秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード
由利本荘市編

編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士

由利本荘のやさしいラーメン
三浦食堂(由利本荘市中町)
ゑびすや(由利本荘市矢島町)

由利本荘では朝からラーメンを食べる“朝ラー”の習慣があるだとか、いくつか店舗を持つ「清吉そばや」が人気らしいとか。由利本荘へ向かう車のなかでそう聞かされていたのですが、なぜだか結果的に、「やさしい」と形容したくなる店のラーメンを訪ねることになりました。

1軒目は「三浦食堂」。

昔ながらのシンプルな中華そば。付け合わせとして、大根を炊いたのが小皿に。

10数年前までは、近くにあった公設市場のなかで営業していて、朝からとても忙しかったそうですが、市場もなくなって店を現在地へ移転。いまは「ゆっくりした気持ちでやってるよ」と店を営む三浦弘子さん。それでも、近所にある警察や銀行に勤める人たちが毎日通ってくるほど、街で40年近く続くなじみの食堂です。

実は、三浦食堂のことを教わったのが、道を挟んですぐ向かいにある着物と和小物の店「べに屋」でのこと。「あっさりしたラーメンで、私も大好きだし毎日食べてる人もいる」とオススメされて、足を運びました。

店を訪ねたのは午前10時前。この時間は弘子さんひとりで店をまわす。
ひとつ前の写真も決してカメラマンが厨房に入りこんで撮った写真じゃない。
店奥のテーブル席と厨房はガラス戸で筒抜けなのだ。
というわけで、このガラス戸越しに弘子さんから話を聞いた。

「この窓、いいでしょ。やっぱりお客さんとおしゃべりするのが好きだから」と弘子さん。またこのガラス戸の滑りがよくて、何の抵抗もなくスルスルっと開くんです。弘子さんとお客さんの垣根の低さを物語っているようでした。

店は入り口そばにカウンター4席。厨房横の廊下を奥へ進んで、小上がりのテーブルが4卓。つまり、カウンター席、厨房、小上がりが縦列に並んだ状態。なので、カウンター席から奥をのぞけば、下の写真のようになります。風通しがいい。

鶏ガラ醤油味のラーメンは、塩気のきいたチャーシューに、シナチク、ワカメとまさに正調の中華そばの形。定食やタンメン、チャーハンも人気メニューです。

営業時間は昔に比べると短くなって、お昼すぎには閉店しますが、休みは創業時から変わらず「カレンダーが赤の日」。日曜祝日です。 「これは、子どもとの時間をつくるためにそうしてる。もう長男は40いくつになったけどね」と笑う弘子さんでした。

三浦食堂のメニュー表。まさに近所にあれば通いたい店。

【三浦食堂】
〈住所〉由利本荘市中町12-4
〈時間〉9:00~15:00
〈定休日〉日曜日・祝日
〈TEL〉0184-22-8581


++++++

もう1軒、由利本荘市街から離れて、矢島で訪ねた店を紹介します。由利高原鉄道に乗れば、羽後本庄と矢島が両端の起終点駅にあたります。 この矢島地区の旧街道沿いで、「あの生姜ラーメン」と大きく看板に掲げたラーメン店「ゑびすや」を訪ねました。

「あの」という言葉にこめられた意味、すぐにはわからなかったのですが、かつて矢島の別の場所にあった「ゑびすや」の生姜ラーメンの味を再現した店だそうです。それからもう、およそ10年の月日が流れようとしています。

いかにもロードサイドのラーメン店という外観。
店内は家庭的ともいえる親しみやすい雰囲気。1~2人客がシェアする大きなテーブル1卓と、小上がりのテーブル席がいくつも。

注文したのは、もちろん生姜ラーメンです。 まったく味の想像がついてなかったのですが、ラーメン鉢を前にするだけで、すりおろしたショウガとレモンの香りがふわっと漂います。口にすると、澄んだ塩スープとの相性も絶妙で、「やさしい!」「これは味を継ごうと思った気持ちがわかる!」「レモンジンジャーだ」と取材陣一同の顔がほころぶ味。 かつて食べたことのない塩ラーメン+ショウガ+レモンの組み合わせでしたが、これはひとつの発明ですよ。

由利本荘といえばの「しねぇ肉」にコーンも。(この地域では、若鶏ではなく親鶏を好んで食べる習慣があり、その食感を「しねぇ」と表現するそう)

まさしく「やさしいラーメン」と形容したくなる2軒の店。 これも由利本荘の風土なのかなと感じました。

なお、これは今回のラーメン記事とは直接関係のない話ですが、由利本荘市では現在、移住者が街の店や会社を継ぐ事業が推進されています。そうした公の事業に先駆けて、個人の思いで味を再現した「ゑびすや」のドラマも、いつかお聞きしたいと思います。

【ゑびすや】
〈住所〉由利本荘市矢島町城内築館146-1
〈時間〉月~日・祝日 11:00~14:00(L.O.14:00)
    土日・祝 7:00~9:00(L.O. 9:00)
〈定休日〉第2・第4水曜日
〈TEL〉0184-55-3555


TOP