秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード
仙北市編

編集・文:竹内厚 写真:船橋陽馬

白い星と天体望遠鏡

2018.08.15

大口径の天体望遠鏡を備えた宿「ペンション 白い星」が、駒ヶ岳の裾野に位置する水沢温泉郷にあります。

夕飯に心づくしの洋食料理をいただいた後、「準備ができました」という声に誘われて庭へ出ると、そこにはドーム屋根の天体観測小屋がありました。

時代によってスタイルを変えてきたという、ペンション白い星。オープンして約40年、白い星に1泊したときのレポートをお伝えします。

たざわ湖スキー場の温泉地として、ロッジやリゾートホテルも立ち並ぶエリア。山と空の美しさも一級品。
ペンション白い星は、5つの白星が目印。

ペンションとは、家族経営で洋式の宿をいうことが多く、1970年代に急速に普及したとされます。

白い星のオープンも70年代。といっても、当初は、スキー客や登山客を見こんで、全室和室の「ロッジ 白い星」だったそうです。ところが、少しずつカップル客が増えてくるなどしたため、全部屋を洋室に改装して、食事も洋食スタイルの「ペンション 白い星」となりました。

「ペンションと言っても、オーナーが先に立って、“みなさんで星を見ましょう”とかって言うのは、イヤなのよ」と高橋てる子さん。ペンションという言葉から連想するものは、世代によっても異なると思いますが、白い星ではまずは宿泊客それぞれを尊重するスタンスが守られています。

言葉どおり、ほどよい距離感でサービスいただいた。料理はすべて高橋さんの手づくり。
ちなみに、白い星の朝食はフレンチトーストが定番メニュー。

夕飯後、天体観測小屋での話に戻ります。
天体観測小屋に入ると、中央には大きな天体望遠鏡が。この望遠鏡、GPSをもとにして指定した星の見える方角と角度に自動で動くというスグレモノ。
高橋さんによるわかりやすい解説にあわせて、次々に夜空の輝けるスター、星々を見ることができました。

ドーム内から見える夜空。無数の星々からとっておきのを高橋さんが紹介してくれる。
ミード社製の天体望遠鏡、35cmの大口径。

火星、木星、土星といった惑星から、宝石のようにきれいなはくちょう座の二重星アルビレオ、若い星が集まったM29、何十万という星が球状に集まったM13などなど……。

そして、「いよいよ真打登場です」と最後に見せてくれたのがお月さま。この日は上弦の月で、天体望遠鏡の視野いっぱいに、まぶしすぎる光ととも巨大な月の姿を見ることができました。

クレーターの奥まではっきりと確認できるほど近くに見えるのに、そこには誰もいない月……。ちょっとセンチメンタルな気持ちに。
地元の大工さんと建てた天文観測小屋。当初、ドームも自作したが、風で吹っ飛ばされたため、ドームは既成品を注文したそう。

スキー客の減少、一緒に宿を運営してきたご主人の他界……そんな理由もあって、もともと天体への興味も強かった高橋さんは、宿に天体望遠鏡を導入したそうです。

「昔に比べると天体望遠鏡も進化して、私でも扱いやすくなってきましたから。ちゃんと天体の知識もお伝えして、その知識と重ね合わせて見れば、やっぱりすばらしいですよ、本物を目の当たりにできるわけだから」と、天体観測の魅力を語る高橋さん。

かつてスキーヤーの憧れだったクナイスルの「ホワイトスター」が、宿名の由来に。
看板犬のヒロ、7歳。
客室は、日本の人工衛星の名前をとって名づけた。
星にまつわるものが館内のいたるところに。

環境のよさと、オープンまもないたざわ湖スキー場に惹かれて、東京から秋田へ。それから長い年月の間に、ロッジからペンション、そして、天体望遠鏡のある宿へと、宿のカタチは変化してきました。

「もう無理じゃないのって周りから言われるけど、そのときどきで状況にあわせて目一杯やってきたから退屈しないのよ(笑)。自分で宿をやるって、総合的にいろんなことを考えないといけないから面白いんです。こっちの趣味とお客さんの趣味が一致するとさらに楽しいしね。ま、私がいちばんやりたいことは、みなさんに喜んでもらうことだから、来てくださる方はどなたでもいいんですよ」とにっこり笑う高橋さん。

ご存知の方も多いかもしれませんが、たざわ湖スキー場は、2015年からモーグルのワールドカップ開催地に選ばれて、世界のトップ選手がやって来る場所になっています。
それを目当てに、毎年、白い星に宿泊していく常連客もいらっしゃるそう。

長く続けていると、いろんなドラマと変化があります。その変化を楽しみながら、高橋さんはペンション白い星を自分の理想形に近づけようと毎日の営業を続けられています。

天体望遠鏡の稼働は、その日の天気と季節次第。「宿泊してくれた方へのおまけのサービスくらいに思っていただけたら」。

【ペンション 白い星】
〈住所〉仙北市田沢湖生保内字下高野72
〈TEL〉0187-46-2525
〈関連ページ〉http://www.akitafan.com/archive/tourism/4058

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