地域を再発見する力」とか「誇りを育てる」とか「しがらみのない立場からの解決案の提示」とか、明確に言われているんです。
藤本
うんうん。
田中
要は、よそ者っていうのは、「よそから来た人と地域の関係」があって、はじめて生まれるんですよ。なので、住んでしまうと「よそ者性」が下がるんですよ。
藤本
まさに。
田中
住まないからこそ、よそ者はよそ者として「あなたたち、ここが違うよ」「ここが面白いよ」と、違和感や感動を伝えるのが役割である。
藤本
そうそう。それに、よそ者としてその土地に入ると、その土地にいる人が「その土地の人としての役割」を果たそうとしてくれるようになる。そこも大事だなと。
田中
そこです、そこです。
藤本
だから僕は秋田で何かをやるとき、安易に「皆さんのために」とか「未来のために頑張りましょう」とか、そんな嘘くさいことは絶対言いたくないんですよね。それよりも「この町で僕、儲けたいんです!」っていうような、個人の欲望みたいなところをはっきり伝えないと、互いの思惑がはっきりしないし、そうしてはじめてそれぞれの役割が何か? って話になる。それをよそ者と土地の人がそれぞれにうまく活用しながらやっていくほうが健全だと思うんですよね。
田中
素晴らしい。
藤本
もっと活用してもらいたいんです、よそ者っていう役割を。僕はきっと秋田の人たちに、いろいろ言われてると思うんですよ、悪口とかも。でも、どんどん言われたいんですよ。「またあの人……」って言われながら進むってことにしか、僕の価値がない。

人口減少のトップランナー

藤本
僕がそもそも秋田県っていうところに興味を持ち、秋田で編集の仕事をやりたいなって思ったきっかけは、やっぱり人口減、少子高齢化がナンバーワンであるってところなんです。
田中
うんうん。
藤本
日本中がいずれはそうなっていくなかで、いま、秋田はトップランナーで、秋田で何かを残していくってことで、他の県にも参考になる事例ができるかもしれないっていうのが、僕にとっての魅力なんです。
田中
全くそのとおりです。藤本さんは秋田を人口減少の日本のトップランナーっておっしゃいましたけど、島根の人口はいま、大正時代より少ないんですよ。そんな県は47都道府県で島根だけです。
藤本
減少率で言うと島根が1番なんですか?
田中
そうなりますね。まあ、そのうち抜かれるっていう危機感を覚えているんですけど(笑)。
藤本
よし、秋田も負けないぞ!(笑)
田中
島根県も関係人口作りの政策に取り組んでいるんですが、スタート当初はすごく緩くて「まあ、人が来てくれて将来関わってくれたらいいですね」ぐらいの出し方だったんですよ。
藤本
いいですね。秋田ももうどん底なんだし、もうちょっと諦めたらいいのにと思っていて。頑張って一番下からブービーまで持っていったところで、不毛だよな、と。もっと突き抜けたほうがいい。
田中
藤本さんがおっしゃったみたいに、秋田や島根で解決できたら日本の人口減少とか世界の人口減少とか解決できる
藤本
ほんと、そうですよ。
田中
だから、島根も秋田もトップランナーでよかった。だから面白いんですよ。ようやく私たちの時代が来たんですよ! って私、力説してます、島根で。

減るのは問題?

藤本
新聞なんかでも「減っていく! どうする!?」みたいな書き方をするから、みんなそれを信じてしまう。もうこういう書き方、やめませんか? って思う。いまのまま移住定住促進を続ければ、仮に、にかほ市(秋田県)の人口が50人増えたとしても、となりの酒田市(山形県)50人減りました、みたいなことが起こりうる。日本全体を見たら、どこかが増えても、どこかが減ってるだけなんですよ。
田中
行政の担当者が、ほんとに苦しそうなんですよね。政策としてやらなきゃいけないんだけど、増えない。人口増加のための対策課みたいなのを持ってる市もあるし。
藤本
うんうん。
田中
だけど、みんな直感でわかるわけですよ。隣の市から持ってきたら隣の市が悲しがるし、不毛だなって。数は減っているかもしれないけど、もっとハッピーなあり方を探っていかないとほんとにつらい。それが、本を書く動機にもなったんですよね。
藤本
だからこそ、それぞれがそれぞれの町に暮らしながらも、よその地域のファンでいられる、関係人口っていう考え方は大事ですよね。
田中
そうだと思います。
藤本
関係性を深めていくことが数値化されていけば、役所の皆さんももっとやりやすくなるだろうなあって思うんですけど、関係人口を数値で表すことってできるんですか?
田中
そこですよね。いまはまだ数値化については難しいですね、ちょっと逸れてしまうんですが……。いろいろな方とお話するなかで、私が「町の課題は何ですか?」って聞くと「人口の減少です」ってよく言われるんです。でも「人口の減少で何が困るんですか?」って聞くと「あ? え? あ?」みたいな感じになって、大抵の方が答えられないんですよね。
藤本
なるほど。
田中
結局、人口減少自体が課題なんじゃなくって、日本社会が拡大を前提に作られてきていて、それが人口減少という新しい局面を迎えた時に、これまでの制度や仕組みと合わなくなっていて、暮らしにくくなっているっていうことが問題なんじゃないか? と。だから、そこを解消しましょうっていう話をするんです。
藤本
なるほど〜。
田中
だから、関係人口も、数値に頼るのではなく「それによって地元の人が元気になった」みたいなところに振らないと。実際、島根で関係人口の事例を見ていて、何が一番変わるかって、「地域の人」なんですね。
藤本
たしかに。
田中
人が減って、店がなくなったりとか、そういう何となくの不安を感じている中で、よそ者がやってきて「僕、頑張ります!」っていう姿を見ると「あぁ、こんな関係ない人が頑張ってくれてるのに、自分は何をやってるんだ!」って、人の心が回復するんですよね。
藤本
うんうん。
田中
学術上でも、いまの地方の課題っていうのは、インフラが整ってないとかじゃなくて、人の心の誇りの喪失や、諦めが一番って言われていて、でも、関係人口ができることでそこに暮らす人たちも頑張ろうって思えたら、結果的に人の心が元気になって、地域が元気になるんですよね。でも、それはとても指標化しにくいことなんですよ。

やるのは、「あなた」です

藤本
いまの話にあったように、よそ者がやってきて、一生懸命頑張ります、そうすると町の人たちが「あーよその人たちがこんな頑張ってくれてるのに!」ってなるじゃないですか。その時にね、秋田の人たちってもう一個ハードルがあって……。
田中
どんどん核心に触れていきますね。
藤本
「こんなによその人が頑張ってくれてんのに何してんの!? 役所の人は!」ってなる。
田中
えーっ! そうなの?!
藤本
いやいや、自分でしょ? って。そこが僕は結構しんどいんですよね。役所の人たちにも、すべき仕事ってのがあるわけだし、大事な税金を運用するわけだから慎重にもなるし。
田中
そうですよね。
藤本
民間の人たちが「自分たちでやらなきゃ!」と思ってくれると変わっていけると思うんだけと、まだまだそこまでには距離があるなあって感じてますね。
田中
島根は、官と民を分けてたら誰も残らなくなる感じがあって。だから、公務員のキャッチフレーズが「公私混同」を超えて、「公私同一」。公務員に限らず「自分が頑張らないと島根は沈む」みたいなことを、けっこういろんな人が思ってるから。それぞれの立場でそれぞれが頑張るしかない。もちろん全員ってわけではないと思いますが、それでも「あの人がやらないから」なんてことはあんまり聞かないかな。
藤本
それはいいですね。実際、秋田もそんな人ばっかりとは言わないけど、ちょっと多いなって感じてますね。
田中
仲間たちとも「人が楽しそうに暮らしている地域が魅力的だから、まずは自分たちが楽しくしよう」と、決めているんですよ。だから私は講演でも、最後に「役所が」とか「会社が」とかじゃなくて「あなたです」って言っているんです。

関係案内所?

田中
藤本さんは、課題があるから秋田に来ている、とおっしゃっていましたけれど、島根の若者もそうで、課題を自分の「関わりしろ」と捉えているんですよ。
藤本
そこ結構ポイントですよね。
田中
「課題」っていうとマイナスに捉えがちなんですけど、逆に考えると「新たな力がここに必要」っていうメッセージでもあるわけで、いま、若い人たちにとっては「米がうまい、自然が豊か、人があたたかい」みたいなのは、日本どこでもそうで、あんまり差別化にならないんですよね。それより、例えば、廃校寸前の学校があるとか、商店街がシャッター街になっているとか、そういう具体的な課題に対して「力を貸してくれ」って地域が言うから、よそ者もやって来る。
藤本
そのとおりだと思います。
田中
明確に課題を提示してもらって、それが自分の興味関心と合っていると一生懸命に頑張る。一生懸命に頑張ると地域の人も変わる……そういう良い循環に変わっていくんですよね。だから、課題を課題として出すというより「あなたの力が必要だ」というメッセージに変えるという事が大事ですよね。
藤本
そこのビジョンを、みんながどう想像して発信するかっていうのが大事だし、特に自治体などの漠然とした動きは、大事なその視点が欠落してることが多いんですよ。
田中
うまくいっているとこは、足元をちゃんと見てますね。地域にはずっと培ってきた歴史、風土があるわけで、自分たちの成り立ちだったり文脈ってものをきちんと捉えて「だからうちはこれをやる」と。
藤本
それを受け取る側の話でいうと、都会はとくに、日々満員電車に揺られながら、自分が社会の中の一つであることを自覚しつつも、でも「自分の本当の価値や使命ってなんだろう?」「それを果たすほかの場所がどこかにあるんじゃないか?」って漠然と思ってる人がたくさんいると思うんです。そういう人たちが、地域の課題とか、足りないものを見せられた時に「自分の能力が活かせる!」ってなるかもしれないんですよね。

「1300万人の1」と「68万人の1」

田中
都会で講演する時に、一番に響くのが、県職員の人に教えてもらったことなんですが、人口を裏返しにした数字です。都会の1300万人と島根の68万人を比べると、1300万人のほうが大きいから何かすごいって思うんだけど『それに「あなた」っていう分子を乗せて「1300万人の1」と「68万人の1」、どっちのほうが役割が大きいですか?』って聞くと、みんな気付くんです。
藤本
すごい! わかりやすい!
田中
私も都会にいたからわかるんですけど、自分がいなくても地域は回るし、それでいいんですけど、島根にいると「自分が頑張らないと島根が沈没する」って本気で思うんですよね。そこに生きてるだけで自分の役割が感じられる。
藤本
そろそろ、ものさしを変えていかないといけないんですよね。
田中
そう思います。昔は、「大きいことは良いことだ」っていう空気だったと思うんですが、いまの子たちは、そんなふうには思っていませんしね。
藤本
「果たしてこれが永続的に続くかどうか」みたいな、もっと未来を見ていると思うんですよね。
田中
「このままの延長線には明るい未来はない」「大きくなくったっていい」って肌で感じている。もっと自分の幸せってことのほうに敏感ですよね。
藤本
確実にそう思います。
田中
それはもちろん、人口が減るからっていうんじゃなくて、減ることといまの仕組みが合ってないからなので、うまく持続性がある方向へも変えられると思うんです。だから、いまが正念場ですよね。

貯信を積み重ねること

田中
地方に暮らしていて、私がいいなぁって思うのは「お互い様」っていう感覚なんです。たぶん、都会にいると難しいんです、分断されていて。私がいま、島根でローカルジャーナリストとしてやらせていただけているのも、ほんとに島根の人たちが助けてくれたからなんですよね。独立して記者じゃなくなったら人は離れるのかなと思ったけど、人脈は9割9分くらい残りましたね。
藤本
へ〜!
田中
それはみんな、私が15年間、一生懸命地域に向き合って書いてきた姿勢を見てくれていたからで、「一緒にやろう」って仕事もくださるんですよ。私はそれに対して「ぜひ!」って仕事でお返しする。困っていると助けてくれるし、私も相手が困っている時は助ける。その「お互い様」っていう循環がすごくあるんですよね。
藤本
それって、輝美さんっていう人が信用を積み重ねてきたってことなんですよね。最近、西野亮廣あきひろさん(お笑い芸人、絵本作家)の影響だと思うんですけど「貯信ちょしん」っていう言葉をよく聞くんですね。お金って、結局何かと言ったら「イコール信用」ってことで、すなわち、信用っていうものがお金に変わっていく、価値に変わっていくんだと。だから僕自身も信用をどんどん作っていけるように心がけていますね。それには、まずやっていく、形にしていくしかないんですね。
田中
わかります。
藤本
目先の経済っていうよりは、信用を高めていく。僕は一昨年から「いちじくいち」というマルシェイベントを、秋田県のにかほ市でやってるんですけど、補助金ありきではなく、自分たちで金銭的なリスクを背負うところからはじめたんですね。それはもちろん一つの投資だと思うんだけど、それもこれも僕はこのイベントを成功させることで、信用を貯めてるんです。
田中
さっきご来場の方に「にかほ市に来たのは初めてですか」って伺ったら、「いちじくいち」に来たんですっておっしゃって。それって、藤本さん自身も立派に関係人口の一人だし、それを目的としてやってくる新しい関係人口を作っているってことですよね。
藤本
ありがとうございます。とにかく、このにかほっていう町のポテンシャルを感じてもらいたくて。
田中
こうやって地域の人の日常ではなかなか価値の感じられないものに、「これ、ほかの地域と違っておもろいよ」って言ってあげるのが、よそ者の役割ですから。藤本さん、よそ者力発揮してますね!
藤本
この町特産のいちじくの販売を軸に、県内や県外の飲食店や雑貨屋さんに出店してもらったりして、車でしか辿り着けない、廃校になった小学校に2日間で6000人以上の方が来てくれたんですけど、こういうものが、にかほでもやれるんだっていうことですよね。
田中
きっと地域の人たちは変わりますね。
藤本
ずっと一つの町にいると、当たり前にその町のルールや考え方に染まってしまう。それは当然の事だし、けっしてわるいことばかりじゃないと思うんです。でもだからこそ、僕は新しいことをこの町で提示したい。
田中
藤本さんは、島根に来ても秋田の話をたくさんされるんですよ。島根の関係人口にもなって欲しいなあ。
藤本
僕は兵庫県の人なんですけどね(笑)。
田中
そうでしたね、忘れてました(笑)。こういう人を生かすも殺すもみなさん次第なんです。「みなさん」っていうのは行政じゃなくって「あなたですよ!」ってね。

輝美さん 関係人口ってなんですか?
おわり

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