秋田のいいとこ 旅で出会った、ローカルスタンダード
にかほ市編

編集・文:竹内厚 写真:船橋陽馬

お昼はキッチンさかなやさん

2018.09.05

キッチンさかなやさん。
自然と笑みがこぼれるような、親しげなその店名は、まっすぐにお店のスタイルを表していました。

日本海に面したにかほでは、規模こそ大きくはないものの、季節ごとに多様な魚が水揚げされています。にかほの海のすぐそばにある、キッチンさかなやさんでお昼をいただきました。

入店するとまず町の魚屋さんらしく、きれいに並んだ新鮮な魚が目に飛びこんできます。
この中からどれでも好きな魚を選んで、好きな調理法で注文すれば、魚定食となって隣の座敷で食べることができるというシステムです。いつか行った海辺のリゾートで、そうやって注文した記憶がありますが、こちらは約30年前の開店時からこのやり方。

季節の端境期にあたる8月下旬に訪れたので、これでも魚種は少なめだといいますが、はっきりいって迷いに迷いました。
アジ、アラ、ホウボウ、クロダイ、アマダイ、ウスメバル、クロソイ、スギ、ワラサ……。魚の名前は書かれてなかったので、ひとつずつ聞いて、それでも選びきれずに、オススメを教わることに。
ショーケースをひとにらみ、「じゃあ、今日はレンコダイを焼きで」なんて颯爽さっそうと注文できたらよかったのですが、その域に達するには何度も通わなくては。

「地元の人じゃないと、ほとんどの人はわからないよ。聞かれたら、旬の魚、焼きにすればいい魚、煮付けにオススメの魚をお伝えすることが多いですね。おいしいのは? ともよく聞かれるんだけど、おいしくない魚は置いてないから(笑)」と教えてくれたのは、店長の佐藤修一さとうしゅういちさん。

気取りのない魚屋の大将といった雰囲気。
市場で別の鮮魚店も営む佐藤さん、4年前から昼はここで働く、まさしく魚屋さん。

ショーケースの真横がキッチンに。我々が注文した魚を1匹ずつ佐藤さんがさばいていきます。魚によって骨の形、身の厚みはさまざまですが、そこは熟練の包丁さばきで、すばやく、丁寧に。

焼き魚はまるごと串焼きに。

そして、待つこと約30分。それぞれの魚定食が到着しました。切り身ではなく、尾頭付きの魚がどかっとお皿からはみ出す勢いで出てくると、ちょっとしたお祭りのよう。気分が高揚します。

ウスメバルの煮付け!
マダイを焼きで!
ホウボウの煮付け!
刺身定食はおまかせ。

佐藤さんににかほの海の特徴を聞いたところ、「日本海側でとれるとされている魚はみんなとれる。金沢だけ、越前だけって言われる魚があるけど、にかほでもとれるから。まあ、こっちは宣伝下手なので(笑)」。

9月に入ると底引き網漁業がはじまるため、水揚げされる魚の種類はぐんと増えます。そして、冬が近づけばハタハタやタラの季節が到来。
麹を使って漬けこんだハタハタ寿司といえば、秋田名物のひとつですが、ハタハタの焼き魚も煮付けも食べてみたいところ。

ハタハタについては、なんも大学で特集した記事もありますので、ぜひそちらも。

現在、営業は昼のみ。定食で千円~2千円程度で食べられる魚がそろいます。

「にかほではズワイガニもとれるけど、ちょっとうちでは出してない。越前ガニ、松葉ガニに比べると全然安い値段で流通してるけど、それでも2千円では食べられないから」。

魚拓は釣り好きのお客さんの持ち込み。
地元のお客さんは、昔は店先に水槽もあったと教えてくれた。

もっと身近に地元の魚を食べてもらいたいと、魚屋+座敷の形態で営業を続けるキッチンさかなやさん。変に観光地化したところがなくて、魚屋らしいさばさばとした雰囲気も、にかほの地の魚を食べたという気持ちがしました。

魚を選んで注文してから調理するため、どうしても時間はかかります。のんびり積もる話でもしながら、魚定食を待つ昼下がり。にかほでオススメしたい時間の過ごし方です。

【キッチンさかなやさん】
〈住所〉にかほ市平沢字中町87-2
〈時間〉10:00〜16:00 ※お食事は11:00〜13:30
〈定休日〉火曜日
〈TEL〉0184-35-2388
〈HP〉https://sakanayasan.on.omisenomikata.jp/

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