小坂鉄道レールパークで、懐かしの時代へトリップ!
小坂鉄道は、小坂町と大館(おおだて)市を結ぶ旧鉄道路線。かつて鉱産額が日本一だった小坂鉱山の貨物輸送のために生まれました。明治42年に小坂鉄道株式会社が設立され、旅客事業がスタート。長きにわたり活躍したものの、鉱山が閉山…
編集・文:矢吹史子 写真:高橋希
2019.07.03
子どものころ(30年以上も前のことになりますが)、私が暮らす秋田市には、歩いて行ける距離に駄菓子屋やかき氷店がいくつもありました。
お店の人に叱られたり、友だちと交換して食べたり。子どもの自分にとっては、家族とは別の人や場所に触れることはとても特別な時間で、それは社会への最初の入口だったようにも思えます。
美郷町にある「本間菓子店」は、そんな時代を思い起こさせてくれる店。「おやつの店 本間」と書かれた、赤と黄色のテントをくぐり抜けると、子ども時代にタイムスリップ。
店内を眺めていると、店主の本間ヨシ子さんが、店の奥から現われました。
——お好み焼きがいいかな……「豚玉」と「チーズベーコン」でお願いします!
——この店はどのくらいやられてるんですか?
——60年前……となると、今、おいくつなんですか?!
——え〜(笑)。ここはご主人と一緒に?
——泣かれた?! どうして?!
——たしかに、秋田は並んでまで買う人は少ない印象ですけど、泣くほどですか……。
——でも、ここには、コンビニとは違う魅力があるのでは?
——学校帰りに寄り道ができなくなった?
——自由に買えないし、そもそもお金がない……と。
——施設とか?
——この40年の間で……。
時代の変化による寂しい話題がどうしても先に立ってしまうのですが、食べながらじっくりお話していくと、本間さんの前向きでブレない姿勢が伝わってきました。言葉の一つひとつから、溢れるエネルギーを感じずにはいられないのです。
——オランダ焼。おもての看板にもありましたね。
——人気なんですね。
——そんなに! でも、どうして「オランダ」なんですか?
——わ〜ありがとうございます! すっごく美味しいんですが……安すぎる! お好み焼きもそうなんですが、価格、変えたほうが良いのでは?
——……ん? おかしくないですか?
——え〜〜〜!
——子どもたちがよく来ていた当時は、どんなお店だったんですか?
——風紀委員なんですね。
——でも、当時叱られた子たち、今も来るんじゃないですか?
——何をしているんですか?
——常に動いているんですね。
——お店をやっていて良かったなって感じることはありますか?
——みんなが幸せに暮らしていることが幸せ?
——こちらは跡継ぎは?
——本間さんのそのエネルギーは、どこから湧くんですか?
——でも、それって、とても気持ちが強くないとできないようにも思えます。
自分の考えや信じるものの上に堂々と立っているようで、じつにたくましい本間さん。世の中の変化はめまぐるしく、抗えないことも多い時代ですが、そこで生き抜く一つのヒントをいただけたように感じました。
【本間菓子店】
〈住所〉仙北郡美郷町六郷米町9
〈TEL〉0187-84-0784
〈営業時間〉10:00~18:00(なくなり次第終了の場合あり)
〈定休日〉元日のみ