マタギ③マタギとクマの関係は今
鈴木英雄さんがクマのために仕掛けたワナは、「マタギの湯」からもほど近い、県道からほんの少し入った場所に設置されているといいます。そもそもクマのワナを仕掛けることは、マタギの猟とはまったく違って、有害鳥獣駆除という目的のた…
編集・文:竹内厚 写真:蜂屋雄士
2018.05.23
「ゆりてつ」「おばこ号」の愛称で親しまれる由利高原鉄道は、12の駅・23kmを約40分で結ぶ、第三セクターのローカル線。マンガとのコラボレーションや様々なイベント列車の運行などもあって、観光客にも知られる存在となっています。
今回は、ゆりてつで毎日1往復、アテンダントも同乗する「まごころ列車」に乗って、始発の羽後本荘駅から矢島駅へ。ガタゴトのんびりした列車の旅を満喫した後、矢島駅で出会ったのが「まつ子の部屋」でした。
「はい、お嬢さまがたどうぞ。はい、お兄ちゃんもどうぞ」と、ゆりてつで到着した私たちを含む乗客に向けて、桜茶をふるまってくれた佐藤まつ子さん。 鉄道の駅といえば、わりと無味乾燥といっては失礼ですが、公共性という名目のもと、控えめな場所という印象を持ってましたので、突然、まつ子さん宅にお呼ばれしたような、グイグイと迫ってくるまつ子さんのおもてなしにちょっと面食らいました。
それでは、まつ子さんとのお話を、ゆりてつの羽後本荘~矢島の鉄道旅写真にあわせてお届けします。ラジオに耳を傾けるように、まつ子さんのしゃべりをお楽しみください。
+++——いつも、ここでゆりてつのお客さんをお出迎えされてるんですか。
——朝からですか。
——それはそうですね。
——一応、駅の売店なんですね。
——好きにやってるよと。
——町からの援助がなくなった。
——まつ子さん、本も出してるんですね(『みちのく「ちいさなえき」まつ子の部屋』)。
——売れましたか。
——確かに(笑)。もともと何かに書いてたのをまとめたものですか。
——それは大変だ。
——いまのご様子からはちょっと信じられません。
——まつ子さんと向き合って座れる席がありますね。
——ほんとだ、机にグリーン車のシールが貼ってありますね。
まつ子さんは青森県大間のご出身。大間に先生として赴任してきた夫の大輔さんと出会って結婚。ふたりの娘をもうけるも、不慮の事故で夫を亡くして、1985年に夫の実家がある矢島へ移ってきた。矢島駅に当時あった旅行代理店で働いてたが、その代理店が撤退した後も駅にのこって、2002年からは個人で売店兼観光案内人を務めている。
——まつ子さんを前にすると悩みを打ち明けてみたくなりますね。
——まさに鏡ですね。
——すごい。たくさんのメモですね。
——ファイルに付けられたインデックスも気になります。「生き方」「老後」……。
——まつ子さんならやれそうです。
「また会いましょうーバイバイ!」と最後まで元気いっぱいだったまつ子さん、71歳。この日は昼から短歌会へ行くそうです。 旅行客はもちろん、駅を利用する地元の人たちにも次々と声をかけるまつ子さんの姿に、こんな駅がもっと増えればいいと素直に思いました。
【由利高原鉄道】
〈住所〉由利本荘市矢島町七日町字羽坂21-2
〈ホームページ〉http://www.obako5.com/
〈お問い合わせ時間〉9:00〜17:00(平日のみ)
〈TEL〉0184-56-2736