秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード
鹿角市編

編集・文:矢吹史子 写真:船橋陽馬

夢の喫茶店、クイーンへの誘い。

2018.12.05

鹿角市花輪かづのしはなわで出会った喫茶店「Coffee Houseクイーン」は、その名に違わず、まさに「王道」。喫茶店に抱くあこがれを、まっすぐに満たしてくれる店でした。

いつまでも身を置いていたいその佇まい、眺めていたいメニューのひとつひとつを、写真でお届けします。一緒にお店に行った気持ちで、ぜひご覧ください。

花輪の商店街から、小道に入ったところに「クイーン」はある。
格子窓にレンガの壁、飴色の照明に古時計……。「はじめて来たのに、懐かしい」。あまりに月並みな表現ですが、悔しいかな、それがしっくりきてしまう。
入口に鎮座する小便小僧。必要あるのか、そうでもないのか? 絶妙に意味のわからないものがあるのも、喫茶店の楽しみ。
行きつけの喫茶店には、週刊マンガや大衆誌があってほしいもの。カウンターでは新聞を広げながら一服する人の姿も。
電話ボックスもある。この電話から、いくつもの物語が生まれていそうで思いを馳せてしまう。
カウンターには、白衣にネクタイの清潔感の溢れるマスターの姿。声をかけると「50年やってるんだ」と、ひと言。口数の少ないマスターがいるのも喫茶店の定番と安心できる。
厨房とカウンターを繫ぐ小窓が開き、スッと静かに手がのびる。調理担当は奥さん。できあがった料理はここから運び出される。
やってきました、喫茶店といえばの筆頭、ナポリタン。具はハムとタマネギのみのシンプルなもの。ケチャップが強すぎないのがちょうどいい。
ドリアのホワイトソースは繊細で、純真無垢な少女のよう。でも慌てて触るとヤケドするぜ。
こちらも喫茶店で出会いたい一品、ピザトースト。パンは分厚く、チーズはなが〜くあれ!
「ふわトロじゃないほう」のオムライスには福神漬けを添えて。時々見え隠れする意外な組み合わせにもニヤリ。
お待ちかね! 濃いめのグリーンが眩しいクリームソーダ。ほおづえを付きながらいただきたい。
チョコレートパフェは、クイーンというよりはプリンセスの趣。ベルベットをまとったようなチョコレートと、髪飾りのような真っ赤なさくらんぼがチャーミング。
こちらはゼリーパフェ。なめらかなクリームに、ブリンとしたコーヒーゼリーの食感が楽しい。パフェに使う生クリームは、ご主人が手動で泡立てている。「昔からずっとそうしてるから」とのこと。コーンフレークは入らない。反コーンフレーク派のカメラマン、船橋陽馬も大満足。
パフェの可愛らしさに浮かれていると、受け皿のクイーンと目が合う。この皿も「昔から使っているだけだよ」とのこと。
食後には、マスターが淹れてくれた珈琲が届く。やかんから直接ドリップする無骨さと小振りなカップの対比がいい。
ご主人の家はもともとこの場所で八百屋を営んでいたそう。「昔はここで鹿角りんごを包んでたんだ」。
寡黙ながらも、最後に「サッ」と、お茶目にポーズをキメてくれた。

クイーンに限らず、花輪には「ヨコハマ」「おれんじ」「T&A」など、長年営業している喫茶店がたくさんありました。夜遅くまで営業している店も多く、お酒を飲んだ後にパフェで締める「夜パフェ」をする人も多いそう。

また、鹿角市にはかつて、尾去沢おさりざわ鉱山(1978年閉山)があり、花輪は、鉱山で働く人やそれをとりまく人たちの流入で、商業地として大変賑わっていました。昼夜問わず働く人々も多く、一服できる喫茶店の存在はなくてはならない場所だったといいます。喫茶店へのあこがれは、当時の夢や活気の残り香が感じられるからなのかもしれません。

はじめて訪れたのに前から知っていたような空間、イメージどおりなのに初めて食べるメニュー……。なんとも不思議な感覚に、訪ねた後も「あれは夢だったんじゃないかな?」と錯覚しまうほど。夢か現実か……それはぜひ訪ねて確かめてみてください。

【Coffee House クイーン】
〈住所〉秋田県鹿角市花輪下花輪2-1
〈TEL〉0186-23-3698
〈時間〉10:00-21:00
〈定休日〉第3水曜休

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