‘Hanabi-shi’ (Fireworks master/pyrotechnician) 5. Let’s go to the Omagari Fireworks!
Saturday, August 27th. The day of the Omagari Fireworks. We’re here at the venue! It’s a beautiful clear day. …
編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士
2018.04.17
もっきりという世界をご存知でしょうか。酒屋の一角で簡単なアテとともに飲むことができる場所のことで、角打ちとも呼ばれます。近年、「角打ちブームが到来」ってウワサも聞こえてきますけど、そんなブームなどどこ吹く風。これぞ秋田のもっきりのリアルだという店にたどり着きましたので、こちらでレポートします。
出会いは突然でした。 別に記事を書いた土崎の“ホソレコ”で、帰り際に町のオススメを聞いたところ、「土崎にはもっきりが4軒くらいあるよ」という話が出てきました。土崎に生まれ育った、なんも大学編集部・矢吹氏も「えっそうなんですか!?」という、土崎のオトナの世界。
なかでも「昔からずっとやってる店。そこは飲食店の免許もとっちゃって、みんな店に上がりこんで飲んでますよ」という情報を聞いてやって来たのがこちら、「竹内酒店」です。
店のなかに入っても箱や冷蔵ケース、その他いろんなものが多すぎて、なかなか店内の全体を見渡すことができません。
酒のケースやベニヤ板などをうまく組み合わせてつくられたテーブルセットが置かれた手前。そして、左奥のスペースは、小上がりというよりも、家のリビングみたいなカジュアルさ。奥は、なかなか酔ってられるのが伝わってくる先客でうまっていたので、ひとまず、手前に座りました。
まだ店のルールもよくわからないものですから、ひとまず簡単なツマミでもと思って、サバの缶詰とパックの豆腐を特に何も告げずに手渡したところ、この形になって返ってきました。ウレシー!
見慣れない顔の珍客のわれわれもすぐに受け入れられたのですが、それもこれも、店を切り盛りしていた竹内恵美子ママのおかげ。酔って子どもに戻ったような顔したおじさんたちを相手にしながら、上品な物腰でとても楽しそうにカウンターの向こうに立ってらっしゃいました。
——かなり昔からやってる店だと聞いてきました。
——100年を超えますか!
——もっきりのスタイルも創業当初からなんですか。
——先にお聞きしておきたいんですけど、どうして店内にいろんなものが山積みになってるんでしょう。
——倉庫も兼ねてるということなんですね。
——すごく楽しそうにみなさん飲んでますね。
——朝の9時から待ってる!
——それが毎日なんですね。
——それが若めの年齢層ということは、いつもは?
——そうか、その頃からのお客さんがずっと来られてる。
土崎には国鉄よりも前、明治期の鉄道庁の時代からJRの大きな車両工場がありました。そして、港湾施設も。そのため古くからもっきりが盛んだったようです。ここ「竹内酒店」のことを教わった「細川レコード店」も、戦争前後の商品がない時代は、店の一角でもっきりをやっていたんだそうです。
土崎出身のなんも大学・矢吹氏がこの店のことを知らなかったのは、この街に暮らしたのが20歳まで、未成年だったからのようで、けど、矢吹家が営業していた豆腐店のことは恵美子さんも他のお客さんもよくご存知でした。「おー、あそこの豆腐屋のムスメか」から始まる地元トーク。故郷に錦を飾りましたね、矢吹さん。
——おかあさんも飲んでます?
——みんなを見守る係。
ちょっと1杯だけのつもりが、店内のテレビで中継されていた大相撲春場所も終わって、外はすっかり暗くなっていました。その間、ずっとしゃべり続けていたけど、何の話をしてたんでしょう。常連みんなで温泉へバスツアーをして向こうで酒飲んで、帰ってきたらまたこの店で飲むんだよぉとか、そんな話。
店内で少し録音していた音声を後日聞き返してみましたが、秋田弁が濃くて、いろんな人が同時にしゃべっていて、ほぼ何を言ってるのかよくわからないのに、なんだかまた笑っちゃうくらいに盛り上がっていました。 そして、飲んでいたあの時は秋田弁もすべて理解した気でいました。そんな場所のそんな時間。
記事として賑やかな部分をクローズアップしましたが、1杯だけ飲んでさっと挨拶して帰る常連さんの姿もあり。きっとこの店に通うのが日々のことだから、自分のペースはみなさんわかっています。 土崎の日常にちょっと混ぜてもらったような感覚。
店を出ると、魔法がとけたかのように車内であっという間に眠ってしまいました。地元のナマな日常はヨソモノにとって非日常、ワンダーランドですね。
【竹内酒店】 〈住所〉秋田市土崎港中央6丁目2-20〈時間〉9:00〜21:00 〈定休日〉不定休 ※毎年三が日は休業 〈TEL〉018-845-0028