秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード
小坂町編

編集・文:矢吹史子 写真:船橋陽馬、清永洋 写真提供(一部):小坂まちづくり株式会社

小坂鉄道レールパークで、懐かしの時代へトリップ!

2019.12.04

小坂鉄道は、小坂町と大館おおだて市を結ぶ旧鉄道路線。かつて鉱産額が日本一だった小坂鉱山の貨物輸送のために生まれました。

明治42年に小坂鉄道株式会社が設立され、旅客事業がスタート。長きにわたり活躍したものの、鉱山が閉山となるとともに、平成6年に旅客列車が廃止。平成21年には製錬貨物の運搬もなくなり、約100年の歴史に幕を閉じます。

この資源を活用すべく、平成26年に誕生したのが「小坂鉄道レールパーク」。小坂鉄道の歴史を学びながら、鉄道の魅力を体感できる施設です。

訪問した11月下旬は、ちょうど春までの冬期休業中だったものの、特別にその一部を見学させていただきました。
案内してくださったのは、このレールパークを運営している、小坂町づくり株式会社の代表の高橋竹見たかはしたけみさんです。

高橋さん
高橋さん
これは、明治42年、創業当時のままの木造の駅舎です。110年前のものがそのまま残っています。東京駅より古いんですよ。
高橋さん
高橋さん
よく見ると、屋根のひさしの柱の部分にレールを使っているんですね。これも当時のままです。では、駅舎の中に入ってみましょう。
高橋さん
高橋さん
閉駅直前の、時刻表や運賃表もそのまま残しています。小坂鉄道自体は、大館駅までの22.3km。そこから乗り換えて、上野、仙台、青森、金沢などへの接続の案内なんかも書いてありますね。
高橋さん
高橋さん
レールパークの入場はこちらでしていただきます。ここでは、入場券として、当時の硬券を再利用しています。小坂鉄道は最後まで硬券の切符だったんですね。
高橋さん
高橋さん
入場の際、まずはお客様自身で機械に通して切符に日付を入れていただきます。そして、改札員がハサミでパチンと切符を切るんですよ。

——入る前からワクワクしますね!

高橋さん
高橋さん
では、車両展示場からご案内しますね。こちらは、実際に走っていた蒸気機関車で、今でもこうして残っていて、人間の年齢に例えると93歳(大正15年製造)になります。

——小さいくてかわいらしい車両ですね。

高橋さん
高橋さん
昔は線路のレールとレールの間隔が狭かったんですね。小坂鉄道には1路線に対してレールが3本残っていて、昔は内側の2本の幅で走行していたんですが、近年になって車両が大きくなると外側の2本の幅になりました。この蒸気機関車は内側のほうで走っていたんですね。
高橋さん
高橋さん
これは貴賓客車といいます。103歳(大正5年製造)になりますね。これ、木製なんですよ。大正10年に秩父宮ちちぶのみや高松宮たかまつのみや両殿下が小坂鉱山を見学に来られた際にお迎えするために特別に作られた客車です。小坂鉱山は当時、鉱産額が日本一でしたから、その後も来賓の視察などにこの車両がたびたび使われました。
高橋さん
高橋さん
こちらが、84年(昭和10年製造)前からあるラッセル車。除雪用の車両ですね。国内には4両しかないとても貴重なものなんですよ。これは今でも動きます。現在も動くこのタイプのものは国内に2台しかないんですよ。

——これを、列車の先頭にして除雪していく?

高橋さん
高橋さん
はい。横に羽根のようなものが付いていてそれを開いて雪をいていくんですね。
除雪時の様子。サイドにある羽根を広げて雪を掻いていく。
高橋さん
高橋さん
鉄人28号の顔みたいでしょう? 運転席にある、丸い目のようなものは何だと思います? これ、ワイパーなんですね。高速回転して、遠心力で雨や雪を弾き飛ばすんですよ。
高橋さん
高橋さん
こちらは、ビニールを被ってますけど、触ってみてください。木製の貨車なんです。これに鉱石を積んで運んでいたんですね。いま、ここにはこの2両だけになってしまいましたが、これもなかなか貴重なものですね。
高橋さん
高橋さん
こちらが機関車庫になります。
高橋さん
高橋さん
これがDD130形のディーゼル機関車ですね。50年(昭和42年製造)を越えた車両になりますが、車両重量は55トン、エンジンは排気量が62000cc。

——……想像がつきません。

高橋さん
高橋さん
2000ccの乗用車、31台分と思っていただければ。今日は運行はできないんですが、ディーゼル機関車、乗ってみませんか?

——お願いします!

高橋さん
高橋さん
どうぞ、運転席に座ってみてください。この運転室には、運転席が左右前後対象に2つあるんですよ。小坂鉄道は単線なので、車両を回転させることができないために、特別仕様になっているんですね。
高橋さん
高橋さん
営業期間中、ご予約いただければ一般の方も運転を体験することができるんですよ。いずれも別途料金がかかりますが、「お試しコース」と、1日かけて研修を行う「運転士への道コース」があって、実際に駅構内路線を走行できるんですよ。
大迫力のディーゼル車のエンジン。
当時使われていた道具なども展示されている。
腕木式うでぎしき信号機」。人力で操作する信号機で開業から廃線まで間、変わらず使われてきた。
高橋さん
高橋さん
そして、これが「あけぼの」の車両ですね。上野と秋田、青森を結んでいたJRの寝台特急ですね。2014年に廃線になったと同時に、4両譲り受けてきました。

——懐かしい!私も利用していました。

高橋さん
高橋さん
4両、全部違っていて、先頭車両は電源車として後ろの車両に電気を供給する役目。ほか3両は客車が3種類で、一つは、一番豪華なA寝台という個室。次はB寝台個室。その次がB寝台の開放型。開放型というのは、カーテンのみで分かれたものですね。

この車両は、来たときはサビだらけだったんですけれど、小坂鉄道保存会の会員のみなさんが冬の間コツコツとサビを落として、全部きれいに塗ってくださいました。
高橋さん
高橋さん
じつは、レールパークでは、このあけぼのに泊まることができるんですよ。泊まれるのは個室の部屋で、開放形のほうはくつろぎの場として使っていただいています。

——またあけぼのに泊まれるなんて、ファンにはたまりませんね!

宿泊車両はホームに停車。車両内には給水設備やトイレはないため、駅舎に設けられた施設を使用する。
B寝台
事前予約をすると、朝食には大館名物の駅弁「花善鶏めし弁当」を食べることもできる。
高橋さん
高橋さん
さらにですね、こういった寝台列車を宿泊施設として使っているところはほかにもありますが、ふつうは、列車を固定して使っていて、動かすことができません。

でも、小坂は、日本初の移動式の宿泊免許を取りました。そして、ここにはディーゼル車がありますから、それで引っ張ることができるんですよ。なので、現役当時のように、動く機関車を体感していただくことができるんですね。
高橋さん
高橋さん
車両が展示している場所からホームに移動するまでのごく短い距離ですが、ご予約のお客様限定で、チェックイン前と、翌朝の2回、実際に動いている車両を体感することができます。

——最高ですね! このために遠くから宿泊に来る方も少なくないのでは?

高橋さん
高橋さん
はい。遠くは九州からもいらっしゃいましたね。こちら、車内アナウンスもあるんですよ。運行する前に、現役当時と同じように「次の停車駅は大館」「秋田駅は何時何分に到着いたします」というようなかんじで、仮想ですけれど、そんな演出もしています。
高橋さん
高橋さん
全体を回ってみてお気づきかもしれませんが、小坂鉄道レールパークの一番の特徴として言えるのが「動体保存」ということなんです。通常は動かない状態で保存しているものが多いなかで、車両や設備が現役当時のまま動く状態で保存しています。そのため、現役当時の息づかいをリアルに楽しむことできるんですね。
高橋さん
高橋さん
営業期間中は、ディーゼル車がけん引する観光用のトロッコに乗ったり、レールバイクで線路の上を走ったりもできるので、また春になったら遊びに来てください。

【小坂鉄道レールパーク】
〈住所〉小坂町小坂鉱山字古川20-9
〈TEL〉0186-25-8890
〈HP〉http://kosaka-rp.com/

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