花輪ばやし③鳴り響く、花輪ばやし
8月10日。鹿角市花輪の町なかに着くと、アーケードや町内の会館など、町のそこここで、お囃子の練習が行われ、お祭りのムードがじわじわと感じられます。この日がお囃子の練習初日という、谷地田町をあらためて訪ねました。
編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士
2018.04.04
秋田市にコーヒーとアナログカセットの店がオープンしました。決して昭和の話じゃありません。開店したのはほんの数ヵ月前、2017年12月のこと。
その店「のら珈琲」の店主・森幸司さんは、かつて東京の大型輸入レコード店で働いていた経験もあるそうです。森さん、どうして今カセットなんですか?
その姿をはじめて見かけたときには、アナログカセットで音楽を流す「カセットテープDJ」としてイベントを盛り上げていたのら珈琲の森さん。音楽フェスティバルやライブなどへの出店を行いながら、「ZONBIE FOREVER」という名前の自主レーベルも主宰しています。
——ずっとカセットテープを使ってるんですか?
森さんは、生まれ育った山形県から東京に出て約12年働いてきました。仕事は大手レコード店から介護職へ、その間に結婚1回、離婚1回。Qurageというユニット名で、音楽活動も行っています。
——やっぱり音楽で食べていこうと思って?
そこで思いついたのが、アナログカセットの店を持つこと。インターネットを通じた売買やオークションが盛んなアナログレコードと比べても、カセットはまだまだインディーズの世界。大きな資金力がなくてもやっていけるんじゃないかという目論見もありました。
——だから「のらカセット」じゃなくて、「のら珈琲」なんですね。珈琲はどこかで修行を?
「のら珈琲」ではオリジナルブレンドの他にも、宮城の「七草商店」、山形の「おもちゃ屋kimi」など、音楽つながりの友人の店それぞれのイメージに合わせてコラボレーションブレンドをつくり、販売。アナログカセットの店であると同時に、ちゃんと自家焙煎の珈琲店としてやってるんです。
だから、「のら珈琲」の店内に足を踏み入れても、カセットテープが山積みになっているわけじゃない。板塀の古い民家、ガラガラっと引き戸を開けると土間にカウンターがあって、小上がりには丸いちゃぶ台とお座布が。これはもう、森さんの家に上がりこむ気持ちに近いかも。
——ですよね。
実はここ、2005年に開店した石田珈琲店(現在は札幌へ移転)、そして、その跡を引き継いだ「キトキト」(現在は秋田市大町へ移転)と、おいしい珈琲で知られた名店が使い継いできた建物。
お寺と新旧の住宅の間を細い道が抜けていく寺町と呼ばれるエリアで、日常を離れてどこか遠くへ来たような気持ちにもなる場所です。決してわかりやすいアクセスではないにもかかわらず、看板は店先の小さなものだけ。
——どうして?
なんだか納得。誰に頼まれるでもなく、珈琲とアナログカセットの店をオープンするくらいなんだから、自分のペース、やりたいことを守っていかないとね。
そういえば、山形出身の森さんが秋田に店を開いた理由を聞き忘れていました。
——おっそうでしたか。
森さんの人生模様も反映した「のら珈琲」。その店名は、森さんの“野良猫”っぽい気質から自分で名付けられたそうですよ。マイペースに、気まぐれに、他人に影響されすぎないで。