Extreme Nature “Onsen”①The natural power of Fukenoyu Onsen
Akita Prefecture has around 120 “onsen” (hot spring) locations, with 626 individual hot spring sources (Minist…
編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士
2018.05.16
こんなにも個性的な建築が公共建築としてよく実現できたなと感心する一方で、どこかではまだ覚めてました。近年、実力ある建築家が各地で力の入った建築を手がけていますから。凝った建築くらいでは驚かないぞ、と。ガワじゃない、中身だし使われ方だぞ、と。 建築家の手柄のように語られすぎる公共建築への警戒心。ちょっと拗ねた目線でしょうか。
説明が遅れましたが、こちらは由利本荘市文化交流館「カダーレ」。大ホール、図書館、公民館、教育学習施設が一体となった複合文化施設です。オープンは2011年。
新しい土地を訪ねた際に、まずはその街の図書館をのぞくという方もいるでしょう。土地の歴史や情報を集めやすいこと、そして、街の輪郭を描きやすくなるといった理由もあると思います。
そんなことを考えながらカダーレの図書館を見てまわっていたところ、使いやすくて、長居のしやすそうな図書館だと実感されてきました。 不定形な建物の形によって、ヌケのいい開放感と自分に籠もることのできる空間とが両立されていること。約17万冊という蔵書のほどよさ加減。やや迷宮的にも感じられた館内設計ですが、どういった本の配置になっているのかも意外とすぐに把握できました。
ところで、図書館の中央部、2層吹き抜けのさらに上には、惑星のような球体の構造物が浮かんでいます。実は、ここにはプラネタリウムがあり、さらにその上には天体観測室まであるんだとか。宇宙を思わせる空間に、宇宙により近づける施設。いいですね。
プラネタリウムは、防音や投影機能を活かして、ミニシアターや会議室、コーラスなどの利用に貸し出されているそう。なかなかフレキシブルです。
プラネタリウムに限らず、カダーレの大きな特徴として、ひとつの空間をいかに使いまわすかにもとても心砕かれています。建築的な方法論でもあるでしょうし、“暮らしの知恵”といった感じも受けました。
そして、そのいちばんのウリが大ホールに隠されていました。計1,110席の堂々たる劇場ですが、その1階席部分がすべて可動式で床下へと収納されて、フラットな空間へ変化。さらに、ホールに隣接した通路やギャラリーの壁をすべて取り払って空間を連結することで、カダーレ北側の道路から、ホールを抜けて南側の道路まで通じる、ずどんと130m×12.5mの通り抜け大空間が出現するというのです。
「客席を設置したまま大ホールをフルに使う公演というのは、年に何十回もありません。ですので、多目的に使えるように客席を収納して、ホールと前の広場をつないだフェスティバルを開催したり、企業の忘年会や、行政の説明会に使ったりとさまざまに活用されています」とカダーレ館長の打矢郁良さん。
文化の発信源にして、交流拠点。そのために、ユニークで多機能な建築を実現したカダーレ。さまざまに使われる場面をもっと体験してみたい、そして自分でも使ってみたいと思わされる施設です。 まずは館内をうろうろと歩いて見てまわるだけでも、魅力的な施設だということがわかっていただけると思います。
【由利本荘市文化交流館「カダーレ」】
〈住所〉由利本荘市東町15
〈開館時間〉9:00〜22:00
※図書館は平日20:00まで、土日祝日18:00まで。
〈休館日〉毎月第2・第4火曜日、年末年始(12/29〜1/3)
※図書館は上記に加え、毎月末の平日(12月は28日)に図書整理のため休館。
※臨時休館あり。
〈TEL〉0184-22-2500
〈ホームページ〉http://kadare.net/wpress/