ブリーダーの畠山さんのお宅で出会った、地域おこし協力隊のみなさん。彼女たちは、これから秋田犬を飼いながら、大館市をPRしていくということで、改めてそのお話を伺いに行きました。
お会いしたのは、小山田紀子さん(千葉県出身)、鈴木彩里さん(千葉県出身)、富澤彰子さん(埼玉県出身)、西山奈見さん(福岡県出身)の4名。そして、2頭の小さな秋田犬!
文=矢吹史子
元デザイナーの編集者。秋田生まれ秋田育ち、筋金入りの秋田っこ。
フリーマガジン『のんびり』副編集長。
写真=船橋陽馬
- 矢吹
- きゃ〜! かわいい〜!!!! この子(犬)たちは、今何ヵ月?
- 西山
- 3ヵ月です。アカのほうが「あこ」で、トラのほうが「飛鳥」。姉妹なんですよ。
- 矢吹
- 名前はどうやって付けたんですか?
- 西山
- 一般公募のなかから選びました。
- 矢吹
- たまりませんね〜! かわいすぎて話に集中できなくなっちゃいそうですが……。みなさんは、そもそもどんなことをするんですか?
- 西山
- 秋田犬を育てながら地域の人たちと触れ合って、この犬たちを通じて、大館市や秋田のことをPRしていくんです。
- 矢吹
- 協力隊の募集の条件のなかに「秋田犬の世話」っていうのが入っていたんですね。
- 鈴木
- はい。当初、採用枠は2人だったんですよ。それが4名全員採用になって。ほんとに良かったなって思ってます。不安なことも多いし、何より、SNSにアップするときなんか、1人だったらカメラを持ちながら犬のリードも持って……っていうのはできなかったなって(笑)。
- 矢吹
- ほんとだ〜(笑)。みなさんは、いつ頃大館に来られたんですか?
- 鈴木
- 今年の9月1日に来て、そのあと、「8のつく日に」ということで、9月8日に犬を迎えて。やっと1ヵ月です。ようやく自分たちに何が起きているのかわかるようになってきました(笑)。
- 鈴木
- 2人で1頭ずつ世話していて、私と富澤さんが一緒に暮らしながら、飛鳥を飼ってます。
- 矢吹
- じゃあ、小山田さんと西山さんがあこを。1ヵ月経ってみて、いかがですか?
- 鈴木
- 最初、飛鳥は車酔いがひどくて。仔犬のうちからいろいろな所に連れて行って、かなりハードスケジュールだったので……。
- 矢吹
- そうか〜。犬にとってはかなりのストレスですよね。
- 鈴木
- はい。あこのほうは車酔いはしなかったんですけど、すっごく寂しがりやで。夜にクンクン鳴いて、それだけで近所迷惑になってしまったり……。
- 矢吹
- 慣れるまでは大変ですよね。そもそも鈴木さんは、どういう思いで、この仕事を選んだんですか?
- 鈴木
- 犬の飼育だけだったら選ばなかったと思うんですけど、私は一番に、まちづくりをしたいっていう思いがあって。「大好きな犬と一緒に、大好きな東北を世界に広められる!」と。
- 矢吹
- うんうん。
- 鈴木
- というのも、海外に行ったとき、あまりにも東北を知らない人たちが多くて。私は岩手県に住んでいたこともあるんですが、東京、大阪、北海道、長野くらいまではみなさん知っているんですけど、岩手や、秋田のことは全然! 私は「ここが世界で一番豊かなんですよ!」って思うのに。世界のいろいろな地域と比べると、これだけ豊かで、犯罪も少なくて……っていう土地はなかなかないのに、ここに暮らす人たちはそれを知らないんですよね。だから、ここの良さを伝えたいなって思って。
- 矢吹
- なるほど〜。
- 鈴木
- ここの人たちの考え方も、同じ東北でも岩手とは全然違っていて「ここではこれがふつうなんだ」っていうのを、だんだんわかってきました。
- 矢吹
- どんなことがありましたか?
- 鈴木
- 日本全体で見たら厳しそうなことも、ここはアメリカみたいに「大丈夫、大丈夫精神」があるというか……。犬を連れて行っても、わりとすんなり受け入れてくださったり。
- 矢吹
- おおらかというか?
- 鈴木
- そうですね。自分がミスしたり、ふつうでいったらご迷惑なことをしてしまっても、みんな「大丈夫、大丈夫」って言ってくれて、そのあたりはとっても助かってますね。
- 矢吹
- 土地そのものへのギャップはなかったですか?
- 鈴木
- 私はもともと、田舎が好きで、都会は息苦しいと思うほうで。ニワトリとかヤギも飼ってみたいくらいなので、この環境はむしろ良いんですよ。田舎の良さを活かすというより、都会のマネをしようとしてがんばっている地域が多いかんじがして……。
- 矢吹
- それは秋田市もそうですよ。
- 鈴木
- きれいに整備された観光地よりも、そのままにしていたほうがずっといいのに。私は岩手で自然は見慣れていたんですが、富澤さんが「わ〜山がいっぱいある!」って言っているのを見て、「そうなのか〜」って改めて気付いたり。
- 矢吹
- 私も秋田に暮らしていて、外から来た人に秋田の良さを気付かせてもらうことって本当に多いんですよね。「これからこうしていきたい」っていうことはありますか?
- 鈴木
- これから、SNSでこの犬たちのことを中心に情報を出していくんですけど、それを観光に結びつけられるように、まずは秋田のことをもっともっと知っていきたいですね。
仔犬たちとともにここからがスタートという印象の協力隊のみなさん。次回は畠山さん同様、彼女たちへの研修も担当されていた、ブリーダー暦40年以上という大ベテラン、日景さんを訪ねます。