Hanayome Dochu (Bridal Procession): 1. Hanayome Dochu



編集・文:竹内厚 写真:船橋陽馬
百穂さんのスケッチ
2018.08.15
江戸時代の都市計画が今に引き継がれている、角館・内町の武家屋敷群。広い通りにそって屋敷が立ち並ぶなか、ちょっと様子の違った洋風建築が見えます。
平福記念美術館。角館に生まれ育った日本画家・平福穂庵と百穂の作品を中心に、郷土画家の作品を紹介するミュージアムとして、1988年に開館しました。



そんな平福記念美術館で見かけた平福百穂のスケッチに心惹かれたので、こちらで紹介します。晩年、東京美術学校教授にまで登りつめた日本画家として知られる百穂ですが、明治40(1907)年、30歳で国民新聞社に勤めて、挿絵画家としても活躍しました。



百穂は、新聞社の他にも、『新声』『団々珍聞』『方寸』『平旦』『婦人之友』といった雑誌でも活躍。スケッチだけでなく、挿絵、版画、漫画といった分野もごく身近にある文化ネットワークの中にいました。
平福記念美術館では百穂のスケッチを50点ほど所蔵。日本画作品や書簡などの資料も含めると、百穂の作品は約200点所蔵していて、それらの作品を入れ替えながら展示を行っています。およそ2か月ごとに年6回程度の企画展を開催している都合上、百穂のスケッチが見られる機会は、それほど多くないそう。



平福記念美術館の学芸員、小松亜希子さんに百穂のスケッチについて聞きました。
「描く対象を丁寧に観察して、やわらかい色味で写実的な表現を大事にされています。議会スケッチは百穂がまだ若い頃のものですが、限られた短い時間で的確に特徴を捉えて、しっかりした線で描いてますね」。
百穂の父・穂庵も日本画家として活躍しましたが、穂庵はより写実的な表現を追求したのに比べると、百穂は女性的ともいえるやわらかい色彩を持ち味にしています。 また、百穂はリスや鳥などの小動物を愛して、よく絵に描いたそう。

なお、百穂はアララギ派の歌人としても活躍。設立のために奔走した旧制県立角館中学校(現在の県立角館高等学校)の校歌も、百穂の依頼によって歌人の島木赤彦や斎藤茂吉らが作詞を手がけて、現在も、角高の校歌として親しまれています。百穂は、校章と校旗の図案を手がけました。

学芸員の小松さんも角高のご出身で、高校生の頃からいい歌だなと思っていたそう。
「角館の人たちにもとても愛されている校歌なんです。高校生の頃の私は、不勉強であまり百穂のことを知らなかったのですけど」と小松さん。



郷土の画家として親しまれ、角館のまちにも作品を所蔵している方が少なくないという平福百穂。
そんな百穂の仕事に気軽に触れられるのは、岩波文庫のカバーをはずして表紙を見ていただくことかも。そこに現れる唐草模様の図案も百穂が手がけたもので、昭和2(1927)年の岩波文庫創刊以来、現在まで変わらず使い続けられています。
もちろん、平福記念美術館でナマの百穂の作品にも触れてみてください。日本画はとりわけ、画像データではその魅力を伝えづらい分野ですので。
*掲載した作品はすべて平福記念美術館蔵、作品の展示予定は未定
【平福記念美術館】
〈住所〉仙北市角館町表町上丁4-4
〈開館時間〉9:00~17:00(4~11月)
9:00~16:30(12~3月)
※入場は閉館30分前まで。
〈休館日〉12月28日~1月4日(展示換えの臨時休館あり)
冬季間(12~3月)の毎週月曜日
〈料金〉大人(高校生以上)300円
小人(小中学生)200円
※団体割引、共通券などの詳細はHPへ。
〈TEL〉0187-54-3888
〈HP〉http://www.city.semboku.akita.jp/sightseeing/hirafuku/