フォロワー約9万人。秋田のヒーロー超神ネイガーの中の人に会ってみた!
〜後編「ソーシャルヒーロー誕生!」〜

秋田県民誰もが知ってる、ご当地ヒーロー超神ネイガー。けれど人気のピークはもはや10年前。しかしここにきてTwitterのフォロワー数が89,000人と人気が再燃! いったいどうして? 教えてネイガーの中の人!

編集・文:藤本智士 写真:高橋希
撮影協力:にかほ市観光拠点センター「にかほっと」

前編で告白したように「子ども騙しなよくあるご当地ヒーローでしょ?」と、ちょっぴりバカにしていたネイガーを、いや、やっぱりすごいんじゃないか? と再認識したのは、ネイガーのTwitter。

日々呟かれる言葉のチョイスに只者じゃないセンスを感じた僕は、そのフォロワー数を確認してびっくり。

なんと2018年3月現在で、フォロワー数89,000人以上!

ご当地ヒーローの先駆けとして、地方創生の星となった時代からもう10年。前編でその誕生秘話と爆発的ブームの秘密を伺いましたが、インタビュー後編は、いよいよSNS活用の話に入ります。少子高齢人口減少時代のあらたなヒーロー、超神ネイガー。その裏側にあるチームプレイの秘密に迫ります。

  • 新ネイガーの胸には信号機?!
  • なまはげの次は猿田彦
  • おれは正義の味方だ。でも いまは手が離せない」何故?
  • かっこいい」から
    かわいい」へ
  • 何が何でも秋田のことに
    こじつける我田引水力!
  • 政治と宗教と野球の
    話はしない。
藤本
そもそもネイガーをやりたいと言い出した海老名さんと、それに乗った高橋さんという幼馴染の二人が、いろんな時期を経て、今度また新しいネイガーをつくるということですけど、その気持ちの変化って何だったんでしょうか?
高橋
自分たちの気持ちっていうのもあるんですけど、かれこれ13年やっているので、地域の活動の在り方についてある程度理解を示してくれる方々がいらっしゃるわけですよ。それこそJA共済さんとか。そこでずっとネイガーを使って交通安全教室をやっていて、予算とか色々あるんでしょうね、「リニューアルしたい」とデザインと造形を依頼されたんです。久々に丸っきり新しく動く大きなプロジェクトになるので、私と海老名、まず初期のメンバーでやろうと。
藤本
原点回帰な感じですか?
高橋
そうですね。
藤本
それはネイガーそのものが変わるんですか?
高橋
いや、なんだろう。ネイガーがさらに変身するようなイメージ?
藤本
えぇっ! 本当に?!
高橋
っていうあくまでイメージです!(笑)全く別物にはなります。中の人は変わらないし、自分はネイガーだって言ってるので。
藤本
楽しみだなあ。
高橋
交通安全教室のときって、小道具とか大道具が大掛かりなんです。まず横断歩道を敷いて、信号機の模型を立てて…… と大変なんですよ。なので「わかった!もう信号機を胸に付けよう」と。
藤本
え?!
高橋
いわゆる省エネ化というか。そういう感じで新しいヒーローが生まれるんですね。「おれを見ろ!いま信号は何色だ?」って(笑)
藤本
自己完結できるんだ(笑)
高橋
そうそう。信号機役のやつがいなくても済むっていう。それで、「おれと一緒に信号渡ろう」で、もういいんですよ。
藤本
なるほど〜。やっぱりかさばらないの大事なんだ(笑)
高橋
そこに、「信号機の神様」ということで猿田彦を持ってくるとか。
藤本
信号機の神様が猿田彦なんですか?
高橋
道案内の神様といわれているので。交通安全の役割も担えるかなと。
藤本
やっぱりその辺のこじつけ力が高橋さんは強いんですね(笑)
高橋
我田引水。よそで起きてる出来事も無理やり秋田に結びつけてつぶやくっていう。
藤本
それがまさにいまのTwitterですもんね。いま、フォロワーは9万人近くいらっしゃる?
高橋
そうですね。8万9千人超えたくらいかな?
藤本
ほんとすごい数ですよ。Twitterを始められたのはいつなんですか?
高橋
確か2010年ころかな。
藤本
でも、そこからいきなりフォロワーが増えるわけではないですもんね。
高橋
そうですね。最初はまず、Twitterなるものがあるということでアカウントをいっぱい作って、アクターたちに配ったんですよ。「お前は怪人の〇〇役だから、このアカウントな」って言ってね。
藤本
へえ〜!
高橋
でもみんな呟かないわけですよ。Facebookはやるんですけどね。なりきりアカウントだったけど、しばらくそれも熱心にやってない時期があって。それで一念発起というわけではないんですが、正直、一時のピークを過ぎて以降、ネイガーが一般の方の目に触れる機会が少なかったので、普段の地道な活動をつぶやくようにしたんです。
藤本
近況報告みたいな。
高橋
そう、活動報告的にやり始めたんですね。それでも活動自体がなければいけないし、よっぽど暇だった時期がありまして、その時にしょうがないから何かやるかってことで、地元にかほ市金浦の大竹地区で「よし、ネイガー散歩しよう」って。『ちい散歩』みたいに(笑)。その散歩してるシーンを写真に撮ったり、子どもたちと触れ合ってる様子をつぶやいたら、それが結構ウケてそこからじわじわと。
藤本
なるほど。そんななかでも、フォロワー数が一気に増えた決定的なツイートって何かあったんですか?
高橋
決定的なツイートはですね……。一応農家の人っていう設定なんで、手押し一輪車に苗箱積んで軍手はめて写真撮って一言、「おれは正義の味方だ。でもいまは手が離せない」。
高橋
「理由は見ての通りだ」って(笑)
藤本
はははは!(笑)
高橋
そうやって農作業をしている写真を載せたらば、1日で一気に2万リツイートとか。
藤本
ほえー! なるほど!
高橋
みんな「何やってんの?!」って。やっぱり衝撃だったんでしょうね。
藤本
農業青年でありヒーローなんだっていう設定は県内では多少浸透してるけれど、県外の人にとっては単純にヒーローが農作業してるっていうのが面白いですもんね。
高橋
秋田県内の人も、一応、ショーのなかで農業青年っていう設定はあるけれど、実際にやってるところなんて見たことないじゃないですか。
藤本
そうですよね。実際はね。
高橋
だからそのツイートを見てみんな安心したのかもしれないですね。「あ、ちゃんとやってんだ」って(笑)
藤本
ようやくそこで深みが出てきたっていうか。
高橋
その辺りから、ヒーローらしいことをただ言うだけではなくて、もっと地元感を出そうということになったのかな。この前も、いちじくの剪定作業をやらせてもらったんですけど、ヒーローの格好してたら、全然できてないわけですよ(笑)
藤本
ははは(笑)
高橋
なんだか「かっこいい」じゃなくて「かわいい」っていうレスポンスが増えた感じがします。
藤本
ヒーローらしいっていうより、だんだんガチでいいやつって感じになってきましたよね(笑)
高橋
さっきのフォロワーが爆発したツイートも、ネイガーがネゴ(手押し一輪車)を押してる写真見ると、パワーあるはずなのに乗ってる苗がたった二つで、ヒーローなのに軍手して長靴履いてて。
藤本
ツッコミどころ満載なんですね(笑)。でもそういう写真を現場で撮るのは、高橋さんじゃないわけですよね?
高橋
そう。何十枚、何百枚と現場のスタッフが撮って一気に送ってくるわけですよ。そのなかで一枚選んで呟く。
藤本
その何百枚っていうのは、結構ちゃんと違ってパターンがあるんですか?
高橋
いや、それがもうタイムラプスじゃねえかみたいな。
藤本
ははは!(笑)
高橋
GIF動画みたい(笑)
藤本
2006年、2007年という人気がどーんと上がった時代は、秋田弁を話すとはいえ、やっぱりカッコいいヒーローですよね。でも、いまのSNS界隈を賑わしてるこのブレイクっていうのは、もう少し人間味がありますよね。
高橋
どのヒーローもそうですが、いわば子ども向けのコンテンツというイメージがあるんですね。ショーをやっていても、中高生はやっぱりわーって寄っては来ないんです。
藤本
確かに。
高橋
小学生でも高学年くらいになると、ネイガーがいるのはわかるけど近づいて来ない。来るのは小さい子どもたちか、もしくはお年寄りなんです。孫を喜ばせようっておばあちゃんが、孫の手を引いて近づいて来たら、やたら方言で面白おかしいことやってて、おばあちゃんはゲラゲラ笑ってるし、孫はかっこいいからって楽しく見てるし。
藤本
孫とおじいちゃんで楽しむポイントが違うんだ。
高橋
そうすると「 “ぼっこれたまぐら” ってどういう意味なの?」とか、孫の世代とおじいちゃんの世代で会話が生まれるわけですよ。見てくれる世代は本当に両極端で、ありったけ幼いかありったけ年上かっていう。そのあいだがすっぽり抜けてたもんだから、なんとかしたいなっていうのはありました。 ※ぼっこれたまぐら=役立たず
藤本
なるほど。
高橋
たまたまなんですが、Twitterでいろいろ呟くと本職たちがざわつくわけですよ。
藤本
本職?
高橋
「ネイガーのあの稲の持ち方はおかしい。おれはもっとたくさん運べる」とか。
藤本
なるほど(笑)
高橋
あとはコンバインに乗ってると、「お前んとこクボタか。おれはイセキだ」とかね(笑)つまり、全然関係なかったところ、それまで空白だったところの人たちの声が寄せられる機会が増えたんです。満遍なくなってきたというか。
藤本
そういう意味では、当時子どもだった人が10年以上経っていわゆる「あいだの世代」になって、いまガンガンSNSをやってると思えば、余計にそこにはまっていきますよね。
高橋
そういう世代が大人になって東京に行ったと。それでTwitterとかやるようになって、地方の状況がSNSを通じて入ってくるときに「ネイガー! お前まだいたのか!」って。それで、地元のことを知りたいってことも含めてフォローしてくれたりします。
藤本
県人会じゃないけど、そういう故郷への気持ちをネイガーを介して満たすみたいなことが結構あるってことですね。
高橋
そのときその瞬間に流行ったものであれば話題の共有ってなかなかないですけど、東京行った人たち同士で秋田の話になったときに、「お前ネイガーって知ってるか?」って、「金萬」並みに共通の話題に上げてくれるくらいにはなったのかなと。ある程度長い期間やってますから。 ※金萬=卵入りの白あんをカステラ生地で包んだ、秋田の代表的なお菓子。
藤本
いま都会で働いている若い世代の人たちって、漠然と地方に憧れるんではなくて、なにか「課題を解決したい」とか「ちゃんと社会と関わりたい」という意識が強い気がしているんです。そう考えたとき、ネイガーはどこかその媒介になってるっていうか、ある意味どんどんソーシャル化してる。言ってしまえば「ソーシャルヒーロー」になってる感じがします。
高橋
なんかかっこいいですね(笑)
藤本
そこがいまっぽいんだなっていう気がします。それがあのTwitterであり、高橋さんの若干こじれ気味な根深さとうまく合った(笑)
高橋
あるかもしれないですね(笑)
高橋
ネイガー自体がなまはげをモチーフにしている「マレビト」なので、要は外から来た神様ってことですよね。だから、人間でもないし地元の者でもない「ヒーロー」という立ち位置の者が秋田に対して何か言ってると、よそ者が何か言ってくれてるような感覚になって一緒に考えると思うんですよ。地元の連中がただただ現状を嘆いて文句を言ってるわけではない。あとはさっき言った、我田引水、こじつけ力。
藤本
まさにそこだなあ。
高橋
現状を説明するときに、何か別のものに例えてやる。いま秋田県はこういう状況だけど、ガンダムでいうとこういうシーンだよ、っていう。
藤本
高橋さんのアニメ好きがすげー出てきますもんね!
高橋
するとそこらへんのクラスタが秋田について考えてくれたりするわけですよ。
藤本
そこのクラスタってボリュームとしてはかなり大きいですもんね。
高橋
大潟村っていう、ものすごく広い田畑を作る人工の干拓地がありますよっていうときに、それを山手線で例えるのはみんなよくあるんですけど、そこにスペースコロニーを並べるわけですね。全長35㎞の。
藤本
はいはい。
高橋
そうすると、「あ、だいたいスペースコロニーと同じか」と。スペースコロニーは1000万人くらい住めるくらい、東京都の人口と同じくらい入るんですけど、大潟村はいま三千人とかしか住んでないから、そういう比率を並べることで、それまで興味なかった人たちが見てくれるようになる。
藤本
まさにそこがポイントですよね。いままでネイガーに興味なかったであろう人たちを取り込んでいってる感じ。
高橋
地元に根ざしたこじれたオタク、みたいな感じの(笑)
藤本
いや、それが面白いですよ。相当こじれてると思いますけど(笑)
。やっぱり高橋さん、こじれてますよね。
高橋
ですね(笑)
藤本
ふふふ(笑) でも、こじれがポジティブに転換してる人ってあんまり多くないじゃないですか。本当にこじれっぱなしの人はいっぱいいるけど。
高橋
専門的な分野に詳しい人っていうのは、身内だけでそういう話を内輪で深く深くしたがるんですよ。でもせっかく面白い話があるんだから、ほかのことに例えてでも広げたいというか。
藤本
高橋さんが持ってる専門性とか知識の部分が、ネイガーっていうフィルターを通してすごいエンタメ化してますよね。それこそいいタッグだなあ。
高橋
あとは、ネイガー自体がサブカルチャーなのでメインカルチャーにはなり得ない。だからこそ、サブカルチャー同士ほかのジャンルとすごく相性がいいんだろうなとは思います。そういうクラスタがTwitterには相当いらっしゃるので、Twitterのなかでの振る舞い方、と思えば、子どもたちに対して夢を養うような現実空間でのネイガーを任せられる人とか、それぞれスタッフがいますので、それぞれが特化してできることをやっていく。その集合体がネイガーという形になっている。
藤本
まさにチームプレー。しかし高橋さんのネットに関するリテラシーというのは、どうやって培ってきたものなんですか?
高橋
ただただ経験とか長さかもしれない。それこそ黒電話の受話器をカプラーに置いて、ピーキュルルピーっていう時代からテキストのやりとりはやっていたので、ホームページとかネットの世界にもそんなに躊躇せずに入っていけた。それでずっとやっていると、ネットで炎上だとかそういうものもいろいろ見てきて、「ああ、こういうことは言っちゃいかんな」とか。
藤本
フォロワーが増えていくにつれて、より気をつけないといけなくなりますよね。
高橋
そうですね。だから一つ気をつけていることとすれば、悪口は言わない。陰口も喧嘩もしない。あとは、政治と宗教と野球の話はしない(笑)
藤本
野球も(笑)
高橋
それだけです。野球も、「おれはジャイアンツだ」っていうと阪神ファンが「何言ってんだこいつ」って絶対なるので。
藤本
秋田に球団があれば別ですけどね。 あ、ネイガーさんぜひこちら戻ってきてください。
高橋
そうだネイガー、スマホでも持つかい?
高橋
手袋してて画面は反応するのかっていう(笑)
藤本
いやあ、しかしさすがネイガーさんは何やっても絵になるなあ〜。そりゃあ「かわいい」って言われるわ〜。大の大人が本気で遊ぶって最高ですよね。それが素敵やなと思います。
高橋
何を求めてるのかなというのを知るためのツールというか、ネイガーそのものがみんなのやりたいことを代弁するツールのような意味合いがある。だから、どんどん使ってくれれば嬉しいんですよ。「ネイガー、今度こういうことやってけれ」とか。
藤本
うんうん。
高橋
あとは、書くことでリアルタイムに反応がわかりますよね。数値化されるわけです。リツイート何件、コメント何件、いいねがどれだけついたとか。これが大事だなあと。『鉄腕アトム』じゃないですけど、作りっぱなしではやっぱりダメなんですよ。ネイガーもある意味機械でロボットなので。Twitterで毎日メンテナンスしてるんだと思ってます。140文字っていうプログラムコードを打って反応を見てるみたいな。大して目立った活動はしていなくても、「よし、今日も電源入ってるな」くらいの気持ちで、みんながそれを見て安心してくれる感じ。
藤本
そうか。Twitterをそういうツールだと思えばいいんですね。
高橋
ありがたいことに、我々も生身なので忙しい日もあるわけで、それで呟かない日があると、「大丈夫ですか?元気ですか?」って心配してくれる人もいるんですよ。
藤本
テレビのようなメディアとはまた違った反応ですよね。
高橋
ですね。知識のある方や有名な方とも即つながるので、影響力と影響力がぶつかり合って、いろんな方向に影響力を飛び散らかしていくような感じがありますね。だからまだまだ爆発するかもしれない。
藤本
秋田が誇るソーシャルヒーロー。これからますます楽しみです。

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